質問主意書

第196回国会(常会)

答弁書


答弁書第一一一号

内閣参質一九六第一一一号
  平成三十年五月二十九日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員牧山ひろえ君提出「BEPS防止措置実施条約」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員牧山ひろえ君提出「BEPS防止措置実施条約」に関する質問に対する答弁書

一について

 我が国は、これまで、経済協力開発機構(以下「OECD」という。)/G20税源浸食及び利益移転プロジェクト(以下「BEPSプロジェクト」という。)の勧告を踏まえ、例えば、平成二十八年度税制改正において多国籍企業情報の報告制度を創設し、平成二十九年度税制改正において外国子会社合算税制を見直すとともに、平成三十年度税制改正においては恒久的施設関連規定を見直すなどの対応を行ってきたところである。政府としては、引き続き、租税回避の防止に向けて、BEPSプロジェクトの勧告等を踏まえ、適切に対応していく考えである。

二について

 お尋ねの「新しく認識された国際的な租税回避行為」については、その範囲及び内容が明確でないため、当該行為の有無についての回答は困難であるが、平成二十七年十月に公表されたBEPSプロジェクトの最終報告書は、いわゆる国際的な租税回避行為を広範に類型化しており、これらに対応するために勧告された諸措置は、現在の様々な多国籍企業による租税回避行為に対して効果的に対応するものとなっている。
 なお、政府においては、日頃から国際的な租税回避行為に係る課税上の問題の把握に努め、積極的に調査を実施するなど適切に対処している。海外取引を行う法人に対しては、平成二十七年七月からの一年間で、一万三千四十四件の税務調査を実施し、二千三百八億円の海外取引に係る申告漏れ所得金額を指摘し、同様に、平成二十八年七月からの一年間で、一万三千五百八十五件の税務調査を実施し、二千三百六十六億円の海外取引に係る申告漏れ所得金額を指摘したところである。今後とも、あらゆる機会を通じて資料情報の収集に努め、国際的な租税回避行為を含む課税上の問題を把握した場合には、税務調査を行うなどして、適正かつ公平な課税に努めていくこととしている。

三について

 現在までに我が国が締結した二国間の租税条約のうち、六十一か国・地域との間で適用されているものが、税源浸食及び利益移転を防止するための租税条約関連措置を実施するための多数国間条約(以下「本条約」という。)の「対象租税協定」となる可能性がある。

四について

 お尋ねについては、相手国による本条約の締結状況等にもよるため、一概にお答えすることは困難である。

五について

 御指摘の「デジタル経済」の進展に伴う課税上の課題については、OECDにおいて、この課題に対応するための国際的な解決策を二千二十年までに取りまとめるため、議論が進められており、政府としては、こうした国際的な議論に積極的に参画するなど適切に対応していく方針である。