質問主意書

第192回国会(臨時会)

質問主意書


質問第六六号

国民年金法等の一部を改正する法律案のうち、年金額の改定ルールの見直しに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年十二月十四日

牧山 ひろえ   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   国民年金法等の一部を改正する法律案のうち、年金額の改定ルールの見直しに関する質問主意書

 「公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案」(第百九十回国会閣法第五四号。以下「今回の法案」という。)には、年金額の改定ルールの見直しとして、①マクロ経済スライドについて、年金の名目額が前年度を下回らない措置を維持しつつ、賃金・物価上昇の範囲内で前年度までの未調整分を含めて調整、②賃金変動が物価変動を下回る場合に賃金変動に合わせて年金額を改定する等の内容が含まれている。この年金額の改定ルールの見直しについて、以下の通り質問する。

一 平成十六年の公的年金制度の改正により保険料水準の上限が固定され、年金財政の収入の枠が決められている。マクロ経済スライドは、その収入の範囲内で給付を行うため、「現役世代の人数の変化」と「平均余命の伸びに伴う給付費の増加」に合わせて給付水準を自動的に調整する仕組みである。しかし、財政検証によって、マクロ経済スライドは基礎年金への影響が大きくなってきていることが明らかになっている。平成十六年と平成二十六年の財政検証の結果を比較すると、報酬比例部分はマクロ経済スライドの調整期間が短期化し、将来の給付水準も高くなっている一方、基礎年金部分は調整の終了が約二十年遅くなり、将来の給付水準も低くなっている。
 このように報酬比例部分と基礎年金部分に差が見られる理由は何か。

二 今回の法案でも、賃金変動が物価変動を上回る場合には年金額は改定されず、新規裁定者は賃金変動、既裁定者は物価変動をベースに年金額が改定される。一方、賃金変動が物価変動を下回る場合には、新規裁定者・既裁定者ともに賃金変動に合わせて年金額が改定されることとなる。
 保険料収入の増減は賃金変動に依存し、その収入の枠内で給付を賄わなければならないという点は理解できる。しかし、現行ルールでは、給付と負担のバランスに配慮しつつ、年金受給者の生活への影響も勘案して、様々な場合分けにより対処している。これを見直し、一律に賃金変動に合わせて年金額を改定するということは、現在の年金受給者の生活への影響を考える必要はないと認識しているのか。
 なお、平成二十四年の税と社会保障の一体改革において決まった年金生活者支援給付金は公的年金制度の枠外にある福祉的給付なので、これを理由に挙げることなく、公的年金制度の枠内での認識を伺う。

三 基礎年金を満額受給しても年金月額は約六万五千円にとどまり、基礎年金だけでは生活することができない現状にある。この現状に対して今回の法案による年金額の改定ルールの見直しは、年金制度、年金財政の持続可能性を重視する一方で、公的年金制度の最大の役割である最低保障機能をないがしろにするものであるとの批判がある。
 今回の法案の影響により、生活保護を受給する高齢者世帯が増加する可能性はないか。政府の認識を明らかにされたい。

  右質問する。