質問主意書

第193回国会(常会)

質問主意書


質問第二三号

TPP協定、日EU経済連携協定及びRCEPに対する今後の日本の対応に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十九年二月六日

徳永 エリ   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   TPP協定、日EU経済連携協定及びRCEPに対する今後の日本の対応に関する質問主意書

一 環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉に関する我が国の今後の対応について

1 本年一月二十三日、米国のトランプ大統領はTPP協定から「永久離脱」する大統領令に署名した。このことによって、TPP協定の発効は絶望的との認識が各国に広まっている。一方、豪州のチオボー貿易・観光・投資相は、米国抜きでの発効を含めた代替案について日本など原署名国と協議する意向を表明した。米国抜きでのTPP協定発効を目指すこと及び実現可能性についての政府の現段階での考えを明らかにされたい。
2 TPP協定第三十章の第三十・五条(効力発生)を改正しない限り、米国抜きでのTPP協定発効はできないのではないか。TPP協定第三十章の第三十・五条の改正を可能にするためには、米国及び原署名国がどのような手続をとる必要があるのか明らかにされたい。
3 去る一月三十日、米国の通商代表部は、「TPP協定に参加する意向はない」と寄託国であるニュージーランドに通知した。TPP協定には、発効前の離脱、あるいは脱退に関する規定は設けられていないが、TPP協定の改正を行わずに、TPP協定の原署名国である米国が離脱することは可能なのか。また、米国による離脱通知は、日本を含む原署名国にどのような意味を持ち、どのような影響を及ぼすと考えられるか、政府の見解を示されたい。
4 我が国がTPP協定交渉に参加するに当たって、米国議会からの承認を得るため、我が国は二〇一三年に、いわゆる「入場料」、「前払い」とも言われる、米国からの要求の受け入れとその実施を決めた。自動車に係る米国の関税がTPP協定交渉における最も長い段階的な引下げ期間によって撤廃され、かつ、最大限に後ろ倒しされること、及び、この扱いは米韓FTAにおける自動車に係る米国の関税について規定されている扱いを実質的に上回るものとなることを米国と確認するとともに、軽自動車税の引上げ、BSE対策に関する輸入対象月齢の大幅引上げを行った。さらには、日米並行協議においても米国からの要求を受け入れ、一部は既に実施している。日米並行協議に関して政府は「新しい約束は何もない。これまでしてきたことを文章にしただけであり、法的拘束力はない」旨国会において累次答弁しているが、TPP協定発効が絶望的となった現在、日本は米国に対して譲歩しただけで、何も得ていないのではないか、政府の考えを明らかにされたい。
5 TPP協定は事実上経済面における対中国包囲網であり、また、安全保障上も重要である旨安倍総理はかねてより言及してきた。米国のTPP協定離脱がもたらす我が国への安全保障上の影響について、政府の考えを明らかにされたい。
6 我が国が他の原署名国に先駆けて、TPP協定を批准したことによって、今後、米国との間で行われる可能性のある二国間交渉や他の貿易交渉でTPP協定に規定する水準以上の自由化を求められる可能性について政府はどのように考えているのか明らかにされたい。また、TPP協定に規定する水準以上の自由化を求められた場合の我が国の対応についても明らかにされたい。
7 我が国が交渉に加わった二〇一三年七月のマレーシア・コタキナバルでの交渉会合から、大筋合意した二〇一五年十月の米国・アトランタでの交渉会合までの間にTPP協定交渉のために要した経費の総額と内訳についてできるだけ詳細に明らかにされたい。

二 日EU経済連携協定について

1 我が国は、日EU経済連携協定の昨年内の大枠合意を目指していたが、交渉は越年となった。次回の交渉会合は、どこで、いつ頃開催される予定なのか明らかにされたい。また、我が国政府として、次に目指す大枠合意の時期についてその目標を明らかにされたい。
2 TPP協定が今後の通商交渉におけるモデルになると総理は発言してきた。日EU経済連携協定は、TPP協定をモデルに交渉が行われているとの見方もあるが、TPP協定と共通する点又は異なる点について政府の認識を説明されたい。また、交渉分野についても、これまでの通商交渉にはなかった分野や考え方があれば明らかにされたい。
3 日EU経済連携協定に対し、私の地元、北海道の農業関係者には、TPP協定以上に大きな不安が広がっている。豚肉や乳製品の関税が撤廃されれば、畜産業はもとより、加工原料乳を生産している北海道の酪農家にも深刻な影響があることは否めない。日EU経済連携協定が北海道はもとより、日本の農業へ与える影響について政府の見解を示されたい。
4 TPP協定については交渉が大筋合意に至るまでに、全国各地で関係団体等向けの説明会が開かれた。日EU経済連携協定については、日本経済団体連合会(以下「経団連」という。)に対し昨年の十一月十八日に経団連会館で政府から交渉の最新状況や今後の展望についての説明があったと聞いている。国会議員、農業関係者や市民に対しても、日EU経済連携協定の交渉の内容や課題等の情報の提供を目的とする説明会を行うことを強く求めるが、これに対する政府の見解を示されたい。
5 前記二の4に関して、説明会を行うつもりがない場合、守秘義務のあったTPP協定交渉のときでさえ行っていた説明会を、同義務のない日EU経済連携協定の交渉では国会議員等に対して行わない理由を明らかにされたい。

三 東アジア地域包括的経済連携(RCEP)について

1 本年二月二十七日から三月三日まで、神戸にてRCEPの交渉会合が開催されると聞くが、神戸交渉会合のテーマ、スケジュール等について、できる限り詳細を明らかにされたい。また、現時点でのRCEP交渉の進捗状況について説明されたい。
2 神戸交渉会合での交渉の内容や課題等について、経団連や企業に対する説明会の開催は予定されているのか。また、国会議員や農業関係者など交渉の内容に不安を抱くステークホルダーや国内外のNGO・市民等に対して、神戸交渉会合での交渉の内容や課題等の情報の提供を目的とする説明会を行うことを強く求めるが、これに対する政府の見解を示されたい。
3 前記三の2に関して、説明会を行うつもりがない場合、守秘義務のあったTPP協定交渉のときでさえ行っていた説明会を、同義務のないRCEPの交渉では関係団体等に対して行わない理由を明らかにされたい。

  右質問する。