質問主意書

第192回国会(臨時会)

質問主意書


質問第七〇号

若年妊娠と学業の継続等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年十二月十四日

牧山 ひろえ   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   若年妊娠と学業の継続等に関する質問主意書

 厚生労働省の「平成二十六年衛生行政報告例」によれば、二〇一四年の二十歳未満の人工妊娠中絶件数は一万七千八百五十四件であり、また、同省の「平成二十六年(二〇一四)人口動態統計(確定数)」によれば、二十歳未満の母からの出生数は一万三千十一人となっている。十代の妊娠のほとんどが「予期せぬ・望まない」妊娠であり、若年妊娠が学業の継続を困難とする事例が見受けられる。

一 岩手県教育委員会が制定した「懲戒に関する規程」には、懲戒処分の対象となる「性的問題行動」に「性的暴行」という犯罪行為と「妊娠」が並べられ、それに対する懲戒処分として「退学」が規定されていた。
 二〇一五年三月十二日の衆議院予算委員会においてこの件について指摘した泉健太衆議院議員に対し、下村文部科学大臣は「基本的には個別の事案ごとに各学校において判断すべきもの」としつつ、「本人に学業継続の意思がある場合においては、これは関係者で十分話し合い、母体保護の観点等も含め、教育的な指導は行い、懲戒的な対処は行わないという対応は十分考えるべきことである」と答弁している。
 しかし、本年六月、京都府立高校において妊娠中の女子生徒に対し、学校側が休学を勧め、卒業するためには体育の実技が必要だと説明していたという事案が明らかとなった。
 この京都府立高校の妊娠中の女子生徒に対する対応は適切であると考えるか、見解を明らかにされたい。

二 前記一の京都府立高校の事案は、自主退学の勧奨とも受け取られかねず、妊娠中の女子生徒が学業継続を望んでいた場合には、この京都府立高校の対応は不適切であったと考える。
 妊娠によって退学することになった者は、出産後十分な教育を受けられなかったことから、不安定な職業に就かざるを得ないケースが多く、貧困世帯となるリスクが非常に高まる。また、貧困の連鎖により、その子どもにも貧困が引き継がれてしまう恐れがあると思われる。
 現に、平成二十三年三月に行われた、内閣府子ども若者・子育て施策総合推進室の「若者の意識に関する調査(高等学校中途退学者の意識に関する調査)報告書(資料版)」では、「中退後、高卒の資格は必要だと考えたか」という質問に対し、「はい」と回答した妊娠・育児中の者の割合は、妊娠・育児中の中途退学者全体の八十一・三%に上っている。
 このような状況に鑑みると、自主退学の勧奨も含め、妊娠ゆえに学業の継続を断念せざるを得ないような状況の発生を極力防ぐべきではないか。
 そのためには、文部科学省から、①妊娠を懲戒の対象にすべきではないこと、②当事者が学業の継続を望む場合には、希望を尊重し可能な配慮を行うことという趣旨の通知等を発出し、同省の方針を明確に示すべきではないかと考えるが、見解を明らかにされたい。

三 妊娠・出産を直接・間接の原因とする進学の断念や退学については、このような進学の断念や退学に対応する前提として、正確な現状把握が十分になされることが必要と考える。ついては、このような進学の断念や退学についての調査や現状把握の実施状況を明らかにされたい。

四 出産による中途退学後、「学び直し」の機会を求め、幼い子どもを抱えながら通信制課程や定時制などで学び、高卒資格の取得を目指す者にとって、高校内に設置された託児施設は、学業を継続するための大きな支援になると考える。しかし、託児施設を設置している高校数は、二十年以上横ばいが続いている。
 若年妊娠者に対する学業継続支援という趣旨から、高校に託児施設を設置する取組に対して支援を行うべきではないか、政府の見解を明らかにされたい。

五 前記のように、十代の妊娠のほとんどが「予期せぬ・望まない」妊娠である。望まない妊娠を防止するために、学校における性教育は極めて重要であると考える。
 現在の性や妊娠に関する学校教育は、現在の若年妊娠の状況を反映した、危機管理の方法を教える内容になっているか。
 具体的には「望まない妊娠のリスクを下げるための対策」や「予期しない妊娠という現実に直面した場合取るべき対策」等は教えられているのか、明らかにされたい。

六 前記五の「予期しない妊娠という現実に直面した場合取るべき対策」として、先般成立した民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに係る児童の保護等に関する法律に基づく特別養子縁組についても、選択肢の一つとして提示されるべきと考えるが、見解を明らかにされたい。

  右質問する。