質問主意書

第193回国会(常会)

質問主意書


質問第一三八号

幼稚園児に教育勅語を朗唱させる教育及びその教育を行う学校法人への国有地譲渡が適切であるかに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十九年六月十四日

山本 太郎   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   幼稚園児に教育勅語を朗唱させる教育及びその教育を行う学校法人への国有地譲渡が適切であるかに関する質問主意書

 産経新聞のウェブサイト「産経WEST」に平成二十七年一月八日に掲載された「安倍首相夫人・アッキーも感涙…園児に教育勅語教える「愛国」幼稚園 「卒園後、子供たちが潰される」と小学校も運営へ」との学校法人森友学園が運営している塚本幼稚園幼児教育学園(以下「塚本幼稚園」という。)に関する記事(以下「当該産経記事」という。)には、「「子供に学んでほしいことは何か、とつきつめたとき、その答えが明治天皇が国民に語りかけられた教育勅語にあったからです」と籠池泰典園長(中略)の答えは明快だ。あどけない幼児が大きく口をあけ、難しい言葉を朗唱する姿を初めて見た人は一様に驚き、感動する。安倍首相の昭恵夫人もそのひとりだ。昭恵夫人は昨年四月、同園の視察と教職員研修のため訪れたとき、鼓笛隊の規律正しいふるまいに感動の声を上げた。」との記載があり、また、阪神淡路大震災に関する籠池園長の談として「「あのときの日本人の行動には、人としての矜持があった。この矜持を育むことこそ教育。それから当園の教育の根幹を十二の徳目に置き、「教育勅語」や「五箇条の御誓文」の朗唱を始めたんです」との言葉を紹介し、さらに「十二の徳目とは、親や先祖を大切に、兄弟姉妹は仲良く、夫婦はいつも仲睦まじく、友達はお互いに信じ合い、自分の言動をつつしみ、広くすべての人に愛の手を差しのべ、勉学に励み職業を身につけ、知識を高め才能を伸ばし、人格の向上につとめ、広く世の人々や社会のためにつくし、規則に従い社会の秩序を守り、正しい勇気を持って世のため国のためにつくす――その基となっているのが「教育勅語」なのだという。」との説明が記載されている。
 当該産経記事に加えて、私が提出した「森友学園への国有地譲渡と憲法第八十九条に関する質問主意書」(第百九十三回国会質問第一〇六号。以下「前回質問主意書」という。)に対する答弁書(内閣参質一九三第一〇六号。以下「前回答弁書」という。)、逢坂誠二衆議院議員提出の「教育基本法の理念と教育勅語の整合性に関する質問主意書」(第百九十三回国会質問第九三号。以下「逢坂議員の質問主意書」という。)及び逢坂議員の質問主意書に対する答弁書(内閣衆質一九三第九三号。以下「逢坂議員への答弁書」という。)ならびに宮崎岳志衆議院議員提出の「「教育ニ関スル勅語」の教育現場における使用に関する質問主意書」(第百九十三回国会質問第二〇六号。以下「宮崎議員の質問主意書」という。)及び宮崎議員の質問主意書に対する答弁書(内閣衆質一九三第二〇六号。以下「宮崎議員への答弁書」という。)を踏まえて、幼稚園児に教育勅語を朗唱させる教育及びその教育を行っていた学校法人森友学園に対して、政府が大阪府豊中市の国有地(以下「当該国有地」という。)を譲渡したことについて、安倍内閣の認識を確認すべく、以下質問する。

一 政府として当該産経記事の内容を把握しているか、明確に示されたい。

二 当該産経記事には、塚本幼稚園において園児による教育勅語の朗唱が行われていたこと(以下「当該朗唱」という。)及び籠池園長の「教育の根幹を十二の徳目に置き、「教育勅語」や「五箇条の御誓文」の朗唱を始めた」との言葉が記載されている。政府として、当該朗唱及び塚本幼稚園において教育の根幹として教育勅語を用いていたことを把握しているか、明確に示されたい。また、これらの事実を把握しているのであれば、これらの事実を把握したのはいつか、その日時を具体的かつ明確に示されたい。

三 当該産経記事によれば、昭恵夫人は「籠池園長から「安倍首相ってどんな人ですか?」と問いかけられた園児らが「日本を守ってくれる人」と答える姿を見て、涙を浮かべ、言葉を詰まらせながら」、「ありがとう。(安倍首相に)ちゃんと伝えます」と話したという。安倍首相は昭恵夫人から、昭恵夫人が平成二十六年四月に塚本幼稚園へ「視察と教職員研修のため訪れたとき」の話を聞いたのか、明確に示されたい。加えて、安倍首相が昭恵夫人からこの話を聞いていたのであれば、当該朗唱を安倍首相は昭恵夫人から聞いて知っていたとの理解でよいか、明確に示されたい。

