質問主意書

第192回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第二七号

内閣参質一九二第二七号
  平成二十八年十一月十五日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員山本太郎君提出南スーダンで活動している自衛官の生命に関わる危機対応に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員山本太郎君提出南スーダンで活動している自衛官の生命に関わる危機対応に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねについては、「国連平和維持軍(United Nations Peacekeeping Force)」について、現在のところ、国際的に確立した定義があるとは承知しておらず、また、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律(平成四年法律第七十九号。以下「法」という。)においても、「国連平和維持軍」を定義した規定はないことから、お答えすることは困難である。

二について

 お尋ねの意味するところが必ずしも明らかではないが、国際連合南スーダン共和国ミッション(以下「UNMISS」という。)に派遣されている自衛隊の部隊(以下「UNMISS派遣部隊」という。)は、国際連合事務総長等による指図の内容等に従い、法に基づき国際平和協力業務を実施している。

三について

 自衛隊は、憲法上自衛のための必要最小限度を超える実力を保持し得ない等の制約を課せられており、通常の観念で考えられる軍隊とは異なるものであると考えているが、国際法上、一般的には、軍隊として取り扱われるものと考えられる。さらに、自衛隊の部隊等が法第三条第一号に基づきUNMISSに参加する場合にあっても、他国軍隊と同様、軍隊として取り扱われるのが通例である。
 また、お尋ねの「国際法上「戦闘員」」の意味するところが必ずしも明らかではないが、仮に千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書Ⅰ)(平成十六年条約第十二号)第四十三条2に規定する戦闘員を指すのであれば、UNMISSは同追加議定書上の紛争当事者には当たらないことから、UNMISSにおいて活動している自衛官は、同追加議定書上の戦闘員には当たらない。

四について

 法第二十六条第二項は、法第九条第五項の規定により派遣先国において国際平和協力業務であって法第三条第五号ラに掲げるものに従事する自衛官は、その業務を行うに際し、自己又はその保護しようとする活動関係者の生命又は身体を防護するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で、法第六条第二項第二号ホ(2)及び第四項の規定により実施計画に定める装備である武器を使用することができる旨規定し、法第二十六条第三項は、同条第二項の規定による武器の使用に際しては、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三十六条又は第三十七条の規定に該当する場合を除いては、人に危害を与えてはならない旨規定している。
 お尋ねの武器の使用の可否については、これらの規定に従い、個別具体的な状況に即して判断する必要があり、お尋ねのような仮定の事例について限られた与件のみに基づいて判断することはできず、一概にお答えすることは困難である。
 また、お尋ねの「当該武器使用は国際法上「交戦」に該当するか」については、お尋ねの「国際法上「交戦」」の意味するところが必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難である。

五について

 自衛官による武器の使用については、法令を遵守して適切に実施されることとなるよう、厳しい教育訓練を行っていることから、お尋ねのような「誤って一般市民や民間人といった非戦闘員を殺傷してしまう事態」は、極めて想定しにくいものと考えている。

六について

 お尋ねについては、仮定の質問であり、お答えすることは差し控えたい。

七の1について

 UNMISS派遣部隊に所属する自衛隊員のうち医官は三名である。それぞれの診療経験年数は、約二十三年、約十二年及び約三年であり、専門領域は、一名が外科系、二名が内科系である。また、自衛隊の部隊等が法第三条第五号ラに掲げる業務を行う際には、必要に応じ、医師等の資格を保有する専門的な教育を受けた衛生要員が同行することとなる。

七の2について

 UNMISS派遣部隊に所属する各自衛隊員が携行する救急品は、救急品袋、止血帯、救急包帯、チェストシール、止血ガーゼ、人工呼吸用シート、手袋及びはさみである。

八について

 お尋ねの「戦死者」との用語について確立された定義があるとは承知していないが、UNMISS派遣部隊に所属する自衛官が公務上死亡した場合、当該自衛官は、公務上の災害を受けた職員ということとなり、防衛省の職員の給与等に関する法律(昭和二十七年法律第二百六十六号)第二十七条第一項において準用する国家公務員災害補償法(昭和二十六年法律第百九十一号)の規定が適用される。

九について

 お尋ねの棺の搬入の有無等を明らかにすることは、無用の混乱を招くおそれがあり、お答えすることは差し控えたい。

十について

 お尋ねについては、仮定の質問であり、お答えすることは差し控えたいが、一般論としては、国際平和協力業務に従事する自衛隊の部隊等の海外への派遣を継続するか否かについては、その時点の状況を総合的に勘案し、我が国の要員の安全を確保した上で意義のある活動を行えるか、法に定める我が国として国際連合平和維持隊に参加するに際しての基本的な五つの原則その他の法の定める要件を満たしているか等の観点を踏まえ、個別に判断することとなる。