質問主意書

第196回国会(常会)

質問主意書


質問第八七号

公立の高等学校における妊娠を理由とした退学等に係る実態把握の結果に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年四月二十七日

牧山 ひろえ   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   公立の高等学校における妊娠を理由とした退学等に係る実態把握の結果に関する質問主意書

 文部科学省が全国の公立高校を対象に行った、妊娠を理由とした退学等に関する実態把握調査によると、平成二十七年四月から平成二十九年三月の二年間に、生徒の妊娠の事実を学校が把握した件数は、全日制で一千六件、定時制で一千九十二件の計二千九十八件あった。この二千九十八件のうち三十二件は、学校が退学を勧めた結果「自主退学」しており、「自主退学」のうち十八件は、本人や保護者が通学継続や休学などを求めていたにもかかわらず、学校側が退学を勧めていた。
 なお、同調査では、妊娠を理由として行った、事実行為としての懲戒については、全日制と定時制を合わせ、自宅謹慎が二件、学校内謹慎・別室指導が十一件、説諭が五十件、その他三十一件が確認されている。
 この調査を踏まえ、文部科学省は平成三十年三月二十九日、全国の教育委員会等に対して、「生徒に学業継続の意思がある場合は、教育的な指導を行いつつ、安易に退学処分や事実上の退学勧告等の対処は行わないという対応も十分考えられる」などとする通知(以下「本件通知」という。)を出した。
 以上を前提に以下質問する。

一 私は、平成二十八年十二月十四日付けで提出した「若年妊娠と学業の継続等に関する質問主意書」(第百九十二回国会質問第七〇号)において、妊娠を理由とした退学等に関する現状把握の必要性を指摘するとともに、妊娠を懲戒の対象にすべきではないこと等とする通知を文部科学省が発出するよう提案した。この度、文部科学省が前記調査を実施し、これを踏まえ本件通知を発出したことについては、評価する。
 しかし、本件通知では「安易に退学処分や事実上の退学勧告等の対処は行わないという対応も十分考えられる」という曖昧な文言となっている。
 十代で妊娠し、高校を卒業できなかった女性は安定した仕事に就くことが難しい場合が多く、貧困の連鎖を引き起こす恐れが指摘されている。そうした状況を防止するためには、文部科学省として「若年妊娠による、望まない学業断念ゼロ」を目指す明確な方針を立てるべきである。
 その上で、生徒に学業継続の意思がある場合には、「安易に退学処分や事実上の退学勧告等の対処は行わないこと。」と明確に記した通知を改めて出すべきと考えるが、政府の見解を伺う。

二 本件通知では、妊娠した生徒が引き続き学業を継続する場合には、養護教諭やスクールカウンセラー等も含めた十分な支援を行う必要がある旨の記述がある。
 この支援は当然実施すべきことではあるが、養護教諭やスクールカウンセラー等による、妊娠した生徒への支援は、学業を継続する意思が明確に示されているか否かにかかわらず、妊娠が判明した段階で、妊娠した生徒全員に対して実施すべきであると考えるが、政府の認識を伺う。

三 妊娠した生徒への支援を実施する際、予期しない妊娠という現実に直面した場合には、生まれた子供について「特別養子縁組」の制度を活用するという選択肢もあることを当該生徒に対して示すよう学校現場に周知するべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。