質問主意書

第192回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第四七号

内閣参質一九二第四七号
  平成二十八年十二月九日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員伊藤孝恵君提出トランス脂肪酸の規制等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員伊藤孝恵君提出トランス脂肪酸の規制等に関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘の「古くて稚拙」の意味するところが必ずしも明らかでないが、食品によるトランス脂肪酸の摂取については、平成二十四年三月に食品安全委員会が取りまとめた食品健康影響評価において、「日本人の大多数がWHOの勧告(目標)基準であるエネルギー比一%未満であり、また、健康への影響を評価できるレベルを下回っていることから、通常の食生活では健康への影響は小さいと考えられる」と評価されている。
 政府としては、厚生労働省が行っている国民健康・栄養調査及び農林水産省が行っている有害化学物質含有実態調査の結果、今後の新たな科学的知見等を踏まえて、トランス脂肪酸に係る新たな食品健康影響評価の実施の必要性について検討してまいりたい。

二について

 御指摘の「部分水素添加油脂」については、トランス脂肪酸が多く含まれていることから、米国において御指摘の「GRAS」の対象から除外されるものと承知している。「部分水素添加油脂」は、マーガリン等の主たる原料に使用されるなど、食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号)上、一般的には、食品(同法第四条第一項に規定する食品をいう。以下同じ。)として取り扱われるため添加物(同条第二項に規定する添加物をいう。以下同じ。)には該当しないことから、添加物としてその製造販売や使用等について規制を行うことはできないものと考えている。
 また、一についてで述べたとおり、日本人の通常の食生活ではトランス脂肪酸による健康への影響は小さいと考えられることから、トランス脂肪酸が多く含まれていることをもって食品たる「部分水素添加油脂」の製造販売等について、同法上、新たな規制を行うことは、現在のところ考えていない。今後、トランス脂肪酸に係る新たな食品健康影響評価の結果が取りまとめられた場合には、当該結果を踏まえて、当該規制の必要性について検討してまいりたい。

三について

 御指摘の「情報開示」の意味するところが必ずしも明らかでないが、食品表示法(平成二十五年法律第七十号)第四条第一項の規定により定められた食品表示基準(平成二十七年内閣府令第十号)においては、消費者の摂取状況等を踏まえた消費者への表示の必要性があること、事業者にとって表示が実行可能であること及び国際基準と整合していることの三点を全て満たす栄養成分の量及び熱量の表示を、内閣総理大臣が同法第四条第二項(同条第六項において準用する場合を含む。)の規定に基づき消費者委員会の意見を聴いた上で、同基準第三条第一項に規定する食品関連事業者が容器包装に入れられた加工食品(業務用加工食品を除く。)を販売する際(設備を設けて飲食させる場合を除く。)に表示されなければならない事項(以下「義務表示事項」という。)として定めている。トランス脂肪酸の量の表示については、現時点において当該三点いずれも満たしているとは言えないことから、義務表示事項とはしないこととしている。
 なお、消費者庁は平成二十三年に、トランス脂肪酸に関して食品事業者が情報開示を行う際の指針を定め、「トランス脂肪酸の情報開示に関する指針」として公表し、自主的に開示する取組を進めるよう要請している。