質問主意書

第193回国会(常会)

質問主意書


質問第一六二号

鉄道駅におけるホームドア等の整備促進に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十九年六月十六日

牧山 ひろえ   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   鉄道駅におけるホームドア等の整備促進に関する質問主意書

 近年、鉄道駅のホーム(以下「駅ホーム」という。)からの転落事故、ホーム上での列車との接触事故が多発しており、転落事故及び接触事故の防止効果の高いホームドアや可動式ホーム柵(以下「ホームドア等」という。)の整備の必要性が高まっているものの、ホームドア等の整備にはコスト面、技術面等での課題が存在し、実効ある対策が行われているとは言い難い状況にある。
 昨年八月十五日の東京メトロ銀座線青山一丁目駅における転落死亡事故を始め、本年に至るまでに視覚障害のある方が駅ホームから転落し、死亡するという大変痛ましい事故が相次いで発生している。これらの事故は、その発生場所にホームドア等が設置されていれば、防げていたはずのものとも言え、ホームドア等の整備に向けた取組を強化していく必要性が改めて強く認識された。
 視覚障害者団体は、ホームドア等が設置されていない駅ホームが「欄干のない橋を歩くようなもの」であると恐れ、安全、安心な移動の確保のため、ホームドア等の設置等による対策を強く切望している。また、駅ホームからの転落事故の年間発生件数は、近年三千件以上で推移しており、駅ホームでの安全確保は、視覚障害者にとどまらず国民全体にとっても大変重要な課題である。
 青山一丁目駅における転落死亡事故発生を踏まえ、国土交通省は、主要鉄道事業者の担当者等による「駅ホームにおける安全性向上のための検討会」(以下「安全性向上検討会」という。)を開催し、昨年八月の第一回検討会では、同種事故の再発防止のため、ホームドア等の整備促進を含め、駅ホームにおける安全性向上について検討していくことを確認した。また、鉄道事業者においてもホームドア等整備計画の前倒し等の取組がなされている。このように、ホームドア等の整備促進に向けた社会的な気運が高まっているとの認識の下、以下のとおり質問する。

一 利用者十万人以上の駅のうち、整備条件を満たしている駅について

 政府は、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成十八年法律第九十一号)第三条の規定に基づく「移動等円滑化の促進に関する基本方針」で、移動等円滑化の目標に関して、「一日当たりの平均的な利用者数が三千人以上である鉄道駅及び軌道停留場(中略)については、平成三十二年度までに、原則として全てについて、(中略)ホームドア、可動式ホーム柵、点状ブロックその他の視覚障害者の転落を防止するための設備の整備(中略)等の移動等円滑化を実施する」とされている。ホームドア等については、「視覚障害者の転落を防止するための設備として非常に効果が高く、その整備を進めていくことが重要」とされたものの、「車両扉の統一等の技術的困難さ、停車時分の増大等のサービス低下、膨大な投資費用等の課題について総合的に勘案した上で、優先的に整備すべき駅を検討」することとされ、具体的な整備目標の設定は見送られた。
 平成二十三年八月の「ホームにおける旅客の転落防止対策の進め方について(ホームドアの整備促進等に関する検討会「中間とりまとめ」)」において、ホームドア等を含む転落防止対策を優先して実施することが望ましいと考えられる駅を、「①視覚障害者団体からの整備の要望が高い駅」、「②駅の利用者数が多い駅」とし、②については「特に一駅当たりの事故発生件数が多い利用者数十万人以上の駅は、優先して速やかに実効性の高い転落防止対策を実施することが望まれる」と優先すべき駅にも具体的に言及した。
 また、安全性向上検討会の「中間とりまとめ」において、「ハード面については、引き続き、ホームドア(中略)の整備を中心に転落防止対策を講じ、その整備の加速化を図る」こととされた。利用者十万人以上の駅におけるホームドアの整備状況については、平成二十七年三月末現在で二百六十駅中八十二駅(約三十二パーセント)であり、「更なる取組が必要な状況となっている」とされ、「引き続き、十万人以上の駅を優先してホームドアの整備を進めていくこと」とされた。その上で、十万人以上の駅のうち、「車両の扉位置が一定している、ホーム幅を確保できる等の整備条件を満たしている」駅については、ホームドアを「原則として平成三十二年度までに整備する」こととされた。
 当該整備条件を満たしている駅は幾つあり、その駅のうち、鉄道事業者が整備計画を具体的に明らかにしている駅は幾つあるか、明示されたい。

