質問主意書

第196回国会(常会)

質問主意書


質問第一四一号

平成二十八年十月から実施された社会保険の適用範囲拡大等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年六月十五日

藤末 健三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   平成二十八年十月から実施された社会保険の適用範囲拡大等に関する質問主意書

 平成二十八年十月から、社会保険(厚生年金保険・健康保険)の適用範囲がこれまでの週三十時間以上働く方に加え、従業員五百一人以上の企業で、週二十時間以上働く等の条件を満たす方にも広がっている。
 また、平成二十九年四月からは、従業員五百人以下の企業も、労使の合意に基づき、短時間労働者への社会保険の適用拡大が可能となった。
 さらに、公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律(平成二十四年法律第六十二号)の附則第二条第二項では、「政府は、短時間労働者に対する厚生年金保険及び健康保険の適用範囲について、平成三十一年九月三十日までに検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講ずる」とされている。
 政府は、社会保険が適用されるメリットとして、(1)将来もらえる年金が増えること、(2)障害がある状態になり、日常生活を送ることが困難になった場合なども、より多くの年金がもらえること、(3)医療保険(健康保険)の給付が充実すること、(4)今より保険料が安くなることがあることなどを挙げている。
 だが、現実には、独立行政法人労働政策研究・研修機構が平成二十九年六月末現在で行った調査によると、従業員五百一人以上の企業に属する事業所等のうち、社会保険の適用範囲拡大に伴い雇用管理上の見直しを行った事業所(以下「見直し実施事業所」という。)の六十三・二%が、対象者の所定労働時間を延長する等の適用拡大策を実施し、調査対象となった事業所に勤める短時間労働者のうち、社会保険の適用範囲拡大により働き方が変わったとする方(以下「拡大対応短時間労働者」という。)の五十四・九%が、「厚生年金・健康保険が適用されるよう、かつ手取り収入が増える(維持できる)よう、(短時間労働者のまま)所定労働時間を延長した(してもらった)」と回答する一方、見直し実施事業所の六十九・五%が、対象者の所定労働時間を短縮する等の適用回避策を実施し、拡大対応短時間労働者の三十二・七%が、「厚生年金・健康保険が適用されないよう、所定労働時間を短縮した(してもらった)」と回答している。これらを踏まえ、以下質問する。

一 前記の事業所及び短時間労働者の社会保険の適用範囲拡大への対応状況に対する政府の評価如何。

二 政府は、就業調整を防ぎ、社会保険の適用範囲拡大を円滑に進める観点から、平成二十八年度から「キャリアアップ助成金」の内容を一部変更し、事業主への助成を実施していると承知しているが、実績如何。

三 社会保険の適用範囲拡大が、政府が当初想定していた効果を上げているかを検証するとともに、検証結果に基づき必要な対策をとるべきと考えるが、政府の考え如何。

  右質問する。