質問主意書

第193回国会(常会)

質問主意書


質問第三五号

南スーダンPKOに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十九年二月十七日

牧山 ひろえ   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   南スーダンPKOに関する質問主意書

一 昨年十一月二十日、国連南スーダン共和国ミッション日本派遣施設隊第十一次要員が日本を出発し、十二月十二日から「駆け付け警護」等の新たな任務の遂行が可能となった。
 南スーダンの情勢について、政府は、自衛隊が展開する首都ジュバは比較的落ち着いているとの認識を示しているが、アダマ・ディエン国連事務総長特別顧問は、政治的な対立で始まったものが完全な民族紛争になり得るものへと変質し、ジェノサイド(民族大虐殺)に発展するおそれがある旨指摘している。また、本年一月十三日、米国のパワー国連大使は、南スーダンのPKO部隊が現地政府に移動を制限され、現地政府の許可を得なければ市民保護もできない状況となっている旨明らかにした。
 南スーダンの情勢はもはや落ち着いた情勢とは言えず、派遣された自衛隊が現地で意義ある活動を行うことは困難ではないか、政府の見解を問う。

二 南スーダンにおける国連平和維持活動をめぐり、陸上自衛隊の派遣部隊の昨年七月の「日報」に、首都ジュバの様子について「戦闘」という表現があることが判明している。しかも、現地での武力衝突について、「抗争」という表現が途中から「戦闘」に変わっていて、急速な治安情勢の悪化に対し現地の部隊が危機感を強めていたことがうかがえる。
 一方、政府は「駆け付け警護」を任務に加える昨年十一月の南スーダン国際平和協力業務実施計画の変更において、紛争当事者間で停戦合意が成立していることなどを定めた「PKO参加五原則」が満たされている場合でも、「安全を確保しつつ有意義な活動を実施することが困難」な場合には陸上自衛隊の部隊を撤収する旨を明記している。
 前記の七月の日報のような状況でも、同実施計画の変更における「安全」が「確保」されていると判断されているのか、政府の見解を明らかにされたい。

三 昨年十二月二十三日、米国が国連安全保障理事会に提出した南スーダンへの武器禁輸を含む制裁決議案が、日本、中国、ロシアなど八か国が棄権したことにより否決された。日本政府は棄権の理由について、武器禁輸は実効性に問題があり、紛争を止める特効薬にはならない旨の説明をしている。武器禁輸はすぐに効く特効薬にはならないかもしれないが、徐々にでも南スーダンへの武器の流入を防ぐことが、長期的に見て同国の安定に繋がるとの判断ができなかったのか、見解を伺う。
 また、日本の棄権については、決議案に賛成すれば現地の危機的状況を認めることになり、紛争当事者間の停戦合意などを定めた「PKO参加五原則」に改めて疑問が突きつけられるため棄権したのではないかといった意見や、現地政府の反発を買えば自衛隊の危険度が高まりかねないため自衛隊の安全を優先して武器禁輸を回避したのではないかとの指摘もある。決議案を棄権した真の理由は何か、政府の見解を問う。
 さらに、過去、紛争地域への武器禁輸を求める国連の決議に、日本政府が反対ないし棄権した事例を挙げられたい。

四 政府は、前記一の第十一次要員の派遣に際し、現在支給されている一日当たり一万六千円の国際平和協力手当について、「駆け付け警護」に従事した場合には一日当たり八千円を追加支給することを決定した。さらに、「駆け付け警護」に従事した隊員に対する賞じゅつ金についても、現行の国際平和協力業務の最高授与額六千万円を九千万円に引き上げた。
 「平和安全法制」の審議の際、政府は「平和安全法制」により自衛隊員のリスクが増大することはないと答弁していたが、危険やリスクが高まったからこそ国際平和協力手当や賞じゅつ金の額を引き上げたのではないのか。仮にリスクの観点からの引上げではないのだとしたら、何を理由に額を引き上げたのか、政府の説明を求める。
 また、政府は、「平和安全法制」による新たな予算の増額はないとも答弁していたが、今回の手当や賞じゅつ金の引上げに関する予算措置については「平和安全法制」による予算の増額ではないのか、政府の見解を説明されたい。

  右質問する。