四 前記三に関して、平成二十九年二月十七日の衆議院予算委員会において安倍首相は「妻から森友学園の先生の教育に対する熱意はすばらしいという話を聞いております」と答弁したが、この答弁の時点において、安倍首相は当該朗唱を知っていたのか、明確に示されたい。

五 逢坂議員の質問主意書の五の「教育勅語を学校教育法上の幼稚園で教材として繰り返し暗唱させ、さらには外来の見学者などにもその様子を見せることは、学校教育法第二十二条でいう「幼稚園は、義務教育及びその後の教育の基礎を培うものとして、幼児を保育し、幼児の健やかな成長のために適当な環境を与えて、その心身の発達を助長することを目的とする」ことに反するのではないか。」との質問に対して、逢坂議員への答弁書の四から九までについてで「お尋ねのような行為が教育基本法(中略)や学校教育法(中略)に違反するか否かについては、個別具体的な状況に即して判断されるべきものであり、一概にお答えすることは困難である。その上で、一般論として、仮に、同法第一条の「幼稚園」又は「小学校」(以下これらを合わせて「学校」という。)において不適切な教育が行われている場合は、まずは、当該学校の設置者である市町村又は学校法人等において、必要に応じ、当該学校に対して適切な対応をとり、都道府県においても、必要に応じ、当該学校又は当該学校の設置者である市町村若しくは学校法人等に対して適切な対応をとることになる。また、文部科学省においては、必要に応じ、当該学校の設置者である市町村又は当該都道府県に対して適切な対応をとることになる。」との答弁があった。この答弁を踏まえて以下質問する。

1 当該朗唱は、まさに「個別具体的な状況」であると言えるが、この「個別具体的な状況に即して判断」した場合、当該朗唱は教育基本法や学校教育法に違反する教育であるか否か、政府の認識を明確に示されたい。
2 学校法人森友学園は、当該朗唱を適切な教育であると認識していたものと考えられる。そのため、これが不適切な教育であるか否かを判断し、不適切な教育であると判断した場合に「適切な対応をとることになる」主体は、学校法人森友学園が存在する大阪市あるいは大阪府、さらに文部科学省になると考えるが、文部科学省として大阪市あるいは大阪府に対して、当該朗唱に関して、現在までに何らかの「適切な対応」をとった事実があれば、当該対応につき具体的内容を明確に示されたい。いかなる「対応」もとった事実がない場合は、それは文部科学省として当該朗唱を把握していなかったためか、あるいは、当該朗唱は、教育基本法や学校教育法に違反する教育に該当しないとの認識であったためか、そのいずれであるのかを明確に示されたい。

六 宮崎議員の質問主意書の一の「「教育ニ関スル勅語」を実際の教育の中で用いる際、憲法や教育基本法などに反するか否かを判断する基準は何か。」及び二の「「教育ニ関スル勅語」を幼稚園において毎日、唱和するのは問題ないと考えるか。」との質問に対して、宮崎議員への答弁書の一及び二についてで「教育に関する勅語を教育において用いることが憲法や教育基本法(中略)等に違反するか否かについては、まずは、学校の設置者や所轄庁において、教育を受ける者の心身の発達等の個別具体的な状況に即して、国民主権等の憲法の基本理念や教育基本法の定める教育の目的等に反しないような適切な配慮がなされているか等の様々な事情を総合的に考慮して判断されるべきものであるが、教育に関する勅語を、これが教育における唯一の根本として位置付けられていた戦前の教育において用いられていたような形で、教育に用いることは不適切であると考えている。」との答弁があった。この答弁を踏まえて以下質問する。

1 一般的に、幼稚園児はその心身の発達等を考慮した場合、教育勅語の内容及び教育勅語において用いられている語句の意味をすべて理解できると政府は認識しているか、明確に示されたい。
2 前記1を踏まえて、「学校の設置者や所轄庁」が「教育を受ける者の心身の発達等の個別具体的な状況に即して、国民主権等の憲法の基本理念や教育基本法の定める教育の目的等に反しないような適切な配慮がなされているか等の様々な事情を総合的に考慮」した結果、当該朗唱は、「憲法や教育基本法(中略)等に違反」しないと判断したものであり、その判断は正しかったと政府は認識しているのか、理由とともに明確に示されたい。

