質問主意書

第193回国会(常会)

質問主意書


質問第一六〇号

国家戦略特別区域農業支援外国人受入事業に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十九年六月十六日

田村 智子   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   国家戦略特別区域農業支援外国人受入事業に関する質問主意書

 現在、本院で審議中の国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律案(以下「改正法案」という。)によって政府が導入しようとする国家戦略特別区域農業支援外国人受入事業(以下「受入事業」という。)について、農業支援活動に従事する外国人労働者の人権の保障に関して疑義があるので質問する。

一 政府の説明では、受入事業は、国家戦略特別区域内において、農業生産、出荷・調製、加工等の農業支援活動を行う外国人を、特定機関が雇用契約に基づき受け入れる事業とされている。このように、特定機関との雇用契約に基づいて、国家戦略特別区域内に限って行う農業支援活動を特定農業支援活動(改正法案による改正後の国家戦略特別区域法第十六条の五第一項に定める特定農業支援活動をいう。以下同じ。)と呼び、本邦に上陸しようとする外国人から、特定農業支援活動を行うものとして、在留資格認定証明書の交付の申請があった場合には、当該特定農業支援活動を「本邦において行うことができる活動」として法務大臣があらかじめ告示をもって定めるものに該当するものとみなして在留資格、特定活動の在留資格認定証明書を交付することができるとされている。この在留資格によって「本邦においてできる活動」として認められる活動は、外国人労働者が特定機関との労働者派遣契約によって派遣されて行う農業支援活動に限定されるのか、それとも労働者派遣契約によって派遣されずに行った農業支援活動まで含まれるのか。

二 政府の説明では、適正受入管理協議会に外国人労働者からの苦情・相談を受ける窓口設置を義務付けるとしているが、当該外国人労働者からの苦情・相談は、勤務終了後や休日に多くなることが見込まれる。当該窓口設置は、平日の日中だけでなく、勤務終了後や休日の相談にも対応できるようにし、毎日、苦情・相談を受け付けることができる体制とすべきと考えるが、政府の見解はいかがか。

三 政府の説明では、受入事業において日本語能力が一定以上の外国人労働者を受け入れるとしているが、苦情・相談の対応においてはスムーズな意思疎通のためにも当該外国人労働者の母国語での対応が求められる。苦情・相談窓口は、適正受入管理協議会に参加する特定機関で受け入れているすべての外国人労働者の母国語に対応できるように義務付けるべきと考えるが、政府の見解はいかがか。

四 外国人労働者の派遣先への移動に要する交通費、派遣先が遠方で滞在が必要な場合の宿泊費は、特定機関が負担すべきと考えるが、政府の見解はいかがか。

五 政府の説明では、特定機関に外国人労働者に対する必要な研修の実施を義務付けるとしている。この研修は、特定機関の指揮命令下で行われるものであり、外国人労働者に賃金が支払われるべき労働に当たると思うが、政府の見解はいかがか。また、当該賃金の支払いにおいては、雇用契約で特定農業支援活動に従事するときに支払われるとされている額が支払われるべきと考えるが、政府の見解はいかがか。さらに、研修期間中の外国人労働者の賃金の水準についてどのような担保措置を講じるつもりか。

六 特定機関で行われる研修は、農業支援活動に関するものとなることが想定されるが、研修と称して特定機関自らの事業に従事させるなど規制の潜脱が横行することが懸念される。このようなことはあってはならないと思うが、政府の見解はいかがか。政府として、このような規制の潜脱が行われないように、どのような措置を講ずるつもりか。

七 外国人労働者の派遣先も研修先もない場合、当該外国人労働者は休業することになるが、この場合、外国人労働者への賃金の支払いをどのように保証するのか。雇用契約において特定農業支援活動に従事するときに支払われるとされている額が支払われるべきと考えるが、政府の見解はいかがか。

八 外国人労働者は通算三年、特定農業支援活動に従事できるとされている。通算三年間従事し、出国した外国人が、再度、特定農業支援活動を行うものとして、在留資格認定証明書の交付の申請を行った場合、特定農業支援活動を行うことを目的として、再度在留資格を取得することは可能か。また、通算三年を経過する前に特定農業支援活動を行うことを目的として、在留資格を更新することは可能か。

九 特定農業支援活動に従事できるのは通算三年とされている。雇用契約期間が三十日以下の雇用契約をもとにする労働者派遣契約は禁止されていることから、外国人労働者との雇用契約は、最短で三十一日になると理解しているが、最短の雇用契約期間を定めるつもりがあるのか。

十 政府の説明では、外国人労働者が、農閑期など外国人労働者の派遣先がない時期などには帰国し、農繁期などに再入国することを可能とすることとしている。外国人労働者が帰国している期間においては、当該外国人労働者と特定機関との雇用契約の締結は義務付けられているのか。

十一 政府の説明では、国家戦略特別区域家事支援外国人受入事業を参考に、外国人労働者に責がなく、雇用の継続が不可能となった場合に、当該外国人労働者が継続して受入事業による在留を希望するときは、新たな特定機関を確保するように努める旨を指針に定めることとしているが、この努力義務を負うのはだれか。特定機関や関係自治体、地方農政局、地方入国管理局、都道府県労働局、内閣府地方創生事務局などの関係行政機関すべてにこの努力義務を課すべきではないか。

十二 前記十一に関して、外国人労働者に責がなく、雇用の継続が不可能となった場合の中には、短期間の雇用契約の終了による雇止めも含めるべきと考えるが、政府の見解はいかがか。

十三 受入事業は、農閑期に外国人労働者が帰国をすることが当然のように想定され、農繁期に農業経営体の人手不足を解消するために外国人労働者を受け入れる事業である。国境を越えた出稼ぎを可能とする仕組みと言われても仕方ないのではないか。

  右質問する。