質問主意書

第192回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第八号

内閣参質一九二第八号
  平成二十八年十月二十一日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員櫻井充君提出東京大学の研究不正の調査のあり方に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員櫻井充君提出東京大学の研究不正の調査のあり方に関する質問に対する答弁書

一から三まで及び五から八までについて

 御指摘の「糖尿病・代謝内科の教授による過去の研究不正の調査」、「循環器内科の教授による過去の研究不正の調査」及びVART研究「問題」に対する東京大学による「調査」が具体的に何を指すのか必ずしも明らかではないため、これらの「調査」に関するお尋ねについてお答えすることは困難であるが、大学等の研究機関における研究活動の不正については、平成十八年二月二十八日に総合科学技術会議(当時)が決定した「研究上の不正に関する適切な対応について」において、「関係府省等における対応」として、「国による研究費の提供を行う府省及び機関は、不正が明らかになった場合の研究費の取り扱いについて、あらかじめ明確にする。また、研究費の配分先となる組織に対して、研究上の不正に関する規定の策定及び不正の防止に向けた対応を求める」とされている。文部科学省としては、同省の予算の配分又は措置により行われる研究活動(以下「研究活動」という。)における不正行為に対する対応に関しては、「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(平成二十六年八月二十六日文部科学大臣決定。以下「ガイドライン」という。)において、その基本的な考え方や研究機関(所属する研究者が研究活動を行っている機関をいう。以下同じ。)による特定不正行為(故意又は研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったことによる、投稿論文など発表された研究成果の中に示されたデータや調査結果等の捏造、改ざん及び盗用をいう。以下同じ。)に対する調査等について定めている。具体的には、研究活動における不正行為に対する対応については、「まずは研究者自らの規律、及び科学コミュニティ、研究機関の自律に基づく自浄作用としてなされなければならない」とし、特定不正行為の告発に係る事案の調査を行う研究機関が設置する調査委員会の調査委員については、「全ての調査委員は、告発者及び被告発者と直接の利害関係(例えば、特定不正行為を指摘された研究活動が論文のとおりの成果を得ることにより特許や技術移転等に利害があるなど)を有しない者でなければならない」とし、調査の対象となる研究活動については、「告発された事案に係る研究活動のほか、調査委員会の判断により調査に関連した被告発者の他の研究活動も含めることができる」とし、調査の中間報告については、「調査機関が研究機関であるときは、告発された事案に係る研究活動の予算の配分又は措置をした配分機関等の求めに応じ、調査の終了前であっても、調査の中間報告を当該配分機関等に提出するものとする」とし、調査の内容の公表については、「調査機関は、特定不正行為が行われたとの認定があった場合は、速やかに調査結果を公表する」とするとともに、「公表する調査結果の内容(項目等)は、調査機関の定めるところによる」としているところである。
 その上で、お尋ねの「今回告発のあった二十二本の論文」に係る東京大学の「調査」については、調査の対象とすべき「過去の論文」の範囲の決定を含め、同大学が設置する調査委員会において、ガイドライン等に基づき適切に行われると考えており、お尋ねの同大学が設置する「調査委員会の委員」やお尋ねの「研究不正の調査」における調査委員会の調査委員の選定及びお尋ねの「研究不正の調査委員会の委員や調査の内容」の公表については、同大学や調査を行う研究機関において、ガイドライン等に基づき適切に行われると考えており、お尋ねの同大学の「中間報告」については、現段階では、同大学が設置した調査委員会において調査を開始した直後であることから、それを求めるか否かについての判断は困難である。
 また、お尋ねの厚生労働省による同大学に対してのVART研究に関する「指導」は、同研究自体が同大学で行われていないことから、行っていない。

四について

 お尋ねの「研究公正推進室が作られる以前と比較してなにがどう変わったのか、根拠とともに示されたい」の意味するところが必ずしも明らかではないが、文部科学省においては、平成二十七年四月に、文部科学省組織規則(平成十三年文部科学省令第一号)第四十九条第一項及び第四項の規定に基づき、科学技術に関する研究者に関する基本的な政策のうち研究開発の公正な実施の推進に係るものに関する企画及び立案並びに推進に関すること等の事務をつかさどる研究公正推進室を設置し、新たに、同室において、研究機関におけるガイドラインを踏まえた体制整備の状況等を適切に把握するための定期的な履行状況調査や研究倫理教育に関するプログラムの開発推進等を実施している。