質問主意書

第196回国会(常会)

質問主意書


質問第七四号

自衛隊のサイバー・セキュリティ能力向上に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年四月十三日

牧山 ひろえ   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   自衛隊のサイバー・セキュリティ能力向上に関する質問主意書

 自衛隊のサイバー・セキュリティ体制やセキュリティ能力向上の方針について、以下の通り質問する。

一 第百九十六回国会で成立した「防衛省設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律」(以下「本法律」という。)により、自衛隊の共同の部隊として設けられているサイバー防衛隊の人数を約百十人から約百五十人に増員し、陸海空のサイバー防衛部隊と合わせて約三百五十人から約四百三十人となると防衛省は本年四月五日の参議院外交防衛委員会において答弁している。サイバー攻撃に対処するためのセキュリティ体制の強化の方向性は評価するが、諸外国のサイバー関連部隊について、米国は六千二百人規模、北朝鮮は約六千八百人、中国に至っては十三万人規模などの情報がある中で、日本の約四百三十人というのはあまりに手薄ではないか。単純な比較は困難であると防衛省は述べているが、ここまで差が大きいと、さすがにサイバー・セキュリティのレベルに影響を与えないとは言い切れない。
 今後、サイバー・セキュリティ体制のさらなる強化、人員増を図るべきと考えるが、政府は本法律によるサイバー・セキュリティ体制の強化やサイバー防衛隊の人員増が適正な規模であると判断しているのか。
 仮に、サイバー・セキュリティ体制のさらなる強化や人員増が必要との見解に立つ場合、サイバー関連部隊について、どの程度の規模が適正であると考えるか。

二 安倍総理は平成三十年一月三十一日の参議院予算委員会で「サイバーやまた宇宙など、新たな領域分野について本格的に取り組んでいく必要がある」と言明している。
 それにも拘わらず、防衛省におけるサイバー関係予算は、平成二十八年度の百七十五億円から、平成二十九年度の百二十四億円、平成三十年度の百十億円と三年連続で減少している。サイバー・セキュリティ体制の強化を掲げる政府の方針とサイバー関係予算額との間の矛盾について説明されたい。また、政府はサイバー・セキュリティ体制の強化に今後どの程度の予算規模が必要であると判断しているのか。

三 サイバー・セキュリティ体制の強化にあたっては、「自衛隊プロパーにこだわらず、外部の高度人材の積極的な活用を図るべきではないか」との本年四月五日の参議院外交防衛委員会での私の発言に対し、防衛省からも「外部の優秀な人材を積極的に活用していくということは必要だ」との答弁があった。
 一方で、防衛省は「雇用形態、報酬形態等につきましては、公務員の勤務給与体系を前提としながら」とも答弁しており、高度な人材であればあるほど、その登用にあたっては、前提となる「公務員の勤務給与体系」が障害になるケースが多いのではと考えるが、政府はその課題についてどのように認識し、どのような対策を考えているか。

四 サイバー・セキュリティ分野は、まさに国防の要となる部分なので、人材育成はもちろんのこと、人材が流出しない工夫なども必要と考えるが、政府の認識如何。

五 サイバー・セキュリティ分野に関しては、民間企業が技術的・専門的な知見を有している部分も非常に多くある。
 量の不足を質で補うという観点から、サイバー・セキュリティ分野における民間との協力体制の強化を推進すべきと考えるが、政府の方針を示されたい。

六 サイバー・セキュリティ分野での民間との協力体制の強化を推進する場合、当該分野は国防の要となる部分でもあるので、業務上知り得た秘密の保持や業務に対する忠実義務等について、極めて慎重な配慮が必要である。
 企業の秘密保持について、防衛省は本年三月二十二日の衆議院安全保障委員会で「民間企業との間で秘密保持契約といったものを締結をしておる」としているが、政府は前記秘密保持契約の他にどのような対策を採っているのか、企業との間の契約だけではなく、当該民間企業で働く方の忠実義務対策についても併せて示されたい。

  右質問する。