質問主意書

第192回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第六六号

内閣参質一九二第六六号
  平成二十八年十二月二十二日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員牧山ひろえ君提出国民年金法等の一部を改正する法律案のうち、年金額の改定ルールの見直しに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員牧山ひろえ君提出国民年金法等の一部を改正する法律案のうち、年金額の改定ルールの見直しに関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の「平成十六年と平成二十六年の財政検証」の意味するところが必ずしも明らかではないが、財政再計算結果(平成十六年財政再計算における基準ケース(将来推計人口の前提は国立社会保障・人口問題研究所が作成した「日本の将来推計人口(平成十四年一月推計)」における中位推計、長期の経済前提は物価上昇率一・〇パーセント、賃金上昇率二・一パーセント、運用利回り三・二パーセントとしたケース)による計算結果をいう。以下同じ。)では、平成十九年度から平成二十六年度までの期間は、国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)第二十七条の四第一項の規定により調整率(同条第二項第一号に規定する調整率をいう。以下同じ。)等を用いて老齢基礎年金の額を改定することを前提とした推計となっていたが、当該期間には国民年金法等の一部を改正する法律(平成十六年法律第百四号。以下「平成十六年改正法」という。)附則第十二条第一項の規定により調整率を用いた老齢基礎年金の額の改定が行われなかった。また、現役男子の手取り収入額(平成十六年改正法附則第二条第一項第三号に掲げる額をいう。以下同じ。)の変動率はおおむね名目手取り賃金変動率(国民年金法第二十七条の二第二項に規定する名目手取り賃金変動率をいう。以下同じ。)に連動すると考えられるが、平成十七年度から平成二十六年度までの期間に国民年金法第二十七条の二第三項の規定により老齢基礎年金の額の改定に名目手取り賃金変動率が用いられなかった年度があったため、当該期間において、現役男子の手取り収入額の低下に比べて老齢基礎年金の額の低下は小さくなり、平成二十六年度における基礎年金部分の所得代替率(平成十六年改正法附則第二条第一項第一号に掲げる額の現役男子の手取り収入額に対する比率をいう。以下同じ。)は、財政再計算結果に比べて高くなった。これらのことなどから、財政検証結果(平成二十六年六月三日に公表した国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通しのうち、将来推計人口の前提は国立社会保障・人口問題研究所が平成二十四年一月に公表した「日本の将来推計人口」において仮定している合計特殊出生率等の中位推計とし、経済前提はケースEとしたケースによる見通しの結果をいう。以下同じ。)では、財政再計算結果に比べて基礎年金の調整期間(国民年金法第十六条の二第一項に規定する調整期間をいう。以下同じ。)が長くなり、基礎年金の調整期間の終了年度における基礎年金部分の所得代替率が低くなるという結果となったものである。
 また、財政検証結果における基礎年金の調整期間の終了年度における基礎年金部分の所得代替率が財政再計算結果に比べて低くなったため、財政検証結果では、基礎年金の調整期間の終了年度以降の各年度において、国民年金法第九十四条の二第一項及び第二項の規定により厚生年金保険の実施者たる政府が負担し、実施機関たる共済組合等が納付する基礎年金拠出金の額が、仮に基礎年金の調整期間が財政再計算結果と同じであったとした場合と比べて減少することなどから、財政検証結果では、財政再計算結果と比べて報酬比例部分の調整期間(厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第三十四条第一項に規定する調整期間をいう。)が短くなり、報酬比例部分の所得代替率(平成十六年改正法附則第二条第一項第二号に掲げる額の現役男子の手取り収入額に対する比率をいう。)が高くなるという結果となったものである。

二について

 御指摘の「賃金変動が物価変動を上回る場合には年金額は改定されず、新規裁定者は賃金変動、既裁定者は物価変動をベースに年金額が改定される」及び「一律に賃金変動に合わせて年金額を改定する」の意味するところが明らかではないが、平成二十八年十二月十四日に成立した公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律第二条及び第四条の規定による年金額の改定方法の見直しについては、財政検証結果を踏まえ、年金の給付水準を年金制度の支え手である現役世代の負担能力に応じたものとすることにより、年金制度の支え手である現役世代が将来年金を受給する世代となった場合において受給することとなる年金の給付水準を確保するためのものであり、現役世代の年金制度への信頼が高まることで現在の年金受給者の生活の安定に必要な年金制度の持続可能性の向上が図られるものと考えている。
 なお、低所得の高齢者への対策としては、社会保障制度改革国民会議の報告書において「低所得者に対するセーフティネットの強化に関しては、年金制度だけで対応するのではなく社会保障全体で対応すること」とされていることも踏まえ、公的年金制度のみならず社会保障制度全体で総合的に対応していくこととしている。

三について

 生活保護の受給状況は、世帯構成の変化、経済情勢や資産の状況など、様々な要素が影響を与えるものであることから、年金額の改定方法の見直しにより生活保護を受給する高齢者世帯の数がどのように変化するかについて、一概にお答えすることは困難である。