質問主意書

第196回国会(常会)

質問主意書


質問第一六七号

特定複合観光施設区域整備法案と日本国憲法の規定する法の下の平等に対する政府の考え方に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年七月九日

川田 龍平   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   特定複合観光施設区域整備法案と日本国憲法の規定する法の下の平等に対する政府の考え方に関する質問主意書

 外国人富裕層の我が国への来訪を企図しているとされるカジノ事業を合法化させる「特定複合観光施設区域整備法案」(第百九十六回国会閣法第六四号)が参議院で審議されているところであるが、本法案は賭博行為の一つと類推されるカジノ行為を日本人については富裕層にのみ合法化させることとなる恐れがあり、日本国憲法が堅持する「法の下の平等」の精神を著しく害する立法措置であると断じざるを得ない。而して以下に政府の見解を求めるものである。

一 本法案の立法事実に、外国人一般の我が国への来訪及び滞在を促進することがあると理解するところであるが、本法案が規定するカジノ施設をして、外国人一般の我が国への渡航を促すことにつながる具体的な理由について説明されたい。

二 政府は、本法案が規定するカジノ事業にあっては、カジノ施設において外国人富裕層に金銭を使用せしめることが、外国人富裕層に対して観光国としての日本の魅力を高め、我が国への来訪を促すことになるとしていると聞く。つまり、外国人富裕層は賭博行為たるカジノ行為をする機会がなければ我が国を観光しないと政府は理解しているのだと考えるが、政府がそのように理解している根拠について具体的に示されたい。

三 本法案が規定するカジノ施設が外国人富裕層を対象にしているのだとすれば、カジノ施設への入場を外国人富裕層に限定するという考え方もあるにも関わらず、あえて日本国民にも広く開放する理由について明らかにされたい。

四 本法案では、カジノ事業者が特定金融業務を営むことが想定されている。衆議院内閣委員会における本法案の審査で、石井国務大臣及び政府参考人は、カジノ事業者が行う特定金融業務において貸付けの対象となる日本人について、一定以上の金銭をカジノ事業者に預託することができる資力を有する者に限定する旨答弁している。また、石井国務大臣は、当該者を「一般的にかなりの富裕層と言ってもいい方」と答弁している。これは、日本人については、当該預託金を準備できるほどの富裕層であれば、カジノ行為を容認するということであり、事実上、貧富の差をもってカジノ行為の可否を区別するということに等しく、日本国憲法の定むる「法の下の平等」の精神に著しく反するのではないかと危惧するものである。日本人については富裕層にのみカジノ行為を容認するという政策は、「法の下の平等」という崇高な精神に反するのではないかという点について政府の説明を求める。

五 政府は、本法案に関連して、ギャンブル依存症対策と称した対策を提示し、また、預託金を準備できない者に対して金融貸付を行わないことも対策の一つと考えていると思われる。これに対し、石井国務大臣のいう「一般的にかなりの富裕層と言ってもいい方」である預託金を準備できる富裕層へのギャンブル依存症対策について、政府はどのような対策を考えているのか明らかにされたい。預託金を準備できる富裕層はギャンブル依存症になり得ないと考えているのであれば、その明確な根拠を明らかにされたい。

六 本法案の規定するカジノ施設においてカジノに興じることが予定される外国人富裕層に対し、政府はギャンブル依存症対策を講じることを考えているのか、具体的に明らかにされたい。

七 日本国憲法は、日本国政府に対して「法の下の平等」の遵守を求めているところであるが、日本国政府が施策を講じる際には、観光客である外国人に対しても「法の下の平等」は遵守されるものと考えてよいか、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。