質問主意書

第196回国会(常会)

質問主意書


質問第一二号

安倍総理の東欧訪問とたばこの規制に関する世界保健機関枠組条約締結国の責務に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年二月九日

松沢 成文   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   安倍総理の東欧訪問とたばこの規制に関する世界保健機関枠組条約締結国の責務に関する質問主意書

 本年一月の安倍総理の東欧訪問に日本たばこ産業株式会社(JT)などの日本企業が同行するとの報道があった。
 この報道を受け、以下質問する。

一 日本は、たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約(FCTC)締結国である。FCTCに定める受動喫煙防止等の措置の国内における実施を所管する省庁はどこか。

二 FCTC締結国である日本の政府が前記の東欧訪問に際し、経済ミッションの名の下にJTを同行させタバコの販売を手助けすることは、FCTC第五条第三項「締約国は、たばこの規制に関する公衆の健康のための政策を策定し及び実施するに当たり、国内法に従い、たばこ産業の商業上及び他の既存の利益からそのような政策を擁護するために行動する」に抵触するのではないか。政府の見解如何。

三 「WHOたばこ規制枠組条約第五条三項の実施のためのガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)には、勧告として「(4)官僚や政府職員の利益相反を避ける」、「4.10 締約国は、政府又は準政府機関の関係者又は職員がたばこ産業から金銭又は現物による報酬、贈与又はサービスを受け取ることを許してはならない」とある。これは、「たばこ産業に商業上及び他の既存の利益を有する組織又は個人がたばこ規制に関する公衆衛生政策に関与することは、否定的な影響を及ぼす可能性が非常に高い」とされているためである。加藤勝信厚生労働大臣は、たばこ産業から献金を受けたと言われており、たばこ産業の利害関係者であると見受けられる。同大臣が今通常国会への提出を予定されている健康増進法の一部を改正する法律案の所管大臣であることは、適任であるのか、また、FCTC違反にあたるのではないか。政府の見解如何。

四 財務省がJT株を保有し配当利益を得ることは、ガイドラインの「4.7 政府機関及びその組織は、国営たばこ産業に対する締約国の事業所有権を管理運営する場合を除き、たばこ産業からの金融的利益を有するべきではない」に抵触するのではないか。政府の見解如何。

五 米国疾病対策センター(CDC)のブレンダ・フィッツジェラルド所長は、JTなどの株式を購入していたとの報道を受け、本年一月三十一日に辞任したとの報道があった。これは、CDC所長がたばこ会社の株式を保有していることで、重要な公衆衛生の政策議論に関与することができないのではないかとの批判を受けたからである。たばこ産業から利益等を受けた者が、公衆衛生の政策議論へ関与することは排除されるべきである。
 昨年三月に厚生労働省が公表した「受動喫煙防止対策の強化について(基本的な考え方の案)」への対案を公表する等、自民党たばこ議員連盟は受動喫煙対策に係る法整備に大きな影響を及ぼしており、本年一月三十日に厚生労働省が公表した「「望まない受動喫煙」対策の基本的考え方」は、昨年三月の案に比べて大幅に後退している。たばこ産業から利益を受けた者が受動喫煙対策に係る法整備に関与することは、国民の利益を損ない、受動喫煙が原因で亡くなる方を救えないことに繋がると考えるが、政府の見解如何。

  右質問する。