質問主意書

第193回国会(常会)

質問主意書


質問第八七号

六ヶ所再処理工場の高レベル廃液とそのガラス固化に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十九年四月二十一日

川田 龍平   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   六ヶ所再処理工場の高レベル廃液とそのガラス固化に関する質問主意書

 日本原燃株式会社六ヶ所再処理工場(以下「六ヶ所再処理工場」という。)の周辺に居住する人々は、不安定でとてつもなく危険な高レベル放射性廃液(以下「高レベル廃液」という。)の存在に脅威を感じている。日本原燃株式会社(以下「原燃」という。)に「高レベル廃液の貯蔵量をゼロとせよ」との要請を行った市民団体に対し、二〇一六年七月二十日、原燃は「(核燃料施設等の)新規制基準では高レベル廃液の貯蔵量に関する要求はないので貯蔵量については考えていない」と答えている。一方で、高レベル廃液をガラス固化することについて、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構核燃料サイクル工学研究所の再処理技術開発センター(以下「東海再処理工場」という。)では、貯蔵されている廃液の危険性を認め、二〇一六年一月からガラス固化を開始している。そこで以下、質問する。

一 六ヶ所再処理工場においても高レベル廃液の貯蔵量の目標値をゼロと定め、東海再処理工場と同様に、少しでもリスクが少なくなる高レベル廃液のガラス固化を早期に開始するべきではないか。

二 市民団体からの「各ガラス固化体に封じ込められた核種の放射能量について、高レベル廃液のガラス固化体の各々について封じ込められたセシウム137とストロンチウム90等の核種について放射能量(べクレル)が調べられているのか。調べられているのならば、ガラス溶融炉A系列、B系列の各々について(中略)安定運転確認二十本と性能確認五本の各二十五本計五十本の固化体について封じ込められた両核種の放射能量を示されたい。」との問いに対し、原燃は、「ガラス固化体に含まれる放射能量等については、保守的な前提条件をおいた上で算定した平均放射能量として管理しているが、運転情報等に当たるため回答できない」と答えた。セラフィールドやラ・アーグからの返還ガラス固化体については含まれる放射能量等が明示されているにもかかわらず、原燃が市民団体の質問にある五十本のガラス固化体の放射能量を明らかにできないという理屈は通らないのではないか。大変危険な高レベル廃液がどれだけガラス固化され、リスクが低減したかを国民へ知らせることは、企業として当然の義務であると考えるが、政府の見解を示されたい。また、国には、このような原燃の姿勢をただす監督責任があるのではないか。

三 原燃によるガラス固化試験の最終報告とされる「再処理施設アクティブ試験におけるガラス固化試験結果等に係る報告について」(二〇一三年七月二十六日。以下「ガラス固化試験報告書」という。)Ⅰ.2.2.(1)「ガラス溶融炉の運転方法改善の検討」4)②において、「事前確認試験」の計画として「実廃液による炉底低温運転等の運転条件の確認を行う。」とあり、これを受けて「ガラス固化試験」を行うと計画され、原子力安全・保安院の評価を受けている。しかし、二〇一二年八月に行われたA系列の事前確認試験においては、模擬廃液だけで試験され、実廃液(高レベル廃液)は使用されていない。そして二〇一三年五月、実廃液・不溶解残渣廃液(白金族を含む)・アルカリ濃縮廃液の混合廃液がガラス固化処理されたことになっている。これは四年半ぶりにA溶融炉で最も困難な白金族廃液を含む実廃液試験のガラス固化がぶっつけ本番で行われ成功したことを意味している。原燃は、国へ報告した計画通りの試験を行っていなかったことになるが、このようなやり方が許されるのか、見解を示されたい。

四 六ヶ所再処理工場におけるアクティブ試験の第五ステップの終了報告はなされたのか。国は、第五ステップの終了報告やアクティブ試験全体の報告、ガラス固化試験の終了報告を、原子力規制委員会のどの審議会で審査・評価することを想定しているのか。また、核燃料施設等の新規制基準適合性に係る審査や使用前検査等の各審査から再処理工場全体の稼働までの、原子力規制委員会における審査計画の段取りを具体的に示されたい。

五 私が提出した質問主意書(第百八十九回国会質問第一二一号)の五において、原燃と青森県による海洋モニタリングデータが実態を反映しない信頼性に欠けるものであることを指摘し、政府の見解を求めたが、これに対する答弁は、「原子力規制委員会においては(中略)再処理事業者による(中略)放射性物質の濃度等の測定が保安規定に基づき実施されていることを確認している」というものであった。原燃は、下北沖海洋へトリチウムを二〇〇六年度に四百九十八兆ベクレル、二〇〇七年度に千三百二十一兆ベクレル、二〇〇八年度に三百六十兆ベクレル放出している。海洋放出口の直上やその五キロメートル、十キロメートル、二十キロメートル先で海水を測定し、一度もトリチウムを検出できないという測定結果はありえないことであり、原燃と青森県による海洋モニタリングデータは信頼できないのではないか。原燃が当該データを操作し虚偽の報告を国に行った可能性があると考えるが、政府としての見解を示されたい。

六 六ヶ所再処理工場に貯蔵されている高レベル廃液について、私の質問に対する答弁(内閣参質一八三第三一号、内閣参質一八九第五五号、内閣参質一八九第一二三号)によれば、二〇一三年二月一日時点で高レベル廃液の貯蔵量は約二百二立方メートル、これに含まれるセシウム137の量は約五百二十ペタベクレル、セシウム137の放射能濃度は約二千六百テラベクレル毎立方メートル、二〇一五年三月四日時点で高レベル廃液の貯蔵量は約二百二十三立方メートル、これに含まれるセシウム137の放射能量は約五百二十ペタベクレルとのことであった。
 高レベル廃液の貯蔵量が増加している理由について、内閣参質一八九第一二三号では、「日本原燃からは、六ヶ所再処理施設を管理するために必要な設備の運転により定常的に高レベル廃液が発生していることや、高レベル廃液を均質に保つために、水及び硝酸を定期的に供給しているためであると聞いている」とのことだが、セシウム137の半減期を考慮すると、「高レベル廃液貯蔵設備」に貯蔵されていた高レベル廃液に含まれる約五百二十ペタベクレルのセシウム137は、二〇一三年二月一日から二〇一五年三月四日までの約二年間で約二十三ペタベクレル自然に減衰するはずである。自然減衰分に相当する約二十三ペタベクレルは、どこからどのように供給されたと考えているのか。

七 前記六に関し、セシウム137を約二十三ペタベクレル含む燃料束は、BWRで八十体、PWRで三十二体程度になる。国は、ガラス固化試験報告書を点検し、疑わしきは再度報告を求めるなど、改めて厳重に精査するべきではないか。

  右質問する。