質問主意書

第196回国会(常会)

質問主意書


質問第九二号

国務大臣の改憲発言及び内閣の憲法改正原案の国会提出と立憲主義等の関係に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年五月一日

小西 洋之   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   国務大臣の改憲発言及び内閣の憲法改正原案の国会提出と立憲主義等の関係に関する質問主意書

一 政府は憲法第九十九条の解釈について「憲法第九十九条は、日本国憲法が最高法規であることに鑑み、国務大臣その他の公務員は、憲法の規定を遵守するとともに、その完全な実施に努力しなければならない趣旨を定めたものであって、憲法の定める改正手続による憲法改正について検討し、あるいは主張することを禁止する趣旨のものではないと考えている。」としているが、憲法第九十九条では国会議員及び国務大臣の憲法尊重擁護義務を定める一方で、憲法改正手続を定めた憲法第九十六条においては国会議員が構成する国会のみに憲法改正の発議権を付与しているのであるから、安倍総理などの国務大臣が「憲法の定める改正手続による憲法改正について検討し、あるいは主張すること」は、憲法第九十九条で禁止されている、あるいは、同条に定める憲法尊重擁護義務と矛盾すると解するべきではないのか。政府の見解を示されたい。

二 政府は憲法第九十九条の解釈について「憲法第九十九条は、日本国憲法が最高法規であることに鑑み、国務大臣その他の公務員は、憲法の規定を遵守するとともに、その完全な実施に努力しなければならない趣旨を定めたものであって、憲法の定める改正手続による憲法改正について検討し、あるいは主張することを禁止する趣旨のものではないと考えている。」とする一方で、立憲主義について「立憲主義とは、主権者たる国民が、その意思に基づき、憲法において国家権力の行使の在り方について定め、これにより国民の基本的人権を保障するという近代憲法の基本となる考え方」としているところ、憲法第九十九条では国会議員及び国務大臣の憲法尊重擁護義務を定めるとともに憲法第九十六条で国会議員が構成する国会のみに憲法改正の発議権を付与しているのであるから、安倍総理などの国務大臣について「憲法の定める改正手続による憲法改正について検討し、あるいは主張することを禁止」されていないとの政府の憲法第九十九条の解釈は、国務大臣に対して憲法に定められていない権能を認めるものであり、立憲主義の観点から不適切な見解ではないか。

三 憲法第九十九条においては国会議員及び国務大臣の憲法尊重擁護義務を定める一方で、憲法改正手続を定めた憲法第九十六条においては国会議員が構成する国会のみに憲法改正の発議権を付与しているのであるから、政府による「憲法改正の原案を国会に提出することについては、憲法上、内閣は、憲法第七十二条の規定により、議案を国会に提出することが認められていることから可能であると考えている。」との見解は、内閣を構成する国務大臣が憲法に不備があるとしてその改正を実現するために行動することを許容するものであり、憲法第九十九条の定める国務大臣の憲法尊重擁護義務に反する見解になるのではないか。

四 政府は「憲法改正の原案を国会に提出することについては、憲法上、内閣は、憲法第七十二条の規定により、議案を国会に提出することが認められていることから可能であると考えている。」との見解を示す一方で、立憲主義について「立憲主義とは、主権者たる国民が、その意思に基づき、憲法において国家権力の行使の在り方について定め、これにより国民の基本的人権を保障するという近代憲法の基本となる考え方」としているところ、憲法第九十九条では国会議員及び国務大臣の憲法尊重擁護義務を定めるとともに憲法第九十六条で国会議員が構成する国会のみに憲法改正の発議権を付与しているのであるから、「憲法改正の原案を国会に提出することについては、憲法上、内閣は、憲法第七十二条の規定により、議案を国会に提出することが認められていることから可能であると考えている。」との政府の見解は、内閣に対して憲法に定められていない権能を認めるものであり、立憲主義の観点から不適切な見解ではないか。

  右質問する。