質問主意書

第192回国会(臨時会)

質問主意書


質問第五〇号

航空関連産業に係る政府予算と税制に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年十二月五日

石上 俊雄   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   航空関連産業に係る政府予算と税制に関する質問主意書

 我が国の航空関連産業は、人口減少や他の交通モードとの競争関係など様々な外部環境の変化や世界経済を含めた景気動向に大きな影響を受けやすい産業の一つである。特に、首都圏空港の発着容量拡大に伴うLCC(ローコストキャリア:格安航空会社)を含めた諸外国の航空会社の参入加速等により国際競争が一層激化しており、産業基盤の強化が急務となっている。
 また、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定し、訪日外国人旅行者数の増加に向けた各種政策が加速的に実施される中、航空関連産業が担う役割は拡大の一途であり、その発展・成長を確実にする施策の必要性がますます高まっている。
 そこで航空関連産業に係る政府予算と税制について、五つの観点(①航空機燃料税の軽減措置等、②航空保安体制の強化と適切な予算措置の実施等、③航空ネットワークの更なる充実に向けた環境整備等、④航空券連帯税の導入に関する問題性、⑤地球温暖化対策における公共交通機関への配慮と公平性の確保等)から、以下のとおり質問する。

一 航空機燃料税の軽減措置等について

1 航空機燃料税について
(1) 航空機燃料税は、空港の緊急な整備・拡充のために四十年以上前に設けられた税であり、空港が概成した現在、その役割は終了しており、また、海外ではほとんど例のない税である。国際競争が激化している中、海外航空会社との競争環境のイコールフッティングを確保する観点からも早急に廃止すべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
(2) 航空機燃料税の軽減措置について、平成二十九年度に関しては最低でも延長することが必要であると考える。また、中期的には空港経営改革等の進ちょくにあわせた段階的な引下げを行い、そして最終的には航空機燃料税を廃止すべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
(3) 空港経営改革等の推進により、今後は各空港の収支が独立し、航空機燃料税を含む自動車安全特別会計の空港整備勘定の歳出を削減することが可能と考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
2 航空機燃料譲与税について
 航空機燃料譲与税は、現在、空港関係の地方自治体へ交付され、航空機騒音対策等に充当されているが、その必要性と譲与総額・基準について精査した上で、空港経営改革等により捻出される空港毎の収益と併せて、航空機騒音対策等に係る財源の在り方を抜本的に見直す必要があると考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

二 航空保安体制の強化と適切な予算措置の実施等について

1 政府の観光立国政策の推進や、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックの開催等により、訪日外国人旅行者の急速な増大が見込まれることに加えて、過激派組織によるテロ活動の活発化等によりテロやハイジャックのリスクが格段に高まっており、航空保安に係る先進機器の導入等、航空保安体制の強化が必要と考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
2 航空保安体制の強化について、先進的な機器、例えばボディスキャナー等の導入時期前倒しや取得予算増額の方針、また、ボディスキャナー以外の先進的な機器の導入や導入費用の補助制度の範囲を拡大するという国土交通省の方針自体は評価できる。航空保安体制を強化するという目的を実現するためには、特に、先進的な機器の導入等に際して、初期費用だけでなく、維持費用等も補助対象とすべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
3 国家がテロの標的になる現在、テロやハイジャックへの対策は政府レベルの緊急課題であり、航空事業者任せの対応では限界がある。従って、航空保安に係る費用は、航空事業者の経営状態に影響を受ける可能性がある費用とは切り離して確保されるべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
4 航空保安に係る政府の責任と旅客・荷主の責任を法律上明確化するとともに、現在、航空事業者が半額負担している保安費用については、政府が一般財源によって全額負担すべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

三 航空ネットワークの更なる充実に向けた環境整備等について

1 現在の約二倍から三倍の訪日外国人旅行者を受け入れるためには、航空ネットワークの更なる充実が不可欠であり、既存ストックの有効活用等を前提に首都圏空港の容量拡大に取り組むべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
2 首都圏空港の容量拡大の実現に向けて、効率的な飛行経路の設定等が不可欠であり、地元住民への丁寧な説明と合意の上、首都圏の空域等を活用すべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
3 観光立国の実現や地方創生の観点から、首都圏以外の空港も最大限活用すべきであり、地方自治体が進める国内地方路線の維持・活性化に向けた取組みや、国際線の誘致に向けた取組みを、政府として支援すべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
4 訪日外国人旅行者の急増に対して、空港における各種施設等の受入体制が十分に整備されておらず、出入国手続きに時間を要していることや、これに伴い、現場で働く者の心身両面における負担が大きくなっていることから、特に、出入国手続き等の迅速化・円滑化や国際線施設の拡張・増強等、これらの諸課題に対する環境整備が早期に必要となっていると考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
5 前記三の1から4に加えて、空港アクセスの強化等、快適・円滑な移動のための環境整備にも政府は積極的に取り組むべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

四 航空券連帯税の導入に関する問題性について

1 外務省は、平成二十九年度税制改正要望で、「国際連帯税」の新設を要望し他国における「航空券連帯税」の導入実績を記載している。国際連帯の取組み自体を否定するものではないが、新たな財源の必要性、財源の使途等についての検討は、透明性を確保しつつ、様々な選択肢の中で広く行われるべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
2 国際連帯税は国際連帯の手段の一つであるにもかかわらず、現在、国際連帯税についてのみ議論が集中しており、国際連帯に関する国民や関係者による理解の促進や十分な議論・検討が進んでいないのではないかと考えるが、政府の見解及び国際連帯に関する国民や関係者の理解促進に向けた取組みを明らかにされたい。
3 国際連帯税の一形態である航空券連帯税については、そもそも受益と負担の関係が不明確であり導入に反対である。実際、航空券連帯税の導入について航空利用者の理解が得られなければ、我が国航空関連産業の健全な発達が阻害される懸念があると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
4 航空券連帯税について、訪日外国人旅行者数の増加を目指す観光立国実現の阻害要因になり得ると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

五 地球温暖化対策における公共交通機関への配慮と公平性の確保等について

1 航空関連産業が、二酸化炭素を排出せざるを得ない産業として地球温暖化防止対策に取り組むことは社会的責務であり、実際に、企業努力も含めて可能な限り取り組んでいると考えるが、政府の見解及び企業努力を促進させる取組みを明らかにされたい。
2 国内定期航空運送事業の用に供した航空機燃料に係る「地球温暖化対策のための税」については、国土交通省は、平成二十九年度税制改正要望で、還付措置を三年間延長するよう要望しているが、現時点で代替動力源が実用化されていない航空業の実情や、免税措置が講じられている諸外国の公共交通機関の実態等を踏まえると、恒久的免税とすべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

  右質問する。