質問主意書

第193回国会(常会)

答弁書


答弁書第一三二号

内閣参質一九三第一三二号
  平成二十九年六月二十日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員川田龍平君提出医師の長時間労働規制の在り方に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員川田龍平君提出医師の長時間労働規制の在り方に関する質問に対する答弁書

一について

 平成二十四年就業構造基本調査によると、労働時間が週六十時間を超える雇用者(年間就業日数二百日以上の正規職員をいう。)の割合は全職業平均が十四・○パーセント、医師が四十一・八パーセントであるのに対し、例えば看護師(準看護師を含む。)についての当該割合は五・四パーセントとなっており、御指摘の「他の医療職」において医師のように極端な時間外労働が常態化しているわけではないことから、御指摘の「タスク・シフティングに支障が出る」との懸念は当たらないものと考えている。

二について

 医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第三十条の十九の規定については、病院等(病院及び診療所をいう。)の管理者が医療従事者(同法第四条第一項第一号に規定する医療従事者をいう。)その他の職員の協力の下に一連の過程を定めて継続的に行う自主的な勤務環境を改善する活動を促進する趣旨のものであることから、現時点において、御指摘のように「義務と」する必要はないものと考えている。

三について

 御指摘の「医療勤務環境改善支援センター」の「業務を委託」できる者については、医療法第三十条の二十一第二項の規定に基づく医療法施行規則(昭和二十三年厚生省令第五十号)第三十条の三十三の十一の規定において、同法第三十条の二十一第一項各号に掲げる事務を「適切、公正かつ中立に実施できる者として都道府県知事が認めた者」とすると定められているため、各都道府県において適切に当該委託を受ける者が選定されていると認識している。

四について

 御指摘の「救急医療従事者の負担軽減」としては、不要不急の救急医療機関の利用による救急医療機関の負担を軽減することに加えて、一部の救急医療機関に患者が集中することによる救急医療機関の負担を軽減することが重要であると考えている。
 厚生労働省においては、都道府県に対し、消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第三十五条の五第一項に規定する実施基準に基づく適切な傷病者の搬送及び医療機関の受入れが可能な体制、患者の状態に応じた適切な救急医療の提供が可能な体制等を構築する必要があること、救急の医療体制に求められる医療機能を担う医療機関の名称等を記載した医療計画(医療法第三十条の四第一項に規定する医療計画をいう。)を住民に分かりやすい形で公表する必要があること等を示しているところである。また、夜間の小児の急病等に関して、地域の小児科医等が電話相談に応じる体制の整備について、地域医療介護総合確保基金により支援を行っている。
 加えて、医療勤務環境改善支援センターの実効性の向上等に努めていくことで、引き続き救急医療の現場を含めた医療機関の勤務環境を改善してまいりたい。

五について

 全国の病院を対象として実施されたアンケート調査によると、「いきいき働く医療機関サポートWeb」(以下「いきサポ」という。)の認知度が平成二十七年度の十八・七パーセントから平成二十八年度の三十六・七パーセントに増加するとともに、いきサポを閲覧したことがある者のうち九十二・三パーセントが「非常に参考になる」又は「参考になる」と回答していること等から、医療機関においていきサポは適切に活用されているものと考えている。引き続き、いきサポの内容の充実及び周知に努めてまいりたい。

六について

 お尋ねの調査については、平成二十七年十一月に全国の医療機関等を対象として産業医の選任状況に関するアンケート調査を実施したところである。
 後段のお尋ねについては、個別の医療機関に関することであり、お答えを差し控えたい。

七について

 お尋ねの「当直制」の意味するところが必ずしも明らかではないが、厚生労働省としては、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第四十一条第三号に規定する断続的労働としての宿直等の勤務について、医療勤務環境改善支援センターにおいて必要な助言等を行うとともに、労働基準監督機関において必要な周知等を行っており、引き続き医療従事者の勤務環境の改善に努めてまいりたい。

八について

 御指摘の「週八十時間以上の長時間労働など労働関係法令に違反した疑いで送検された企業などの一覧」においては、労働関係法令違反の疑いで送検され公表されれば、事業所を一つしか有していない医療機関や医療施設等も御指摘の「公表」の対象となる。

九について

 平成二十九年三月十三日に公表した「平成二十八年度「過重労働解消キャンペーン」の重点監督の実施結果」においては、御指摘の「重点監督」(以下「重点監督」という。)の結果について分かりやすい広報を行う観点から、労働基準法別表第一に掲げる業種を基準として、一定数以上の事業場に対して重点監督を実施した業種に限定して集計し、公表している。
 お尋ねの「医療機関」は「保健衛生業」に含まれるが、「保健衛生業」を細分化して集計及び公表を行うと業種ごとの傾向が不明確となるため、現時点においてこれ以上細分化することは考えていない。

十について

 お尋ねの「医療機関における職場情報提供制度」の実施状況については、把握していない。

十一について

 青少年の雇用の促進等に関する法律(昭和四十五年法律第九十八号)第十三条及び第十四条の規定による学校卒業見込者等に対する青少年雇用情報の提供義務等については、学校卒業見込者等の適職選択の重要性に鑑み設けられたものであり、御指摘の「前事業年度の月平均所定外労働時間の情報」について「募集・求人申込みを行う全ての企業に対して公表義務を課す」ことは考えていない。
 なお、賃金構造基本統計調査では、当該調査の対象となっている職種について毎年六月分の平均の超過実労働時間数を調査し、公表している。また、毎月勤労統計調査では、毎月の月間所定外労働時間数を調査し、産業別に一人当たり平均の月間所定外労働時間数を公表している。