質問主意書

第196回国会(常会)

質問主意書


質問第一七六号

ニホンウナギの生息地保全、資源回復のための河川環境保全と再生に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年七月十二日

川田 龍平   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   ニホンウナギの生息地保全、資源回復のための河川環境保全と再生に関する再質問主意書

 前回質問(第百九十六回国会質問第一三七号)に対する答弁書(内閣参質一九六第一三七号。以下「前回答弁書」という。)は、質問の主旨をはぐらかした答弁であったので、改めて以下、質問する。

一 前回答弁書の「一について」及び「二について」に関して、日本国民にとってニホンウナギは重要な魚であり社会的なニーズが高く、「ニホンウナギが水辺の生物多様性の指標種である」ことが国内外の論文等で示されている。従って、ニホンウナギを守れば水辺の生態系も保全される。また、ニホンウナギの生息数が回復することになれば、水辺の生態系も回復すると考える。従って、「ニホンウナギの生息地の保全・再生」に取り組むことは、河川が本来有している生物の生息・生育・繁殖環境及び多様な河川景観を保全又は創出するために河川管理を行うという、「多自然川づくり」の目的に合致する。一方、国土交通省の河川管理において、アユという単一魚種の保全・増殖のために、調査費を含む予算が投入されている。これと同様に、ニホンウナギという単一魚種の保全・増殖のために国土交通省の河川管理の予算を投入するべきと考えるが、その意思があるか示されたい。

二 前回答弁書の「二について」に関して、ニホンウナギの生息地の保全・再生に資する多自然川づくり事業が実施されているのであれば、情報共有や人材育成、普及事業などが併せて展開されてしかるべきであるが、具体的にどのような事業が多自然川づくり事業に併せて展開されているのか、示されたい。

三 前回答弁書の「三について」に関して、予防原則や順応的管理の考え方に沿って、ニホンウナギの生息地保全の取組について、どのような検討や検証がなされたのか示されたい。仮に当該検討や検証が未実施である場合、いつまでにどのような対象に対し、当該検討や検証の実施を働きかける予定なのか示されたい。

四 前回答弁書の「四及び五について」に関して、ニホンウナギの遡上に影響を与えている河川横断構造物を「水位差が四十センチメートル以上ある状態が恒常化している河川横断構造物」と定義した場合、そのような河川横断構造物の撤去を行う事業について、「ニホンウナギの生息地保全の考え方」が示されて以降の実績及び今後の計画を示されたい。

五 前記四の河川横断構造物の定義如何に関わらず、ニホンウナギの遡上に影響を与える河川横断構造物を撤去することを目的とする事業が、「ニホンウナギの生息地保全の考え方」が示されて以降に行われたことがあれば、その事業の名称、内容等を示されたい。

六 「ニホンウナギの生息地保全の考え方」では、河川横断構造物について、落差の緩和や効果的な魚道の設置等が推奨されているが、河川横断構造物によって生じる落差の緩和を行うための事業や落差の緩和に資する事業が行われたことが、「ニホンウナギの生息地保全の考え方」が示されて以降にあれば、事例を具体的に示されたい。

七 前回答弁書の「六について」では、「慣行水利権を有する者に対し、権利内容の明確な河川法(中略)に規定する許可に基づく水利権への切替えを指導してきた」と答弁しているが、その指導による成果を具体的な数値で示されたい。

八 「ニホンウナギの生息地保全の考え方」の取組事例五「河口堰による遡上の阻害の緩和」で紹介されている芦田川の河口堰における「取組の成果」によると、産卵場を外洋に持つウナギはある程度の個体数が魚道を遡上しているが、河川の淡水域と河口付近を行き来する、河川に根付いた生活史を送るアユ、シラウオ、シロウオ、ウキゴリ、スミウキゴリなどの両側回遊魚は遡上数が非常に少なく、河口堰が回遊魚に与える悪影響は非常に大きいことが分かる。前回答弁書の「六について」にいう指導にとどまらず、権利内容が明確ではない慣行水利権を廃止することによって、新たな水利権を創出するための河口堰の建設は不要となり、既存の河口堰を撤去することも可能となるはずと考えるが、権利内容が明確ではない慣行水利権の廃止に対する政府の見解を示されたい。

  右質問する。