質問主意書

第193回国会(常会)

答弁書


答弁書第一一八号

内閣参質一九三第一一八号
  平成二十九年六月九日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員川田龍平君提出東海再処理工場のシビアアクシデント防止等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員川田龍平君提出東海再処理工場のシビアアクシデント防止等に関する質問に対する答弁書

一について

 個別の報道の内容に関し、政府としてコメントすることは差し控えたい。なお、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(以下「原子力機構」という。)が平成二十八年十一月三十日に原子力規制委員会に提出した「国立研究開発法人日本原子力研究開発機構東海再処理施設の廃止に向けた計画等の検討について(報告)」(以下「報告書」という。)によると、同年一月三十一日時点の原子力機構の核燃料サイクル工学研究所再処理施設(以下「東海再処理施設」という。)における高放射性廃液の保有量は、約四百立方メートルであり、そのガラス固化処理の目標処理期間は、同年十一月三十日時点で十二・五年であったとのことである。また、東海再処理施設では、同年に約五十本の高放射性廃液のガラス固化体を製造する予定であったところ、関連設備で発生したトラブル等のため、同年中に製造したのは十三本であったところと承知している。
 さらに、お尋ねの「JAEAの計画や技術的問題をどう捉え」の意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、原子力機構に対し、東海再処理施設の廃止を、安全確保を大前提として、着実かつ責任を持って進めるように、今後とも指導してまいりたい。

二について

 原子力機構は、東海再処理施設について、原子力規制委員会に核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「法」という。)第五十条の五第二項の規定に基づく廃止措置に関する計画(以下「廃止措置計画」という。)の認可の申請をする予定であると承知しており、原子力規制委員会において、当該認可の申請に係る廃止措置計画について、同条第三項において準用する法第十二条の六第四項の規定に基づいて、廃止措置期間中における津波対策等が災害の防止上適切なものであること等の基準に適合していると認められるかどうかを審査することになるものと考えている。

三について

 個別の報道の内容に関し、政府としてコメントすることは差し控えたい。いずれにせよ、東海再処理施設における放射性廃棄物の管理については、法第四十八条第一項第三号等の規定に基づく措置が講じられているものと認識しており、「監督官庁に責任がある」との御指摘は当たらない。なお、原子力機構からは、将来の高放射性固体廃棄物の処理を見据え、高放射性固体廃棄物の貯蔵状態の改善を行う予定があると聞いている。

四の1について

 報告書によると、平成二十八年一月三十一日時点の東海再処理施設における使用済燃料集合体の保有量は、MOX燃料が百五十三体、二十三トン及びウラン燃料が百十二体、十七トンであり、いずれも新型転換炉「ふげん」(以下「ふげん」という。)から発生したものであったとのことである。

四の2について

 お尋ねの「前記1の使用済み核燃料に含まれるセシウム137の放射能総量」については、承知していない。

四の3について

 報告書によると、現在貯蔵中のふげんから発生した使用済燃料は、長期間にわたり冷却されており発熱量が低く、使用済燃料貯蔵プールの水循環を停止しても水温は上昇しないことから、「沸騰は何日で開始するのか」とのお尋ねにお答えすることは困難である。
 また、御指摘の「緊急避難移送先」の意味するところが明らかではないため、「緊急避難移送先は確保されているのか」とのお尋ねにお答えすることは困難である。なお、報告書によると、プール水が全喪失に至った場合においても、燃料損傷に至ることはなく、未臨界を維持するとのことである。

四の4について

 お尋ねの「いつからどこの国で再処理を行い、使用済み核燃料をどのように搬出する計画なのか」については、政府としてお答えする段階にない。

四の5について

 我が国は、利用目的のないプルトニウムは持たないとの原則を引き続き堅持しており、「日本はプルトニウムを過剰に保有している」との御指摘は当たらないことから、「この状況において、使用済み核燃料の「海外再処理」を認めてよいのか」とのお尋ねにお答えすることは困難である。
 また、お尋ねの「より安全に使用済み核燃料を保管する等の検討」については、政府としては、原子力機構において、東海再処理施設における使用済燃料についての御指摘のような「検討」が行われているかどうかは承知していない。

五について

 お尋ねの「現在使用している蒸発缶」の意味するところが必ずしも明らかではないが、科学技術庁(当時)においては、東海再処理施設においてガラス固化処理を行うガラス固化技術開発施設に係る法第四十五条第一項の設計及び工事の方法の認可に当たって、当該施設に属する容器及び管並びにこれらを支持する構造物のうち施設の安全性を確保する上で重要なものの材料及び構造が、その設計上要求される強度及び耐食性を有していること等を確認している。また、法第四十六条の二の二本文において、「再処理事業者は、再処理施設の性能が原子力規制委員会規則で定める技術上の基準に適合するようにその再処理施設を維持しなければならない」と規定されているところ、腐食等により施設の安全性に影響を及ぼすおそれのある場合に適切な措置が講じられること等、原子力機構が同条の規定に従い東海再処理施設の性能を維持していることを、原子力規制委員会において法第五十条第五項の規定に基づく検査等において確認することとしている。

六について

 御指摘の「この回答」については、政府として把握していない。
 また、お尋ねの「セル等の構造を踏まえ技術的に可能」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。
 なお、報告書によると、東海再処理施設においては、崩壊熱除去機能及び水素掃気機能の回復のための可搬型設備を配備しており、必要に応じて貯槽等に直接給水、圧縮空気を供給することが可能となるよう対策を実施しているとのことである。

七について

 お尋ねのような仮定の御質問にお答えすることは差し控えたい。

八について

 御指摘の「シビアアクシデントから国民を守るため」の対策等については、再処理事業者において、再処理施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則(平成二十五年原子力規制委員会規則第二十七号)に適合するように適切に講じられるべきものであると考えている。

九について

 報告書においては、東海再処理施設の廃止措置の全体計画として、管理区域解除までの約七十年間の工程の概要が示されている。
 また、東海再処理施設が、我が国初の使用済燃料の再処理施設であり、再処理技術の開発やそれを通じた人材育成等の再処理技術の国内定着に先導的役割を果たしてきたことを踏まえれば、「経済的合理性がない」との御指摘は当たらない。