質問主意書

第195回国会(特別会)

質問主意書


質問第五号

警察官及び警察行政職員の採用試験に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十九年十一月一日

山本 太郎   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   警察官及び警察行政職員の採用試験に関する質問主意書

 警察官や警察行政職員の採用試験に関しては、より公平な制度を検討し、周知・公開することが警察行政のより高い透明性の確保にもつながると考える。また、警察官や警察行政職員の採用時に万が一にも差別があってはならない。そこで以下質問する。

一 警察官や警察行政職員の採用試験に際して、受験者の身辺調査はあるのか明らかにされたい。

二 警察官や警察行政職員の採用に際して、受験者本人が国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第三十八条や地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)第十六条に定める欠格事由に該当していないにもかかわらず、受験者が次の1から8のいずれかの社会的身分又は門地にあること(以下「属性」という。)を理由として、警察官や警察行政職員に採用されないことがあるのか、項目ごとに明らかにされたい。

1 鈴木貴子衆議院議員提出の「日本共産党と「破壊活動防止法」に関する質問主意書」(第百九十回国会質問第一八九号)に対する答弁(内閣衆質一九〇第一八九号)で「現在においても、破壊活動防止法に基づく調査対象団体である」とされている日本共産党に親族が職員又は党員として所属している若しくは過去に本人が同党に職員又は党員として所属していた者
2 無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律(平成十一年法律第百四十七号)第五条第一項に定める「観察に付する処分」の対象団体に親族が所属している者
3 祖父母や親が我が国に帰化した者である者
4 我が国に永住許可を受けている者又は特別永住者若しくは親が永住許可を受けている者又は特別永住者である者
5 暴力団に親族(民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百二十五条の示す親族)が所属している者、又は所属していた者
6 前科(有罪判決で、刑の言渡しを受けた経歴とする。)のある暴力団員の親族である者
7 暴力団ではないが前科のある者の親族である者
8 前科のある者

三 警察官や警察行政職員の採用試験に際して受験者の身辺調査がある場合、受験者が前記二の属性のいずれかを持つことを理由として、警察官や警察行政職員に採用されないことはあるのか。採用されないことがある場合、当該属性を持つとの判断に当たり対象となる親族の範囲は民法第七百二十六条の定めに従えば、何親等までであるのか。
 また、当該属性を持つことのみを理由に採用されないことはないとしても、受験者が当該属性を持つことが採否の判断に当たって受験者の不利に取り扱われることはあるのか。

四 受験者の身辺調査がない場合、警察官や警察行政職員への採用後、当該職員が前記二の属性を持つことが明らかになった場合、警察官や警察行政職員として不利益を被る属性があれば示されたい。

五 憲法第十四条第一項には「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」とあり、第二十二条第一項には「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。」とある。また、国家公務員法第三十八条及び地方公務員法第十六条は、社会的身分又は門地を欠格条項としていない。警察法(昭和二十九年法律第百六十二号)第一条には「個人の権利と自由を保護」、「民主的理念を基調とする警察」、同法第三条には「警察の職務を行うすべての職員は、日本国憲法及び法律を擁護」とあり、高い理念を謳っている。
 厚生労働省ホームページの「公正な採用選考の基本」にも「本人のもつ適性・能力以外のことを採用の条件にしないこと」、「家族状況や生活環境といった、応募者の適性・能力とは関係ない事柄で採否を決定しないということ」と社会的身分又は門地による差別は適当でない旨が記載されている。
 社会的身分又は門地を理由として警察官や警察行政職員への採用をしない場合、その取扱いが必要な理由と法的根拠を説明されたい。

六 警察官や警察行政職員の採用試験に際し、受験者の成績等が合格基準に達していても、面接試験や身辺調査により受験者の社会的身分又は門地が明らかとなり、これを理由として不採用となることがある場合、社会的身分又は門地を理由に不採用となることがある旨を事前に周知し、受験予定者の理解を得るべきではないかと考えるが見解はどうか。

