質問主意書

第196回国会(常会)

質問主意書


質問第五一号

介護保険の訪問介護の「生活援助」に係る運営基準の改定に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年三月二十九日

相原 久美子   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   介護保険の訪問介護の「生活援助」に係る運営基準の改定に関する質問主意書

 介護保険制度は、制度開始から十八年を経過し、制度開始時に比べ、介護サービスの提供量を大幅に増加させ、高齢者の介護に一定の役割を果たしていると評価できる。一方、介護保険制度の大きな目的である介護の社会化や、「施設から在宅へ」、「医療から介護へ」などの掛け声とは裏腹に、制度の複雑化、明確な根拠のない報酬基準の改定、介護保険財政による医療的サービス費用負担の増加、介護労働者の低賃金等を要因とする人手不足などが進み、利用者にとっても事業者にとっても分かりにくく、使いづらい制度になっている。
 このような状況の中、平成三十年度において、在宅の要介護高齢者の生活の質を大きく左右する「生活援助」について定める「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」の改正が予定されていることから、次のとおり質問する。

一 前記基準の改正では、介護支援専門員(以下「ケアマネジャー」という。)が訪問介護の「生活援助」の提供回数が全国の平均利用回数より二標準偏差以上多い介護サービス計画(以下「ケアプラン」という。)を作成する場合には、そのケアプランを事前に市町村へ届け出るものとする(以下「ケアプランの事前届出」という。)とともに、市町村は届出のあったケアプランを検証し、必要に応じ、ケアマネジャーに対してサービス内容の是正を促す(以下「サービス内容の是正指導」という。)こととしている。

1 ケアプランの事前届出の目的は何か。
2 仮に、ケアプランの事前届出が、「生活援助」の提供回数が全国の平均利用回数から大きく離れたケアプランについては市町村が点検する必要があるため行われるのであれば、必要なサービスが提供されていない可能性がある、「生活援助」の提供回数が少ないケアプランについても市町村が点検できるよう、事前に届け出るものとする必要があるのではないか。
3 厚生労働省の指導により市町村が従前から行っているケアプラン点検事業と、ケアプランの事前届出及びサービス内容の是正指導との関係を明確に示されたい。
4 ケアプランの事前届出は行政指導であり、仮にケアプランの事前届出を行わなかったとしても、そのことを理由とした指定事業者への指導や指定取り消しなどの不利益な取り扱いは、行政手続法第三十二条第二項(又は同項の規定と同趣旨の内容を定める各自治体の行政手続条例の規定)により許されないものと理解するが、そのような理解で間違いないか。
5 サービス内容の是正指導は、どのような場合に、どのように行うのか明確にされたい。
6 ケアプランは、介護保険法上の居宅サービスの給付としてケアマネジャーにより作成されている。個別の給付内容をケアマネジャーに直接指導することは市町村(保険者)の権限には含まれないと考えるが、市町村がサービス内容の是正指導を行う法的根拠を明らかにされたい。また、サービス内容の是正指導により変更されたケアプランの内容が介護サービスの利用者が望まないものであったとしても従わなければならないのか、サービス内容の是正指導と介護サービス利用者の権利との法的関係について明らかにされたい。
7 仮に、ケアプラン点検事業による指導やサービス内容の是正指導に従いケアプランが変更された結果、そのケアプランに基づく介護サービスを受けた利用者に体調悪化などの居宅生活における不利益が生じた場合、不利益が生じたことに対する責任は誰が負うことになるのか、明確にされたい。

二 訪問介護の「生活援助」は、高齢者の自立を支えるために重要なサービスであり、「生活援助」の利用が制限されれば、その分は家族が世話せざるを得なくなる。これは、「介護の社会化」という介護保険制度の趣旨に反するだけでなく、政府が主張する「介護離職ゼロ」の実現の障害にもなると考えるが、いかがか。

  右質問する。