質問主意書

第193回国会(常会)

質問主意書


質問第七三号

雇用保険法等の一部を改正する法律等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十九年三月三十一日

牧山 ひろえ   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   雇用保険法等の一部を改正する法律等に関する質問主意書

 第百九十三回国会で成立した「雇用保険法等の一部を改正する法律」(以下「本法律」という。)に関し、以下の通り質問する。

一 平成十二年及び平成十五年に、倒産や解雇により離職を余儀なくされた特定受給資格者以外の者の基本手当の給付水準が大幅に引き下げられ、現在に至っている。その一方、現在は、失業者に支給される基本手当の受給者実人員が減少傾向にある中、平成二十七年度末の雇用保険の積立金残高は、過去最高の約六兆四千億円となっている。
 現在の雇用保険財政や過去の制度変更の経緯からすれば、労働政策審議会における議論の過程において労働者代表委員から意見が表明されたとおり、基本手当の水準を平成十二年改正及び平成十五年改正前の水準に戻すことが必要だと考える。
 一方で、この労働者代表委員からの意見に対して、使用者代表委員からは、基本手当の水準を引き上げると、早期再就職に対する意識や行動の変化が予測されることから慎重な対応が必要である旨の意見が示された。
 この使用者代表委員が指摘するような、基本手当の水準を引き上げることによる早期再就職へのマイナスの影響が、実際にはどの程度あると厚労省は考えているのか。その根拠とともにご説明願いたい。

二 有期契約労働者の育児休業の取得に関しては、昨年三月に改正され、本年一月から全面施行されている育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(改正育児・介護休業法)において要件が緩和され、現行制度では、同一の事業者に引き続き一年以上雇用されていることに加えて、養育する子が一歳六か月になるまでの間に労働契約が満了することが明らかでないことが条件となっている(改正育児・介護休業法第五条第一項)。
 本法律により、養育する子が二歳になるまでの育児休業の延長に関して、有期契約労働者の場合、「子が二歳に達する」までに労働契約が満了することが明らかでないことが条件となることになるが、有期契約労働者が実際にこれを利用することができるのか懸念される。
 まず、現行制度において、育児休業を延長している有期契約労働者のうち、その養育する子が一歳以上である者がどれくらいいるのか伺う。仮に把握していなければ、実態把握が必要ではないかと考えるが、如何か。
 また、有期契約労働者が安心して育児休業を取得し、必要な場合には延長できるように、政府としてどのような取組を検討しているのか伺う。

三 本法律により求人者等に義務づけられることになる、「労働条件等を変更する場合の当該変更内容の明示」について、当局は、労働基準法第十五条第一項で義務付けられている「労働契約締結時の労働条件明示」においてなすことも可能であると説明している。
 そもそも、当初提示された労働条件等からの変更点を求職者がしっかり認識し、納得した上で就業するというのが今回の改正趣旨のはずである。労働契約締結時の労働条件の明示が労働条件等の変更の明示を兼ねることが出来るとすると、今回の改正趣旨が十分機能しないおそれがあるのではないか。政府の認識如何。

  右質問する。