二 利用者十万人以上の駅のうち、整備条件を満たしていない駅について

 安全性向上検討会の「中間とりまとめ」において、ホームドアの整備について、「整備条件を満たしていない駅についても、満たすための方策の検討を行い、(中略)整備の促進を図っていく」こととされ、「(ⅰ).新しいタイプのホームドアにより対応する場合」、「(ⅱ).車両更新により対応する場合」、(ⅲ).「ホームドアの整備ができない場合」に場合分けされているが、現在把握し得る限りにおいて、(ⅰ)又は(ⅱ)に該当する駅はそれぞれ幾つあるのか、明示されたい。

三 利用者十万人未満の駅について

 安全性向上検討会の「中間とりまとめ」においては、ホームドアの整備について、利用者が「十万人未満の駅については、転落事故の発生状況、視覚障害のある人の利用状況や整備要望、ホームの混雑状況等を勘案した上で、優先的な整備の必要性を検討する。すでに整備中の駅や整備計画のある駅については、工程を精査し、一日でも早い完成を目指す」こととされている。ホームドア等について、現在整備中の駅又は整備計画のある駅はそれぞれ幾つあるのか、明示されたい。また、政府として、優先的な整備の必要性があると認めている駅は幾つあるのか、併せて明示されたい。

四 ホームドア等整備促進に向けた支援措置について

 ホームドア等整備促進の課題の一つに、約数億から十数億とされる莫大な整備コストの問題がある。ホームドア等整備促進のため、鉄道事業者の取組に対して財政支援を講じることは大変有意義であると考える。鉄道事業者のホームドア等整備に係る事業に対する政府の財政支援には、現在どのようなものがあるのか、直近の三年度につき、各事業に対する支援のための予算額を明示されたい。併せて、これらの財政支援が講じられた事業が幾つあるのか、同様に直近の三年度につき、具体的に明示されたい。
 また、ホームドア等の整備促進のためには、国費による財政支援を拡大すべきと考えるが、それについて政府の見解を伺う。

五 ホームドア等技術開発による整備促進の加速化について

 ホームドア等の設置には、車両扉位置の相違や多額の整備費用等の課題があり、これらの課題を解決するため、新型ホームドア等の技術開発が、実際の駅における現地試験等により実施されてきた。その過程において蓄積された知見等が「新型ホームドア導入検討の手引き~各種開発事例より~」(以下「手引き」という。)という形で取りまとめられ、発表された。手引きは、ホームドア等整備の制約要因となっている技術面、コスト面の課題克服に資するものであり、今後のホームドア等の整備加速化が期待される。各駅での実際の整備の状況により異なるとは承知するが、手引きに記載されている新型ホームドア等の八つのタイプは、「従来型ホームドア」の標準的なタイプと比べてそれぞれどの程度の軽量化、低廉化が図られると想定されているのか、具体的に示されたい。

六 今後のホームドア等整備状況の公表の在り方について

 今回の安全性向上検討会の「中間とりまとめ」において、ホームドア等整備促進について取組が強化されたことは一定の評価をするが、ホームドア等の整備目標の設定については必ずしも明確ではない。ホームドア等の整備状況や整備計画策定の進捗を公表することによって、鉄道事業者の取組を促していくことも重要である。今回の安全性向上検討会の「中間とりまとめ」を踏まえ、今後の整備目標の具体化や、整備状況を公表する予定の有無及び公表時期について、その内容及び現在の見通しを具体的に示されたい。

  右質問する。