質問主意書

第196回国会(常会)

質問主意書


質問第一〇六号

法律の実施に必要な事項の省令への包括委任規定に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年五月十六日

吉川 沙織   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   法律の実施に必要な事項の省令への包括委任規定に関する質問主意書

 近年、法律の実施に必要な事項を省令(内閣府令を含む。以下同じ。)へ包括的に委任する規定を置く法律が増加している。今国会においても、労働安全衛生法第百十五条の二として「この法律に定めるもののほか、この法律の規定の実施に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。」との規定を置こうとする働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案(第百九十六回国会閣法第六三号)が提出されている。法律による行政の原理から、こうした傾向には疑義があり、その観点から、以下、質問する。

一 内閣が今国会に提出した法律案のうち、委任する事項を具体的に明示せずに「この法律に定めるもののほか、この法律を実施するため必要な事項」を政令又は省令で定める旨の規定(以下「包括委任規定」という。)を置こうとするものは、電気通信事業法及び国立研究開発法人情報通信研究機構法の一部を改正する法律案(閣法第三三号)、統計法及び独立行政法人統計センター法の一部を改正する法律案(閣法第三四号)、都市農地の貸借の円滑化に関する法律案(閣法第四三号)、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案(閣法第五二号)、船舶の再資源化解体の適正な実施に関する法律案(閣法第五三号)、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案(閣法第六三号)があると承知しているが、これらを含め、内閣が今国会に提出した、包括委任規定の設置を含む法律案の件名及び該当する条文番号を全て挙げられたい。

二 過去五年間の常会において内閣が国会に提出した法律案のうち、包括委任規定を置くものの件数を常会別に示されたい。

三 包括委任規定を置く法律の制定や、包括委任規定を置くための法改正が行われた件数を、その年代別(昭和二十二年から昭和六十四年、平成元年から平成十五年、平成十六年以降)に政令、省令それぞれについて示されたい。

四 包括委任規定には、政令に委任する場合と省令に委任する場合とがあるが、政府は両者をどのように使い分けているのか、使い分けの具体的な基準を示されたい。また、委任規定には、包括委任規定を置く場合と、手続や様式など「法律を実施するため必要な事項」のうち委任する事項を具体的に明示した上で政令又は省令に委任する場合とがあるが、政府は両者をどのように使い分けているのか、使い分けの具体的な基準を示されたい。

五 省令への包括委任規定が平成十年代後半以降急増しているが、その理由は何か。

六 平成十年代半ば以前、特に昭和の年代においては、省令への包括委任規定は少なく、包括委任規定が置かれていても、政令に委任する場合や、手続や様式など委任する事項を具体的に明示した上で省令に委任する場合が多くを占めていたが、その理由は何か。

七 実施命令(執行命令)であっても、省令への包括委任は本来抑制的であるべきであり、省令への包括委任規定を置く必要がある場合には、委任する事項を具体的に明示し、細目的事項を省令に委任するものであるとの趣旨を明確にした規定とするべきではないか。

八 包括委任規定による委任を受けて定められた省令の規定に、実質的に国民の権利を制限したり、国民に義務を課したりすることとなるような事項を定めることはありえるか。ありえないならば、その旨を明言されたい。

  右質問する。