質問主意書

第196回国会(常会)

質問主意書


質問第一九三号

イラクのクルド人地域に住むヤジディ教徒への支援に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年七月十八日

藤末 健三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   イラクのクルド人地域に住むヤジディ教徒への支援に関する質問主意書

 昨年十二月のイラクのアバーディー首相によるイスラム過激派組織「ISIL(イラクとレバントのイスラム国)」からのイラク全土の解放宣言から半年以上が経過した。以後、ISILの脅威は縮小傾向にあるとされるが、これまでISILにより多くの被害を受けてきたイラク国民の傷跡は深く、依然として癒えていない状況にある。
 特に、ISILはイラク北部に住むクルド系少数派のヤジディ教徒を異教徒であるとして、侵略・虐殺行為を繰り返してきた。二〇一四年以降、約五千人とも言われるヤジディ教徒が殺害されるとともに、多数の子どもや女性を奴隷や戦闘員として拉致したこと等が報じられてきた。現在も、ヤジディ教徒の住民の多くが住居や故郷を追われたままの状況であることに加え、未だに先の生活が見えない状況にあり、深刻な人道被害が続いている。
 以上を踏まえ、以下質問する。

一 日本政府の、ISILによるヤジディ教徒の虐殺等に対する見解とイラクにおけるヤジディ教徒の現状に対する認識をそれぞれ伺いたい。

二 これまで米国政府を始め、欧州連合、イギリス、カナダ、フランス等の議会は、ISILによるヤジディ教徒への虐殺を公式に認知する声明を出している。日本政府も同様の声明を発出し、国際社会と緊密に連携して、ISILによるヤジディ教徒虐殺問題に対処するとの強い姿勢を示すべきではないか。

三 ISILに拉致・拘束されているヤジディ教徒は、今もなお、三千人以上いるとされる。クルド自治政府及びイラク中央政府によるヤジディ教徒の救出を促進するため、日本政府として、より積極的な働きかけを行い、国際世論の喚起を強めていくべきではないか。

四 二〇一七年一月、日本政府はイラク北部のクルド人地域のエルビル市に領事事務所を開設した。この領事事務所を開設した目的は何か。ヤジディ教徒の難民支援のために、この領事事務所をどのように活用できると考えているのか。

五 ISILの勢力拡大を受け、日本政府は、二〇一四年二月に表明したISIL対策・周辺国支援を目的とする総額約二億ドルの支援など、多額の支援を実施している。これまでに行ったISIL対策・周辺国支援の金額を明らかにされたい。また、政府はイラクに対して、難民・国内避難民への人道支援等を行っているが、その中にヤジディ教徒への支援は含まれているのか。含まれているとすれば、どのような支援をどのような金額で行ってきたのか。

六 難民・避難民となったヤジディ教徒は、住む場所も仕事もないことに加え、食糧、衣類、医療など生活に最低限必要なものが圧倒的に不足しており、先の生活に大きな不安を抱えている。また、警察機構や学校等の生活基盤はISILにより破壊され、現在もこれらの復興は不十分な状況となっている。ヤジディ教徒の難民・避難民のため、日本政府としてどのような支援が可能と考えるか。

七 ISILから逃れた女性の受けた被害や心の傷は極めて深い。こうした人々に対して、例えば、ドイツでは、ヤジディ教徒の女性を受け入れ、治療やトラウマ軽減のための支援に加え、住居の提供を行う特別プログラムを実施し、これまでに千人以上のヤジディ教徒の女性やその家族を救ってきているとされる。日本政府も身体的・精神的な苦痛を経験したヤジディ教徒の女性を積極的に受け入れ、治療やトラウマ軽減のための支援を行うべきではないか。

八 本年四月に行われた「イラクの治安改善のための経済開発に係る東京会議」において、安倍総理は、「真の勝利は(中略)今後二度と暴力的過激主義組織の台頭を許さない豊かで安全な国をイラクに作り上げること」と訴えたが、過激主義を生み出さない国際社会の構築に向け、政府は今後具体的にどのように取り組んでいくのか。

  右質問する。