質問主意書

第192回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第四八号

内閣参質一九二第四八号
  平成二十八年十二月九日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員那谷屋正義君提出シベリア抑留問題の現状に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員那谷屋正義君提出シベリア抑留問題の現状に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの会談の詳細については、現在調整中であり、その内容について予断をもってお答えすることは差し控えたい。政府としては、ロシア連邦との間で北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するという基本方針の下、引き続き同国との間で交渉する考えである。

二について

 第一次安倍政権及び第二次安倍政権発足以降に行われた日露首脳会談においては、いわゆるシベリア抑留問題は取り上げられておらず、日露両首脳からこの問題についての言及は行われていない。

三について

 お尋ねの「訳文」の有無については、政府として把握していない。また、お尋ねの「趣旨」及び「理解」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いずれにせよ、政府としては、戦後強制抑留者に係る問題に関する特別措置法(平成二十二年法律第四十五号。以下「特措法」という。)が施行された後、ロシア連邦政府に対し、特措法が成立したこと等を説明している。

四及び五について

 政府として、旧ソヴィエト社会主義共和国連邦(以下「旧ソ連邦」という。)及びモンゴル人民共和国の地域に抑留された日本人(以下「抑留者」という。)は、約五十七万五千人であると推計している。なお、お尋ねの「外国籍(植民地出身者)の方」の数についてはその意味するところが必ずしも明らかではないこと、また、女性である抑留者の数、各都道府県ごとの抑留者の数及び御指摘の「樺太、千島列島、北朝鮮、中国東北部(旧満州)」において旧ソ連邦の軍隊の統制下で抑留された方の人数については把握していないことから、お答えすることは困難である。

六について

 お尋ねの「一九四五年から一九五六年まで日本人が抑留された収容所」の意味するところが必ずしも明らかではないが、平成三年に旧ソ連邦から提供された「ソ連邦抑留死亡者名簿」等には、旧ソ連邦抑留者に係る約四百五十の収容所等の名称が記載されているほか、一部の収容所等の所在地を了知し得る情報が記載されている。
 また、お尋ねの「訪問」の意味するところが必ずしも明らかではないが、平成三年四月から平成二十八年十月末までの間に旧ソ連邦の地域における政府主催の墓参又は慰霊巡拝の対象となった収容所及び埋葬地は、延べ八百九十九か所である。

七について

 お尋ねの「どの程度正確に死亡の事実が伝達されているか」及び「抑留犠牲者について出された死亡告知書」の意味するところが必ずしも明らかではないためお答えすることは困難であるが、厚生労働省においては、抑留者のうち強制抑留下において死亡した者(以下「抑留中死亡者」という。)について、ロシア連邦政府等から資料の提供を受け、当該資料と同省が保管する人事関係資料等との照合等により、抑留中死亡者の身元の特定を行い、抑留中死亡者の遺族が判明した際にはその遺族に対して同国政府から得られた情報をお知らせしてきている。

八について

 お尋ねの「責任者」の意味するところが必ずしも明らかではないが、特措法第十三条第一項の規定に基づき定められた、「強制抑留の実態調査等に関する基本的な方針」(平成二十三年八月五日閣議決定)において、同項に規定する強制抑留の実態調査等に係る関係省庁の取組を整理し、実施状況を適切に公表することを定めている。当該取組の実施状況については、厚生労働省社会・援護局が毎年度取りまとめ公表している。
 また、お尋ねの「同実態調査等にこれまで政府が支出した額」の意味するところが必ずしも明らかではないが、同省は、平成二十三年度から平成二十八年度までの累計で、当該実態調査等に十八億七千三百二十二万八千円の予算を計上している。

九について

 お尋ねの「強制抑留の実態解明作業に関するロシア政府の窓口」については、ロシア連邦政府では、外務省が窓口となって、内務省、国防省、ロシア国立軍事古文書館等の関係省庁・機関がいわゆるシベリア抑留問題に取り組んでいると承知している。
 なお、お尋ねの「ロシア政府の同作業に係る費用」については、その意味するところが必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難である。

十について

 お尋ねの「公式、非公式を問わず」の意味するところが必ずしも明らかではないが、政府は、ロシア連邦政府との間で、捕虜収容所に収容されていた者に関する日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定(平成三年外務省告示第三百十一号。以下「協定」という。)に基づき、いわゆるシベリア抑留問題に関する日露協議(以下「日露協議」という。)をこれまで四回にわたり実施したところである。また、いわゆるシベリア抑留問題については在ロシア日本国大使館を通じるなどして、恒常的に日露間でやり取りを行ってきていることから、その回数をお答えすることは困難である。
 次回の日露協議の日程等については、現時点では決まっていないが、政府としては、今後とも、協定に基づく取組を更に効果的に実施すべく、様々な機会を捉えて同国政府との間で協議を行っていく考えである。

十一について

 お尋ねの「主な死因」の意味するところが必ずしも明らかではないが、厚生労働省においては、抑留中死亡者の死因として、例えば、栄養失調、発しんチフス、肺結核等があると承知している。
 なお、お尋ねの「それぞれの割合」については、把握しておらず、お答えすることは困難である。

十二について

 お尋ねの「戦犯またはソ連国内法違反者として処刑された方」の数については、その意味するところが必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難である。
 また、お尋ねの「処刑された抑留者の起訴状や裁判記録」については、その意味するところが必ずしも明らかではないが、ロシア連邦政府から提供された抑留中死亡者に関する資料の中には判決日や判決内容等の裁判に関する情報が記載されているものもあり、厚生労働省が保管している。

十三について

 お尋ねの「戦犯またはソ連国内法違反者として処刑された抑留者について、日本政府はソ連以外の連合国がそれぞれの国で行った軍事裁判及び極東国際軍事裁判で有罪判決を受けた方と同等に扱ってきたか」及び「相違点」の意味するところが必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難である。

十四について

 政府として、千九百九十一年にロシア連邦において「政治的弾圧の犠牲者の名誉回復に関する法律」が制定されたことは承知しているが、お尋ねについては、調査した限りでは、政府内に事実関係を把握することができる資料が確認できないことから、お答えすることは困難である。

十五について

 お尋ねの「それらに関する調査や補償」の意味するところが必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難であるが、いわゆるシベリア抑留に関し、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣言(昭和三十一年条約第二十号)第六項は、「日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、千九百四十五年八月九日以来の戦争の結果として生じたそれぞれの国、その団体及び国民のそれぞれ他方の国、その団体及び国民に対するすべての請求権を、相互に、放棄する」と規定しているところ、これについて、国に法的な補償の責任はないというのが従来からの政府の見解であり、また、平成九年三月十三日の最高裁判所第一小法廷の判決等も同様の判断を示していると承知している。

十六について

 お尋ねの「強制抑留における労働・使役は、炭鉱採掘、森林伐採、鉄道敷設、工場勤務、建物建築などであったことがよく知られているが、労働・使役に占める割合がそれぞれ何割程度と推定されるか」については、具体的に把握していないため、お答えすることは困難である。

十七について

 政府としては、抑留中に亡くなられた方々を含む今次の大戦における全戦没者に対し、国を挙げて追悼の誠をささげるため、毎年八月十五日に政府主催により全国戦没者追悼式を実施しており、お尋ねの式典等を行う予定はない。