質問主意書

第196回国会(常会)

答弁書


答弁書第一五七号

内閣参質一九六第一五七号
  平成三十年七月十日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員牧山ひろえ君提出高度プロフェッショナル制度に係る諸論点に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員牧山ひろえ君提出高度プロフェッショナル制度に係る諸論点に関する質問に対する答弁書

一について

 いわゆる高度プロフェッショナル制度においては、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成三十年法律第七十一号)による改正後の労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号。以下「新労基法」という。)第四十一条の二第一項第二号イにおいて、使用者との間の書面その他の厚生労働省令で定める方法による合意に基づき職務が明確に定められていることが対象労働者の要件とされており、対象労働者は自らが合意した職務を行うこととなる。

二について

 いわゆる高度プロフェッショナル制度の対象となり得る業務は、「高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務」であることとされており、業務を実施する時間について指揮命令を受けることは通常想定されない。

三について

 いわゆる高度プロフェッショナル制度の対象労働者は、労働条件に関する一定の交渉力を有していると考えられる者として「労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を一年間当たりの賃金の額に換算した額が基準年間平均給与額・・・の三倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上であること」が要件とされており、これについて、第百二十二回の労働政策審議会労働条件分科会において、厚生労働省より、「平成十五年(中略)当時の技術系の一定の管理職層の方々、具体的には課長級の方々の確実に支払われる給与の額で見た年収として、上から四分の一をとって千七十五万円ということであれば相当程度の交渉力が認められるのではないかという意見で審議会がまとまり・・・その後、かなり年数も経つ中で、制度の成熟を見て、こうした数字が労働基準法の体系の中で、交渉力のある方々にとっての年収要件ということで定着してきている」と説明しているところである。

四について

 新労基法第四十一条の二第五項の規定により、行政官庁は、同条第三項において準用する新労基法第三十八条の四第三項の指針に関し、新労基法第四十一条の二第一項の決議を行う委員に対し、必要な助言及び指導を行うことができることとされている。
 当該指針の内容については、平成二十七年二月に労働政策審議会において取りまとめられた今後の労働時間法制等の在り方について(建議)において、「労使委員会において対象労働者を決議するに当たっては、本制度の対象となることによって賃金が減らないよう、法定指針に明記することが適当である」とされたことを踏まえて作成し、必要な助言及び指導を行っていくこととしている。これらにより、いわゆる高度プロフェッショナル制度の対象労働者の賃金が、同制度が適用されることによって減少することが抑止され、同制度導入の前後で、同制度の対象者の平均賃金が減少することも抑止されるものと考えている。

五について

 いわゆる高度プロフェッショナル制度においては、対象業務となり得る業務については厚生労働省令で定めることとされており、現時点においてお答えすることは困難である。