質問主意書

第196回国会(常会)

質問主意書


質問第二三八号

昭和四十七年政府見解の作成者である角田元内閣法制局第一部長の証言に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年七月二十日

小西 洋之   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   昭和四十七年政府見解の作成者である角田元内閣法制局第一部長の証言に関する質問主意書

 平成二十七年九月四日の参議院平和安全法制特別委員会において、中谷国務大臣は「横畠君がそう言っているの。そう分析した記憶はないし、そう理解はなかったと思いますね。ここに書かれている外国の武力攻撃は、日本そのものへの攻撃のことです。日本が侵略をされていないときにどうなる、なんて議論は当時なかった。これを根拠に憲法改憲なんて夢にも思っていなかった。いや、よく掘り出したものだね。」と昭和四十七年政府見解の決裁を行った内閣法制局第一部長であった角田氏の週刊朝日のインタビュー記事を読み上げている(なお、「憲法改憲」は中谷大臣の「解釈改憲」の読み間違いである。)。
 その際、この記事の内容について、横畠内閣法制局長官は「昭和四十七年見解の法理と言い、また①、②の基本論理と申し上げているのは、その結論を導くその前提としての物の考え方でございます。つまり、憲法九条の下でも我が国として自衛権の行使が許される、なぜかということでございまして、我が国として憲法九条の下でも自衛権は否定されていないこと、しかしながら、最小限であって、まさに国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫不正の事態に対処する必要最小限のもののみが許されるという考え方を述べているわけでございます。そこで、その結論に至る前の事実認識、当時の事実認識としましては、これに該当する場合は、我が国に対する武力攻撃が発生した場合に限られるという事実認識を前提にしていると述べているわけでございまして、御指摘の元法制局長官の答弁、答弁ではないですね、週刊誌の記事でございますね、この引用部分も、まさに当時の事実認識を述べているものと理解しております。」と答弁している。
 これを踏まえ、以下質問する。

一 昭和四十七年政府見解を決裁した内閣法制局第一部長であった角田氏が、昭和四十七年政府見解の中の「外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫、不正の事態」との文章の「外国の武力攻撃」という文言について、「ここに書かれている外国の武力攻撃は、日本そのものへの攻撃のことです。日本が侵略をされていないときにどうなる、なんて議論は当時なかった。」と述べている、すなわち、この文言は「我が国に対する外国の武力攻撃」の意味に尽きるのであり安倍政権の主張するように「同盟国等に対する外国の武力攻撃」の意味ではあり得ないと述べているのだから、昭和四十七年政府見解の中に限定的な集団的自衛権行使を許容する憲法第九条解釈の基本的な論理が示されている(その作成当時から存在している)という政府の主張は成り立ちようがない、断じて許されない詭弁ではないか。

二 横畠内閣法制局長官は平成二十七年八月三日の参議院平和安全法制特別委員会において、「憲法第九条の下でもなぜ我が国として武力の行使ができるのかというその基本的な論理の部分は、まさにこの基本的論理、この四十七年見解で示された基本的な論理であるという、そういう考え方を当時の担当者は皆持っていたということであろうというお答えをしているわけでございます。」と答弁しているが、その当時の担当者の一人である角田氏が「横畠君がそう言っているの。そう分析した記憶はないし、そう理解はなかったと思いますね。ここに書かれている外国の武力攻撃は、日本そのものへの攻撃のことです。日本が侵略をされていないときにどうなる、なんて議論は当時なかった。これを根拠に解釈改憲なんて夢にも思っていなかった。いや、よく掘り出したものだね。」と証言しているのであるから、横畠長官の答弁は虚偽答弁であり、安倍政権の解釈変更は違憲無効ではないのか。

三 横畠内閣法制局長官は、角田氏の「横畠君がそう言っているの。そう分析した記憶はないし、そう理解はなかったと思いますね。ここに書かれている外国の武力攻撃は、日本そのものへの攻撃のことです。日本が侵略をされていないときにどうなる、なんて議論は当時なかった。これを根拠に解釈改憲なんて夢にも思っていなかった。いや、よく掘り出したものだね。」との証言について、なぜ、「週刊誌の記事でございますね、この引用部分も、まさに当時の事実認識を述べているものと理解しております」などと考えることができるのか、その理由を示されたい。

四 私は、平成二十九年五月十五日の参議院決算委員会において「角田当時第一部長、後の法制局長官、最高裁判事にもなられた方でございますけれども、まだお元気でございます。十三ページに、この四十七年見解を作成した当の御本人、角田さんが週刊朝日のインタビュー、これ後ろの方の共同通信の記事でも同じことをおっしゃられておりますし、実は私も、十一月の三日、角田先生の御自宅にお邪魔をさせていただいて、今から御紹介する週刊朝日の記事と全く同じ内容をお話しいただいて、そのことを外交防衛委員会の議事録に刻んでいるところでございます。」と述べているところであるが、複数の報道機関の報道や国会議員の証言があるにも関わらず、政府が角田氏の証言を否定し、昭和四十七年政府見解の中に限定的な集団的自衛権行使を許容する憲法第九条解釈の基本的な論理が示されている(その作成当時から存在している)という主張を強弁するのは、許されないことではないか。

  右質問する。