質問主意書

第193回国会(常会)

質問主意書


質問第九二号

我が国の農業を支える生態系の保護に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十九年四月二十八日

小川 勝也   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   我が国の農業を支える生態系の保護に関する質問主意書

 農業を支える生態系はかねてから重要な位置付けがなされているが、近年、授粉を担う送粉者の保護の必要性が国際機関及び国内の研究によって指摘されており、送粉者の保護対策の重要度は増している。
 昨年十二月に開催された生物多様性条約第十三回締約国会議においては、「7.(j)国や地域レベルで殺虫剤によるリスク低減戦略を立案・実施すること及び総合的病害虫管理(IPM)などの手法を活用して送粉者に有害な殺虫剤の使用を回避又は削減すること(以下略)、(n)殺虫剤が他の要因との相乗効果により送粉者に及ぼす重大又は取り返しのつかない害を回避又は最小化すること」等を含む決定(CBD/COP/DEC/XIII/15)が採択されたところである。
 我が国でも、生態系の農業への貢献のうち、野生の送粉者が日本の農業生産にもたらす経済的利益が高いことは政府系研究機関により明らかにされており、送粉者の保護対策は急務である。
 ついては、以下質問する。

一 私が提出した質問主意書への答弁(内閣参質一九二第五四号)の二についてで、送粉者を守るための農薬の使用規制の強化に関して「農林水産省においては、都道府県や農薬製造者等と連携して、我が国における農薬による蜜蜂の被害の実態を把握するとともに、国内外の最新の知見の収集等を行っており、これらに基づき、農薬の使用規制を含めた必要な措置を検討していく方針である」としている。

1 農林水産省は既に、飼育されているミツバチの被害を防ぐ対策として、農薬使用者に農薬の注意事項を守って使用するよう指導したり、農薬使用者と養蜂家との情報共有の徹底を求めたりしている。これらの措置が有効に機能し、飼育されているミツバチの被害がどの程度減少しているのか、明らかにされたい。
2 前記1の措置は授粉の大半を担う野生の送粉者を保護するためには、甚だ不十分である。生態系における送粉者を保護するために、林業関係の農薬散布も含めた農薬の使用規制として、どのような地域、樹木・作物、農薬使用者を対象とし、どのような措置を検討しているか具体的に示されたい。

二 現在農薬登録の審査が実施されているスルホキサフロル(以下「当該農薬」という。)について、送粉者への影響を防止するための注意事項は、農薬登録申請書にどのように記載されているか。また、当該記載の内容は、米国において連邦裁判所の命令で当該農薬の農薬登録が取り消された理由等を十分に検討し、これを考慮した記載内容となっているのか。

三 米国における当該農薬の農薬登録の再申請に当たり、農薬製造企業は送粉者への悪影響を考慮して当該農薬の用途を狭め、一部の作物への使用を削除し、再登録された。我が国における当該農薬の登録申請及び審査の際には、当該農薬の送粉者への悪影響は考慮されているのか。考慮されている場合には、どのような影響について考慮されていると考えているのか、申請及び審査についてそれぞれ具体的に説明されたい。

四 当該農薬について、米国では農薬登録審査に際して、原体の他、製剤によるミツバチへの急性毒性試験成績も検討材料としている。我が国における当該農薬の農薬登録審査でも、原体、製剤それぞれについて急性毒性試験成績を検討材料としているのか。当該試験成績を農薬登録審査の検討材料としている場合、当該試験成績の概要を説明されたい。
 また、我が国と米国では、気候や対象農作物等、農薬の使用条件が異なるが、それらの相違について検討するための追加試験を同審査で実施する予定はあるのか、予定している場合には追加試験の内容を具体的に説明されたい。

  右質問する。