質問主意書

第193回国会(常会)

質問主意書


質問第一二〇号

テロ等準備罪に係る実行準備行為と行政書士業務に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十九年六月五日

牧山 ひろえ   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   テロ等準備罪に係る実行準備行為と行政書士業務に関する質問主意書

 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案(第百九十三回国会閣法第六四号)により改正される組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(以下「改正組織的犯罪処罰法」という。)に新設される第六条の二のテロ等準備罪の処罰対象は、改正組織的犯罪処罰法別表第四に掲げる罪のうち一定のものに当たる行為で、「組織的犯罪集団」の「団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるもの」又は「組織的犯罪集団に不正権益を得させ、又は(中略)組織的犯罪集団の不正権益を維持し、若しくは拡大する目的で行われるもの」の遂行を「二人以上で計画」し、「その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われた」と認められる場合である。故意により、このような二人以上で計画した犯罪を実行するための準備行為(実行準備行為)をした者であるとの具体的嫌疑がある場合でなければ、テロ等準備罪について捜査の対象となることはないと理解するところである。
 出入国管理及び難民認定法(入管法)第七十四条の集団密航助長罪(集団密航者を不法入国させる行為等)に関する個別具体的事案(嫌疑)に則して、行政書士の業務とテロ等準備罪における実行準備行為との関係について次の通り質問する。

一 行政書士が、日本語学校から依頼を受け、二名以上の当該日本語学校の入学内定者について、「留学」に係る在留資格認定証明書交付申請を入国管理局に行った場合において、後に、在留中の一切の経費の支弁能力を証する文書等に虚偽のものが含まれていることが発覚したとき、在留資格認定証明書の交付申請を入国管理局に提出した当該行政書士は、集団密航助長罪の実行準備行為の嫌疑があるとしてテロ等準備罪の捜査対象になる可能性があるか。

二 本邦にある会社が、雇用する外国人に従事させる予定の業務は一定程度の専門性があると考え、いわゆる単純労働ではないとして行政書士に相談し、当該会社と行政書士が、二名以上の当該会社の外国人内定者について、「技術」、「人文知識・国際業務」に係る在留資格認定証明書交付申請の準備行為をメール等で行った場合において、後に、入国管理局や捜査機関が、当該会社が雇用する外国人に従事させる予定の業務は、当該在留資格では就労資格がない、いわゆる単純労働であると認定したとき、当該行政書士は、テロ等準備罪の捜査の対象になると思われるがいかがか。

三 前記一や前記二の事案において、虚偽文書を提出したことや、当該在留資格では就労資格がない業務を外国人に行わせたことが当該行政書士の「故意による」のか否かは、当該行政書士を捜査しなければ判別できないと思われるがいかがか。

四 テロ等準備罪における「組織的犯罪集団」の定義が明確ではなく、行政書士に依頼した団体が「組織的犯罪集団」にあたるのか、行政書士が業務を受託するときに判別するのは困難であるため、「組織的犯罪集団」の定義を個別具体的に規定すべきであると思われるがいかがか。

五 テロ等準備罪における「計画をした犯罪を実行するための準備行為」の定義が曖昧であり、行政書士の在留資格認定証明書交付申請業務における何ら違法性のない行為(相談、書類作成等)が「計画をした犯罪を実行するための準備行為」と混同されるケースもありえると思われるがいかがか。

  右質問する。