質問主意書

第196回国会(常会)

質問主意書


質問第五〇号

意思決定支援等を行う者に対する研修の実施に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年三月二十六日

川田 龍平   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   意思決定支援等を行う者に対する研修の実施に関する質問主意書

 二〇一八年二月七日に権利擁護団体及び障害者団体等が中心となり、二〇一八年度厚生労働省予算案のうち「意思決定支援等を行う者に対する研修の実施」(以下「本事業」という。)に係る学習会が開催され、重要な課題が指摘された。その後、私が何度か権利擁護団体及び障害者団体等とともに厚生労働省担当者と意見交換を行ってきたことを踏まえ、以下質問する。

一 日本の精神科病院に入院する精神障害者の人権が十分に擁護されていないと考えているのか、政府の見解を明らかにされたい。

二 本事業の概要を説明する厚生労働省の資料には、「相談支援事業所に所属する相談支援専門員(アドボケーター)が、非同意入院患者のいる病院を訪問し、退院に向けた意思決定支援や退院請求などの入院者が持つ権利行使の援助等を行うための人材養成を行う」と記されているが、本事業により養成される人材の機能は、二〇一七年二月八日の「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会報告書」において「意思決定支援等を行う者に想定される機能」として示された、①患者に寄り添い、治療内容の理解等を促すとともに、患者の意思を引き出し、意思決定等を支援し、本人の同意があれば医療機関に意思を伝える機能、②退院に向けた意思決定等を支援し、退院促進を図る機能、③退院請求など入院者が持つ権利行使を支援する機能、④入院の必要性や適切な医療が行われているかどうかを判断する機能という四つの機能のうち、②と③に関するものであって①と④は含まないという理解でよいか、政府の見解を明らかにされたい。

三 前記①の機能は、診療報酬を受けて業務を行う病院職員の機能と重複するため、現時点では相談支援事業所に所属する相談支援専門員(アドボケーター)の機能と位置付けることには慎重を要すると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

四 アドボケーターを「主体的に精神科医療を受けられるように側面的に支援する者」と定義している二〇一五年度障害者総合福祉推進事業の「入院に係る精神障害者の意思決定及び意思の表明に関するモデル事業」は、治療内容の理解等を促し患者の意思を引き出す機能を目的とした内容になっているため、仮に本事業により養成される人材の機能が前記②と③に関するものが主ならば、同モデル事業を踏まえてまとめられた「入院に係る精神障害者の意思決定及び意思の表明に関するアドボケーターガイドライン」に基づき作成された研修カリキュラムを本事業で実施するのは不適切と考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

五 前記ガイドラインの記述には、アドボケーターが入院患者に情報提供をしてはならないとする内容や、アドボケーターに対して入院患者と話したことなどを医療機関に報告するよう求める内容と理解せざるを得ない箇所がある。本事業が想定するアドボケーターは、入院患者に情報提供をせずに、入院患者に話したことなどを医療機関に報告する役割を期待されているのか、政府の見解を明らかにされたい。

六 英語では、権利擁護(advocacy)をする人を一般的に「advocator」とはよばず、「advocate」とよぶが、本事業においても「アドボケーター」ではなく「アドボケイト」と表記するのが適切ではないか。また、「アドボケーター」から「アドボケイト」へと表記を修正する予定はあるのか、政府の見解を明らかにされたい。

七 障害者の権利に関する条約の趣旨に基づけば、本事業を企画し実行するための会議体を今後設置する場合には、精神障害者を代表する団体から推薦を受けた、少なくとも二人以上の精神障害当事者が当該会議体の構成員となるべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。