七 警察官や警察行政職員の採用試験に際して、受験者の身辺調査で社会的身分又は門地も調査している場合、前記二の属性を持つことを理由に不採用となった受験者数の都道府県別の統計を取っているのか。統計を取っている場合は直近の人数を示されたい。都道府県別の全国的統計を取っていない場合、個別の都道府県で独自に統計を取っている例があれば、当該都道府県名を示されたい。

八 警察官や警察行政職員の採用試験に際して、受験者の身辺調査で社会的身分又は門地も調査しているものの、これが採否の判断に影響を与えない場合、前記二の属性を持つ者が警察官や警察行政職員に採用された人数を過去十年間につき都道府県ごとに示されたい。その人数が明らかでない場合は、前記二の属性別に、実例の有無を都道府県ごとに示されたい。

九 警察法第三条では「この法律により警察の職務を行うすべての職員は、日本国憲法及び法律を擁護し、不偏不党且つ公平中正にその職務を遂行する旨の服務の宣誓を行うものとする。」とされている。また、警察庁職員の服務に関する訓令(昭和三十四年三月二十三日警察庁訓令第四号)第五条には職務における廉潔の保持等が書かれている。
 高い志で警察官や警察行政職員を目指す者に、宣誓を破る者はまずいないと思量する。だが万が一にも、非合法団体や利害関係者との癒着があってはならない。警察官や警察行政職員における汚職防止等の施策にはいかなるものがあるか、全て示されたい。

十 前記二の属性を持つ者を警察官や警察行政職員に採用している場合、採用された者が、例えば暴力団関係者を親に持つ者であるならば、万が一にも本人があらぬ疑いをかけられないよう、暴力団に関連のない部署で勤務させる等の配慮や対策は講じられているのか。当該配慮や対策が講じられている場合は、その実例を前記二の属性ごとに示されたい。また、当該配慮や対策は、一部の都道府県独自の取り組みではなく、全国的に行われていることなのか明らかにされたい。

十一 刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第二百三十九条第二項では「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。」とある。
 一方、刑法(明治四十年法律第四十五号)第百五条には「前二条の罪については、犯人又は逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除することができる。」とあり、親族の場合は犯人蔵匿等や証拠隠滅等の罪が成立しても、刑を免除することができると理解している。
 刑事訴訟法第二百三十九条第二項については公務時に限り、刑法第百五条は公務時だけでなく私的な時間も含むと認識する。そのため、例えば、警察官や警察行政職員の親族が罪を犯し、このことを当該警察官や警察行政職員が勤務時間外に知り、当該親族を蔵匿し又は当該犯罪の証拠を隠滅した場合、刑事訴訟法第二百三十九条第二項によれば当該警察官や警察行政職員は必ずしも当該親族を告発する必要はなく、また、刑法第百五条によれば当該警察官や警察行政職員の刑を免除するとはされていないため、両条文に矛盾は生じないと認識しているが、その認識でよいか見解を示されたい。

十二 前記十一の私の認識と政府の見解が異なる場合、もし警察官や警察行政職員がその親族の犯罪を勤務時間内又は勤務時間外に知ったとき、刑事訴訟法第二百三十九条第二項と刑法第百五条のどちらが法的に優先して適用されるのか。あるいは他の解釈があるのか、見解を示されたい。

十三 警察官や警察行政職員の採用試験に際して、社会的身分又は門地による差別が全くない場合、受験者が安心して試験に臨めるよう、試験が公平に行われていると理解されることが大切だと考える。社会的身分又は門地が採否の判断に影響を与えることがないことを、各都道府県が警察官や警察行政職員の採用試験に際して公表しているか示されたい。
 公表していない場合、当該採用試験の募集要項や当該採用試験に係る各都道府県のホームページ等に記載することとしてはどうかと考えるが見解を示されたい。

十四 警察官や警察行政職員の採用試験の公平性を担保する仕組みとして、学力試験や面接試験等の採用試験が公平かつ客観的に行われたかどうかを受験者が確認する手段はあるのか。例えば情報公開制度等、現状で用いることのできる手段を全て示されたい。また、確認する手段を今後構築する予定があれば併せて示されたい。

  右質問する。