質問主意書

第193回国会(常会)

答弁書


答弁書第一一三号

内閣参質一九三第一一三号
  平成二十九年五月二十六日

内閣総理大臣臨時代理           
国務大臣 麻生 太郎   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員牧山ひろえ君提出我が国の非自発的入院に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員牧山ひろえ君提出我が国の非自発的入院に関する質問に対する答弁書

一及び二について

 多くの精神障害者が精神障害者本人の意思に基づかない入院の対象となっていること等に関する国連の自由権規約委員会や拷問禁止委員会からの御指摘については、真摯に受け止めている。
 政府としては、精神科病院(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号。以下「法」という。)第十九条の五に規定する精神科病院をいう。以下同じ。)への入院は、原則として精神障害者本人の同意に基づいて行われるべきものと考えている。一方で、平成二十八年一月に厚生労働省において参集を求めたこれからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会の報告書において示されているように、病気の自覚を持てない場合があり、また、症状の悪化により判断能力そのものが低下するという精神疾患の特性を踏まえれば、自傷他害のおそれがある場合以外にも、精神障害者が入院治療につながる機会を確保することは必要である。
 このような観点から、現在、国会に提出している精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案(以下「改正法案」という。)による改正後の法(以下「新法」という。)第二十九条第三項等においては、入院中の精神障害者の権利の擁護や適正な手続の確保のため、都道府県知事等や精神科病院の管理者が法第二十九条第一項等の規定による入院措置を採る場合に、当該都道府県知事等や精神科病院の管理者が精神障害者に対し書面で知らせなければならない事項に、当該入院措置を採る理由を追加することとしている。
 また、精神保健指定医(以下「指定医」という。)の質を担保するため、新法第十九条第二項において、法第十九条第一項に規定する研修を受けなかったときのほか、新たに厚生労働省令で定める業務に従事しなかったときも原則として指定医の指定が失効することとしている。
 さらに、改正法案においては、法第二十九条第一項又は第二十九条の二第一項の規定による入院をした者(以下「措置入院者等」という。)が社会復帰の促進等のために必要な医療等の支援を確実に受けられるよう、退院後の医療等の援助を強化するとともに、精神障害者の支援を行う地域関係者の連携を強化しており、これが、退院後の措置入院者等の病状の安定に寄与し、精神障害者本人の意思に基づかない入院の減少に資するものと考えている。
 改正法案により精神障害者本人の意思に基づかない入院が減少するかどうかについてあらかじめ予測することは困難であるが、改正の趣旨に沿った適切な運用が行われるよう、施行に当たっては、改正に伴い必要となる手続等を整理し、地方公共団体に周知徹底してまいりたい。

三について

 御指摘の法第二十九条第一項の規定による入院(以下「措置入院」という。)に係る「患者の延べ人数」が、仮に、新規に措置入院をした者の数を意味するものであるとすれば、その増加の原因は明らかではない。なお、精神障害者の病状が措置入院に至るまでのものとならないよう、精神障害者に対して適切な入院治療及び精神科病院からの退院後の医療等の援助が提供される体制を整備することが重要であると考えているところ、一及び二についてで述べたとおり、改正法案は、措置入院者等の退院後の病状の安定に寄与するものと考えている。
 各年度の六月三十日時点で比較すると、平成二十六年度の御指摘の「医療保護入院患者数」は平成二十五年度より減少している。一方、同年度前における、御指摘の「任意入院患者数は減少しているにもかかわらず、医療保護入院患者数は増加している理由」については、一般論としては、在院中の「任意入院患者数」の減少には入院中の精神障害者の地域移行の推進による影響が考えられ、在院中の「医療保護入院患者数」の増加には高齢化に伴う認知症の患者の増加の影響が考えられる。