質問主意書

第196回国会(常会)

質問主意書


質問第一二二号

生物多様性保全の観点からの森林経営管理法の施行及び森林環境税の使途に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年六月五日

川田 龍平   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   生物多様性保全の観点からの森林経営管理法の施行及び森林環境税の使途に関する質問主意書

 平成三十年五月二十五日に成立した森林経営管理法について、自然保護団体等からは、衆参の法案審議を経てもなお、森林の環境破壊が進むことについての強い懸念が示される一方、里地里山の保全の強化に資する期待も寄せられているので、以下質問する。

一 同法に対する参議院農林水産委員会における附帯決議の一においては、「人工林から自然林への誘導」や「生物多様性の保全」への配慮について、同法の運用を担う市町村に助言等の支援を行うよう明記されているが、これまで林野庁が国有林野において推進してきた森林生態系保護地域や緑の回廊の設定などの取り組みとの整合性を図る上でも、同法施行規則等には「人工林から自然林への誘導」や「生物多様性の保全」を具体的に明記するべきではないか。

二 市町村から意欲と能力のある林業経営者への林業経営の再委託にあたっては、経営基盤の安定した林業経営者への再委託が基本である以上、今後創設することとされている森林環境税(仮称)の収入は再委託先の林業経営者に対する支援措置に投入されないと理解してよいか。

三 同法に基づく市町村森林経営管理事業では、林野庁が国有林野において実施しているような、イヌワシの生息環境改善のための餌場創出を目的とした主伐を行い、その後天然林に戻すこと、クマタカの営巣木創出のための人工林管理施業、小笠原の森林生態系保護地域で実施している外来種対策としてのモクマオウやアカギの伐採や故殺といった取り組みも、市町村の判断で実施できると理解してよいか。

四 野生動植物の絶滅危惧種が集中する地域のうち半数近くが里地里山の範囲に分布している。里地里山に人の手が入らなくなると環境の悪化を招き、生物多様性の危機となる。一方、地域の自然環境保全に取り組む多くのNPO法人等の団体では、人手不足や資金不足から里地里山の保全に有効な施策が打てずにいるが、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)が平成二十九年の常会で改正され、里地里山の保全の強化が社会的要請となっている中、このようなNPO法人等の団体が行う里地里山の自然再生を目的とした事業も、市町村森林経営管理事業として実施できると理解してよいか。

五 前記三及び四の施策や事業等を市町村森林経営管理事業として実施することができるとする場合には、市町村に森林管理や生物多様性保全についての人材や科学的知見が乏しい中、安易な判断に基づく皆伐などにより森林環境の破壊が進まないよう、市町村の参考となるような施策や事業等の好事例集を作成するべきではないか。

  右質問する。