質問主意書

第193回国会(常会)

質問主意書


質問第一二七号

平成二十九年五月十七日に開催された一般社団法人日本保険薬局協会総会における鈴木康裕保険局長の講演に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十九年六月八日

川田 龍平   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   平成二十九年五月十七日に開催された一般社団法人日本保険薬局協会総会における鈴木康裕保険局長の講演に関する質問主意書

 厚生労働省の鈴木康裕保険局長は、平成二十九年五月十七日に開催された一般社団法人日本保険薬局協会総会に出席し、その講演において、薬剤師がひとりで経営している薬局をして、「パパママ薬局」と評し、小規模薬局の経営効率が悪いと断じ、効率的な経営の具体的な方法として「フランチャイズ化」を推奨したと聞く。また、小規模経営をして経営効率の低さが問題であるとし、特に、小規模ゆえの価格交渉力の弱さを引き合いに出し、医薬品等の購入に際して価格交渉力をもつことで収益性をあげることを求めたとも聞くところであり、医薬品の売買において薬価差を追求することを是認するかのような発言であり、厚生労働省がこれまで薬価差の是正を求めてきたことと矛盾する。
 併せて、鈴木康裕保険局長の講演では、小規模薬局の収益構造が大規模店に比して脆弱であることを指摘し、電子お薬手帳導入などICT設備投資が経営的負担になるとの見解を述べたと聞く。これが意味するのは、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)上は、薬局の申請認可は、個別店舗ごとの審査であり、複数の薬局を同時に経営することについて何ら特別な規制や留意事項を規定していないにも関わらず、政府の施策としては、複数店舗を経営する薬局を志向していることになるのかと疑問を呈するところである。というのも、ここ数年の薬業界に鑑みるに、無資格調剤、偽造医薬品流通、組織的関与が疑われる付替請求などの事件に関与しているのは、複数店舗を同時に経営する大規模店舗であった。だが、こうした大規模な経営が行われる薬局において薬剤師の関与が軽視され不正事件が多発する実態に着目し、たとえば、管理薬剤師の職責と権能の拡大や薬剤師の経営参加などの措置を講じるなど、経営規模の大きさに応じた適切な規制手段などの検討をしていない現状にあって、小規模経営をあたら誹謗するかのような講演が行われたことは、政府としていささか無責任ではないかと感ずるところである。
 また、電子お薬手帳導入など新たな設備投資が薬局に必要というのであれば、法律の規定する標準的な薬局の経営規模に応じた投資で済む範囲で導入できる仕組みを策定するのが本筋であり、過大な設備投資となることが予想されるような設備投資を要求することは、行政行為の結果について無責任に過ぎる裁量行政であり、行政責任の放棄と断定せざるを得ない。参考のために問うが、電子お薬手帳導入などの設備投資について、政府は、標準的な薬局において、どの程度の設備投資を想定しているのか明らかにされたい。
 併せて、政府の見解を問うが、これからの薬局経営にあっては、薬価差遡求をし、薬価差益によって利益をあげることが求められ、同時に、過大な設備投資にも耐えられる収益構造を準備することが必要というのが政府の方針なのか明らかにされたい。

  右質問する。