質問主意書

第196回国会(常会)

答弁書


答弁書第一三五号

内閣参質一九六第一三五号
  平成三十年六月二十二日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員牧山ひろえ君提出TPP11の経済効果に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員牧山ひろえ君提出TPP11の経済効果に関する質問に対する答弁書

一について

 政府としては、「総合的なTPP等関連政策大綱」(平成二十九年十一月二十四日TPP等総合対策本部決定。以下「大綱」という。)に基づき、御指摘の協定(以下「本協定」という。)を契機に、これまで海外展開に踏み切れなかった中堅・中小企業が積極的に海外展開することを後押しするとともに、貿易・投資の拡大を国内の経済再生に直結させるための施策を実施しているところである。
 これらの施策はいずれも、個別産業に及ぼす影響を推計して、補償するための施策ではなく、本協定を契機に、海外展開や高付加価値化等に取り組む国内企業を支援する施策である。

二について

 農林水産省が平成二十九年十二月二十一日に公表した「農林水産物の生産額への影響について(TPP11)」においては、環太平洋パートナーシップ協定交渉において獲得した関税撤廃の例外、国家貿易の維持、長期の関税削減期間等の措置や、大綱に基づく国内対策を踏まえ、農林水産物への影響試算を行った。その結果、関税削減等の影響で価格低下による生産額の減少が生じるものの、体質強化対策による生産コストの低減・品質向上や経営安定対策などにより、国内生産量が維持されるものと見込んだところであり、「試算はあまりにも恣意的すぎる」との御指摘は当たらないと考える。
 また、農林水産物の生産額への影響を試算するに当たっては、現実に起こり得る影響を試算すべきものと考えており、本協定自体の発効による効果だけでなく、国内対策の効果も併せて考えることが適切であると考えている。このため、国内対策を講じない場合の試算を行うことは現実に起こり得ることとは異なる場合の試算を行うこととなることから、このような試算を行うことは考えていない。

三について

 本協定のような広域経済連携には、従来のサプライチェーンの枠組みを超えた、新たなバリューチェーンが生まれる効果を期待することができる。具体的には、我が国の高い技術力を持った中堅・中小企業が、新たなビジネスチャンスを広げ、ひいては我が国への投資につながることも期待される。
 また、本協定の原産地規則においては、完全累積制度が導入されており、本協定に基づく関税上の特恵待遇を得られる機会が増大することとなる。そのため、技術力を持った中堅・中小企業を始めとする我が国の企業が国内に「居ながらにして海外展開」を行うことも可能となることから、国内産業空洞化等が生じるとは考えていない。
 大綱においては、「TPP等を通じた国内産業の競争力強化」を政策の柱の一つに据えており、今後とも、大綱に基づく各種施策を展開することにより、その効果を国内産業の活性化につなげるよう取り組んでいく考えである。