質問主意書

第193回国会(常会)

質問主意書


質問第一五四号

国家戦略特区による獣医学部新設に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十九年六月十五日

古賀 之士   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   国家戦略特区による獣医学部新設に関する質問主意書

 平成二十八年十一月九日、国家戦略特別区域諮問会議は、「国家戦略特区における追加の規制改革事項について」(以下「事項」という。)を決定した。その内容は、獣医学部の新設を可能とするための関係制度の改正他一件である。その後、平成二十八年十二月二十二日、内閣府特命担当大臣(地方創生、規制改革)、文部科学大臣及び農林水産大臣の連名により、「国家戦略特区における獣医学部の設置について」(以下「通知」という。)が発出され、また平成二十九年一月四日、内閣府・文部科学省告示第一号(文部科学省関係国家戦略特別区域法第二十六条に規定する政令等規制事業に係る告示の特例に関する措置を定める件の一部を改正する件。以下「告示」という。)が発出された。しかし、事項、通知及び告示の関連について疑義があるので、以下質問する。

一 事項及び通知では獣医学部の開設年度について言及されていない一方、告示では「平成三十年度に開設する獣医師の養成に係る大学の設置」とあり、「平成三十年度」と開設年度が特定されている。告示において開設年度を特定した理由とその検討経緯を示されたい。

二 前記一に関連し、告示では「当該認定の日以後は、当該大学の設置に係る同項の認可の申請の審査に関しては、大学、大学院、短期大学及び高等専門学校の設置等に係る認可の基準第一条第四号の規定は、適用しない」とあるが、今回の国家戦略特区によって新設の申請が認められた獣医学部が、平成三十年度に開設が出来なかった場合、事項、通知又は告示のいずれかが失効することになるか、政府の見解を示されたい。

三 事項では、獣医学部の新設を可能とする校数について言及されていない一方、通知では、「獣医学部を設置するとしても、一校に限る」とされた。通知において、「一校に限る」と校数を限定した検討経緯を示されたい。

四 獣医学部の新設について、獣医事審議会の総会、計画部会、民間・計画分野ワーキンググループ、公務員ワーキンググループ及び産業動物分野ワーキンググループにおける検討経緯を示されたい。獣医学部の新設について、前記の獣医事審議会のいずれの場でも検討されていない場合、獣医療法第十条に照らし問題があるという意見があるが、政府の見解を示されたい。

五 大学基準協会の「獣医学教育に関する基準」では、「入学定員は六十~八十人程度を標準とし、百二十人を越えないことが望ましい」とある。今回新設される獣医学科の定員は百六十人を予定しており、この基準を大幅に超過しているが、このことに問題はないか、政府の見解を示されたい。

六 「獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議「議論のまとめ」」(以下「まとめ」という。)では、ライフサイエンス分野への対応について、獣医師免許を必要としない研究者・大学教員をはじめとする研究職を前提としている。一方、今回の獣医学部の新設にあたっては、ライフサイエンス分野への対応が期待されている。まとめで示された考えからすると、今回新設される獣医学科の定員百六十人について、全員が獣医師免許の取得を前提としているわけではないという意見があるが、これに対する政府の見解を示されたい。

七 前記六に関連し、「「日本再興戦略」改訂二〇一五」(以下「改訂」という。)では、「ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要」と記述されており、また、事項及び通知では、「先端ライフサイエンス研究の推進」は「獣医師が新たに取り組むべき分野」とされているなど、獣医師免許の取得を前提とした記述となっている。まとめの考えが、改訂、事項及び通知に反映されていないとの意見があるが、これに対する政府の見解を示されたい。

  右質問する。