七 平成二十九年三月八日の参議院予算委員会で稲田朋美防衛大臣は、「「ウイル」二〇〇六年十月号、二百二十八ページの下段」に掲載された対談記事における自らの意見を読み上げるよう福島みずほ議員にうながされ、「教育勅語の素読をしている幼稚園が大阪にあるのですが、そこを取材した新聞が文科省に問合せをしたら、教育勅語を幼稚園で教えるのは適当でないとコメントしたそうなんです。そこで文科省の方に、教育勅語のどこがいけないのかと聞きました。すると、教育勅語が適当でないのではなくて、幼稚園児に丸覚えさせる教育方法自体が適当ではないという趣旨だったと逃げたのです。しかし新聞の読者は、文科省が教育勅語の内容自体に反対していると理解します。今、国会で教育基本法を改正し、占領政策で失われてきた日本の道徳や価値観を取り戻そうとしている時期に、このような誤ったメッセージが国民に伝えられることは非常に問題だと思います。」と記事を読み上げる形で答弁し、この「教育勅語の素読をしている幼稚園」は「塚本幼稚園のことだと推測いたします。」との答弁を行った。この答弁を踏まえて以下質問する。

1 「教育勅語の素読をしている幼稚園が大阪にあるのですが、そこを取材した新聞が文科省に問合せをしたら、教育勅語を幼稚園で教えるのは適当でないとコメントしたそうなんです。」との部分は、平成十八年七月二日の東京新聞の記事(以下「当該東京新聞記事」という。)を指しているものと考えるが、当該東京新聞記事には「園側は「幼児期から愛国心、公共心、道徳心をはぐくむためにも教育勅語の精神が必要と確信している」と説明しているが、文部科学省幼児教育課は「教育勅語を教えるのは適当ではない。教育要領でも園児に勅語を暗唱させることは想定していない」としている。」とある。当該東京新聞記事における文部科学省幼児教育課のコメントは事実か、明確に示されたい。加えて当時文部科学省として、当該朗唱に関する東京新聞からの「問合せ」に対して、いかなる返答を行ったのか、その内容についてすべて具体的かつ詳細に示されたい。
2 稲田防衛大臣は「そこで文科省の方に、教育勅語のどこがいけないのかと聞きました。すると、教育勅語が適当でないのではなくて、幼稚園児に丸覚えさせる教育方法自体が適当ではないという趣旨だったと逃げたのです。」と述べているが、当時文部科学省は、当該東京新聞記事における文部科学省幼児教育課のコメントに関する稲田朋美氏からの質問に、どのように返答したのか、その内容についてすべて具体的かつ詳細に示されたい。
3 「教育に関する勅語を教育において用いること」に関する文部科学省としての認識は、東京新聞から「問合せ」を受けた平成十八年当時と、現在とで異なる部分はあるのか、明確に示されたい。両者の認識に異なる部分がある場合は、両者の認識を並記した上で、いかなる差異があるのかを具体的かつ明確に示し、加えて、認識を変更した理由も明確に示されたい。

八 前回答弁書で「学校法人森友学園は(中略)憲法第八十九条における「宗教上の組織若しくは団体」には当たらないと考える。」との答弁を得たが、前回質問主意書の四及び五の「森友学園への当該国有地の賃貸ならびに譲渡が憲法第八十九条に反しないとの認識」に関する問いに対して、政府としてその認識の有無について明確な答弁がなされなかった。
 学校法人森友学園が運営する塚本幼稚園においては「教育の根幹を十二の徳目に置き、「教育勅語」や「五箇条の御誓文」」を園児に朗唱させる教育(以下「当該教育」という。)が行われていたが、これは宮崎議員への答弁書を踏まえれば、「教育に関する勅語を、これが教育における唯一の根本として位置付けられていた戦前の教育において用いられていたような形で、教育に用いること」に該当し、「政府として「不適切であると考え」る教育勅語の用い方をする当該教育は、不適切な教育に該当すると解されるが、安倍内閣の認識を示されたい。
 当該教育が、安倍内閣が「不適切」であると考える教育に該当する場合、当該教育を行ってきた学校法人森友学園は、日本国憲法第八十九条が「公金その他の公の財産」を「支出し、又はその利用に供してはならない。」としている「公の支配に属しない」教育の事業を行ってきた学校法人であり、当該国有地の譲渡は不適切であると解されるが、安倍内閣の認識を示されたい。
 以上を踏まえて、学校法人「森友学園への当該国有地の賃貸ならびに譲渡が憲法第八十九条に反」するか否か、政府の認識をその具体的理由とともに改めて明確に示されたい。また、当該教育が安倍内閣として「不適切」であると考える教育に該当しないとする場合、その理由を過去の政府見解といかなる齟齬をも生じさせることなく、具体的かつ明確に示されたい。

九 前記一から八までを踏まえて、政府として学校法人森友学園に当該国有地を譲渡することを決定した当時の判断は適切であったか、現在の安倍内閣としての認識を明確に示されたい。

  右質問する。