質問主意書

第196回国会(常会)

質問主意書


質問第二一一号

IR実施法案とギャンブル依存症対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年七月十九日

牧山 ひろえ   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   IR実施法案とギャンブル依存症対策に関する質問主意書

 平成二十八年十二月、第百九十二回国会において、異例ともいえる会期延長を経て、「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(以下「IR推進法」という。)が成立した。政府はIR推進法の規定に基づき、特定複合観光施設区域整備法案(以下「IR実施法案」という。)を提出しているが、カジノの設置により、ギャンブル依存症をはじめとした多くの弊害が発生することの懸念が指摘されている。
 厚生労働省の最新の調査では、ギャンブル依存の人は五百三十六万人に上り、国際的にも日本は際立って高い状況である。カジノの解禁は、ギャンブル依存をより悪化させる危険がある。これに関連し、以下質問する。

一 カジノを中核とするIR施設が開設された場合、カジノに起因するギャンブル依存症患者は、どの程度生じると予測しているか。

二 カジノを中核とするIR施設が開設された場合、カジノでのギャンブルに起因する多重債務者の発生が予測される。このギャンブルに起因する多重債務者の増加をどの程度と予測しているか。また、それに対して、どのような対策を立てているか。

三 衆議院での審議では、入場料の性格について、安易な入場を抑止する観点から依存症の予防のために採られている施策であって、すでに依存症になってしまった顧客対策ではない旨、答弁がなされている。
 IR実施法案では、入場回数制限を行うことによる依存症対策が想定されているが、最も効果がある依存症対策ともいえる、カジノ施設への日本人の入場禁止については検討しなかったのか。検討したのであれば、なぜカジノ施設への日本人の入場禁止をIR実施法案に規定しなかったのかを併せて明らかにされたい。

四 カジノが解禁されれば、二十四時間、いつでもカジノでギャンブルに接することができるほか、既存の公営競技等と比べて賭け金の額も大きくなることが想定され、依存症の問題はより一層深刻になるおそれがある。依存症の発症を防止するためには、営業時間の制限や賭け金の限度額の設定などといった既存の公営競技、パチンコ等に起因する依存症対策より高い水準の規制が求められると考えるが、より高い水準の規制は検討しなかったのか。検討したのであれば、なぜより高い水準の規制をIR実施法案に規定していないのか、明らかにされたい。

五 政府は、IR推進法の成立を契機として、ギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議を設置して、既存の公営競技、パチンコ等に起因する依存症対策を進めていると承知している。その中で、相談窓口の設置、本人あるいは家族の申告によるアクセス制限の導入、購入限度額の設定などの取組が進められている。これらの取組は、現時点で効果を上げているといえるのか。

六 既存の公営競技、パチンコ等に起因する依存症対策の強化は、昨年、本格的に始まったばかりだが、この効果が明確にならないまま、「既存の依存症対策を強化したので、カジノも問題ない」とは言えないのではないか。
 IR推進法において、法律の施行後一年以内を目途として必要となる法制上の措置を講ずるとされたことを受けて政府はIR実施法案を提出しているが、既存の依存症対策の効果を検証した上でIR実施法案の議論を進めるべきであり、現状のままでは、IR実施法案に盛り込まれた施策が依存症対策として効果があるかどうかは分からないのではないか。

  右質問する。