質問主意書

第195回国会(特別会)

質問主意書


質問第二八号

「医薬分業の欠点」にかかる政府の今後の展望に関する再質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十九年十二月五日

川田 龍平   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   「医薬分業の欠点」にかかる政府の今後の展望に関する再質問主意書

 政府は、私が提出した「医薬分業の欠点」にかかる政府の今後の展望に関する質問主意書(第百九十五回国会質問第二〇号。以下「先の質問主意書」という。)に対する答弁(内閣参質一九五第二〇号)において、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)等の薬事に関する法令に違反した者については、これらの法令に基づき、厳正に行政処分等がなされるべきものと考えている」との見解をお示しいただいたところであるが、当該答弁にある「薬事に関する法令」には、健康保険法等の調剤報酬にかかる法令がふくまれているかどうか不明であるため質問趣旨を明らかにした上で再質問するものである。

一 先の質問主意書にて問題提起した通り「薬物療法の安全性確保」における薬局及び薬剤師の役割は重要なものであると考えている。しかしながら、大手調剤チェーンの一部において、調剤報酬請求を巡って「処方箋付け替え問題」が相次いでいると聞く。一連の「処方箋付け替え問題」については、平成二十九年十月二十五日に開催された財務省の財政制度等審議会財政制度分科会で問題とされたと聞くが、同分科会では単に「不正請求」という金銭面の問題のみが取り沙汰されているだけで、「処方箋付け替え問題」の本質である「医療安全上の責任の所在が曖昧になる」ことについての議論が疎かにされているものと感ずるところである。「医療安全上の責任の所在が曖昧になる」ということは、医療安全の質を担保できないことを意味し、先の質問主意書で私が指摘した「薬物療法の安全性確保」を顧みない行為のひとつであると感ずるところである。私のこうした問題意識は、紀平哲也厚生労働省医薬・生活衛生局薬事企画官も共有されていると認識するところであり、平成二十九年十一月二十六日に開催された日本薬局学会学術総会にて、紀平薬事企画官は「調剤の責任の所在が不明になってしまう」と発言され、さらに「処方箋付け替え問題は、決してお金の話だけではない」と述べていると聞く。而して、ここに政府の見解を問うが、一連の「処方箋付け替え問題」は、薬物療法の安全上の問題と認識しているのかどうか明らかにされたい。

二 一連の「処方箋付け替え問題」について、関係法令に基づき厳正に処罰するのか明らかにされたい。

三 一連の「処方箋付け替え問題」は、調剤報酬にかかる不正事例であると認識するところであるが、厚生労働省は、調剤報酬にかかる不正事例についてはいかなる問合せであっても、「個別の事例には答えられない」という回答で一貫していると承知している。しかしながら、厚生労働省のこの情報非開示の姿勢は、健康保険料を負担している国民の、自らの健康保険料にて療養給付を行っている調剤薬局等において不正が行われていたという事実を知る権利を阻害しているのではないかと危惧するものである。然らば、政府の見解を問うが、厚生労働省は、何故に、調剤報酬にかかる不正事例への問合せについて「個別の事例には答えられない」としているのかを明らかにされたい。この際、国民の知る権利を阻害している合理的な理由についても提示されることを望むものである。

四 調剤報酬にかかる不正事例は、不正請求であると同時に、国民の信託を裏切る行為であり、紀平薬事企画官も指摘されているように、「調剤の責任の所在が不明になってしまう」危険性があるとなれば、それは調剤の実行者たる調剤者が不明確であるということであり、その調剤自体が完遂されていないことにもつながる。完遂されていない調剤によって交付された医薬品が国民の手に渡ることは、薬物療法の安全確保を危機たらしめることは間違いない。したがって、政府においては厳正に行政処分等がなされるものと考えるところである。加えて、関係法令による行政処分と同時に、当該調剤薬局等の不正行為について詳らかにするべきと考えるところであるが、政府においては、調剤報酬にかかる不正事例について、国民に開示するための議論を開始する用意があるのかどうかにつき明らかにされたい。

五 最後に、調剤報酬にかかる不正事例における被保険者への不正請求分の返還について尋ねる。現行法令にあっては、不正請求を行った調剤薬局等が被保険者に対して不正請求分の自己負担金を返還する手続について定める法令が整備されていないと理解するところである。したがって、厚生労働省が先に述べた情報非開示を続けることによって、不正請求の被害者である被保険者は、自らが被害にあったことを知ることができない。他方、保険者には、健康保険法の規定によって不正請求分を返還させる法令が整備されている。これは、単に、国民から保険料を預かっているに過ぎない保険者を優遇し、真の負担者である国民を軽視する不平等行政である。調剤薬局等の事業者によって不当利得された自己負担金を国民が自ら回収できるように促すためにも情報開示は必要不可欠と考えるものであるが、政府の都合で情報開示は難しく、不正請求を行った当該事業者の利益を優先し、調剤報酬にかかる不正事例の情報非開示を続けるというのであれば、せめて不当利得である不正請求分の被保険者への返還制度を法令化するべきと考えるところであるが、政府の見解如何。

  右質問する。