質問主意書

第196回国会(常会)

質問主意書


質問第一八九号

学習支援費の制度見直しが有子世帯の生活保護受給に与える影響に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年七月十八日

田村 智子   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   学習支援費の制度見直しが有子世帯の生活保護受給に与える影響に関する質問主意書

 本年十月から行われる生活保護基準の見直しは、生活保護世帯の健康と生活に重大な悪影響をもたらすだけでなく、一般低所得者の支出水準と比較して生活保護基準の引き下げを行うやり方によるものであり貧困を改善するどころか負のスパイラルを招きかねない。
 本件生活保護基準の見直しでは学習支援費の支給方法の見直しも行われるが、これにより学校の部活動に参加しない子どもに対しては学習支援費が一切支給されないこととなる。また、現在、生活保護の要否判定に用いられている学習支援費が、この見直しによって要否判定に用いられないこととなれば、これまでの基準であれば生活保護の開始決定を受けられたのに、この見直し後には生活保護を受けられない世帯が増えることになり、有子世帯にとっては生活扶助基準の引き下げより影響が大きくなる。これは、子どもの貧困対策に逆行するものであり許されない。この観点から以下質問する。

一 生活保護の決定は「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和三十六年四月一日厚生省発社第一二三号厚生事務次官通知)において「保護の要否及び程度は、原則として、当該世帯につき認定した最低生活費と、第八によって認定した収入(以下「収入充当額」という。)との対比によって決定すること」とされ、「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」(昭和三十八年四月一日社保第三四号厚生省社会局保護課長通知。以下「課長通知」という。)において、最低生活費に含める費目が示されている。課長通知では生活保護の要否判定を行う際の最低生活費には生活扶助の基準生活費、教育扶助の基準額、学習支援費のように世帯構成や級地などによって一律に額が決定され支給されるもの、教育扶助の教材費や医療費のように当該世帯の個別の需要にもとづいて経常的に実費支給されるものを含めることとしている。
 本件生活保護基準の見直しによって、これまで家庭内学習費、クラブ活動費にあてる費用として小学生、中学生に一律に支給していた学習支援費を、クラブ活動費に使途を限定して実費支給することとした。社会教育として行われる地域のスポーツクラブ、地域の吹奏楽団などの文化活動には参加するが学校部活動には参加しない生徒に対しては、学習支援費は支給されないことになる。
 この見直しに伴って生活保護の要否判定を行う際、教育扶助の学習支援費の取り扱いはどうなるのか。最低生活費に実費分を計上する取り扱いとするのか、それとも一律に計上しないのか政府の見解を明らかにされたい。

二 本件生活保護基準の見直しに伴い、生活保護の要否判定を行う際に学習支援費を最低生活費に計上しない扱いとすることは、有子世帯にとって生活扶助基準の引き下げ以上の影響をもたらす。要否判定に用いる最低生活費を現在の基準と比較して小学生一人あたり二千六百三十円、中学生一人あたり四千四百五十円押し下げる効果をもたらし、生活保護を受けられる有子世帯は減少することになるのではないか。

三 本件生活保護基準の見直しにより生活保護を受けられなくなる世帯が増えることになれば、子どもの貧困対策に逆行することになる。学習支援費の支給を実費支給へと変更することに伴って生活保護を受けられなくなるような事態を避けるべく何らかの対策が必要と思うが政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。