質問主意書

第192回国会(臨時会)

質問主意書


質問第四三号

環境省による復興資金流用に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年十一月二十八日

山本 太郎   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   環境省による復興資金流用に関する質問主意書

 東日本大震災からの復興関連予算が適正に使われているか、メディアでも取り上げられている。これに関連して会計検査院は、平成二十三年度決算検査報告に続き、平成二十四年度決算検査報告と平成二十五年度決算検査報告において、それぞれ「東日本大震災により発生した災害廃棄物等の処理について」を報告している。
 そこで、復興資金によって予算立てされた環境省の災害廃棄物等(災害廃棄物と津波堆積物をいう。また、「災害がれき」や「がれき」と表現する場合もある。以下同じ。)の処理費が、適正に使われているかについて、会計検査院の両報告に沿って質問していきたい。

一 東日本大震災によって壊滅的な打撃を受けた被災三県(岩手県、宮城県、福島県をいう。以下同じ。)の復興等を掲げて、政府は平成二十七年度末までの五年間を集中復興期間とし、二十六・三兆円の財源を確保した。この復興資金は、被災地の復興や十万人を超える避難者への支援を願い、国民が期待していた育児のための手当の増額や高速道路の無料化などの政策を棚上げにし、なおかつ所得税を二十五年間にわたり二・一%、住民税を十年間にわたり年間千円、法人税を二年間にわたり十%増税する形で、捻出したものである。一円たりともずさんな使い方や他目的に流用されることがあってはならない。そこで、現在まで二十六・三兆円のうちどれだけが実際に予算化されたのか、その額と執行状況を年度ごとに報告していただきたい。また「東日本大震災により発生した災害廃棄物等の処理について」で検査対象とされた環境省の災害廃棄物等の処理費についても、予算額と執行状況を年度ごとに示していただきたい。

二 災害廃棄物等の処理費の予算は、災害廃棄物と津波堆積物の推計量と処理コストを乗じて積算する。そこで、国の予算における災害廃棄物等の処理費の予算立てにおいて環境省が、災害廃棄物等の量をどのように推計し、処理コストをどのように算定して処理費を積算してきたのかを明らかにしていただきたい。
 また、災害廃棄物等の処理費が、被災三県でそれぞれ、どれだけ使われてきたか、お答えいただきたい。
 併せて、岩手県、宮城県で発生した災害廃棄物等の合計量の二割は、広域処理すると計画され、予算化された。その際の推計量と処理コスト、処理費の予算額をそれぞれ示していただきたい。

三 災害廃棄物等の処理は、放射能汚染地帯を多く抱える福島県より、岩手県、宮城県で先に進められた。街中に散乱していた災害廃棄物等が一次集積所に集められ、処理をする二次集積所へと移されていくにしたがって、災害がれきの実数値が明らかになり、岩手県、宮城県共に、大幅にがれきの推計量が減ってきた。
 したがって大局的に考えると、岩手県と宮城県における災害廃棄物等の処理費の予算は、通常ならば減っていくはずである。災害廃棄物等の処理費の予算は年度を経るごとに減額されてきたのか、あるいは、年度を経るごとに増額されてきたのか、明らかにしていただきたい。
 もし、がれきの量が減っているのに処理費の予算が増額しているのであれば、論理的な矛盾があるが、見解を求める。

四 平成二十五年度決算検査報告の「東日本大震災により発生した災害廃棄物等の処理について」によると、表七及び表十にそれぞれ岩手県と宮城県の各市町村における「災害廃棄物等の処理に係る事業費等」についての一覧があり、市町村ごとの一トン当たりの事業費(処理コスト)が記載されている。
 それを見ると最小は一・九万円、最大は六・四万円と三倍以上の大きな開きがある。処理コストの大きな違いはどのような理由から生じたのか、原因を調査し、必要に応じて是正する必要はないのか、政府の見解を求める。

五 前記四で示した処理コストの計算は、市町村ごとの災害廃棄物等の処理にかかった事業費を、その市町村が処理した災害廃棄物等の量で割ったものでしかない。しかし、災害廃棄物等の処理については、市町村が処理したもの、県に委託して処理したもの、広域処理したものの三種類に分かれており、処理の態様に合わせて計算しなければ、予算執行上の問題がどこにあるのかは確認できない。実際、前記四で示した処理コストの違いについて詳細に検討すると、もっと大きな開きがあることが分かっている。
 そこで、前記四で指摘した表七及び表十に示された市町村ごとに、「市町村で処理したものの処理コスト」、「県に委託したものの処理コスト」、「広域処理を行ったものの処理コスト」を、災害廃棄物と津波堆積物に分けて政府として集計し、その結果を示していただきたい。

六 広域処理する災害廃棄物等について、災害廃棄物等の量を最初に推計した段階で宮城県発が三百四十四万トン、岩手県発が五十七万トン、合計四百一万トンと発表されたが、最終的には両県発の災害廃棄物等は、それぞれ何万トンが広域処理されたのか示していただきたい。
 環境省は、両県発の災害廃棄物等について、メディアに対しては「広域処理」六十万トンと発表している。この環境省が発表した広域処理六十万トンの中には、予算上は、岩手県、宮城県それぞれの県内で処理すると計画され、その後、下請け業者が県外に持ち出したもの(いわゆる「県外処理」)も含まれているのか明らかにしていただきたい。
 広域処理を行う名目で予算に計上されたことを考慮すると、災害廃棄物等の量を最初に推計しそれに基づいて積算した予算に計上された広域処理が、実際どれだけ行われたのかが報告されるべきであり、それが両県による県内処理で予算執行されたものまで広域処理に含まれて報告されているとしたら、実態を覆い隠すだけであり、許されないと考えるが、これについての見解を求める。

七 今回の災害廃棄物等の処理費の総額は、平成二十四年度決算検査報告の「東日本大震災により発生した災害廃棄物等の処理について」では、平成二十三、二十四両年度で一兆千九百三十四億円になったとされているが、平成二十四年三月の時点では、環境省は一兆七百億円と答えていた。
 災害廃棄物等の処理量は、当初の推計量から大幅に減り、前記六のとおり、岩手県と宮城県発の広域処理は、当初四百一万トンとされていたのが、「県外処理」というくくりでさえ六十万トンにまで減少し、その場合の実施率は十五%でしかない。
 つまり、災害廃棄物等の量の推計値が、測定のたびに下方修正され、がれきの広域処理も、最終的には八十五%以上は実施されなかったということになる。
 広域処理の費用が予算化されたものの実施されなかったのであれば、予算上は多くの余剰が出ているはずである。仮に多くの余剰が出ていないとすれば、想定される理由として、①処理コストが高くなり、処理量の削減により浮いた予算が吸収されてしまった、②全国の地方公共団体の一般廃棄物処理施設の整備費などとして交付した、ということが考えられるが、いずれの理由であるのか、それ以外にも理由があるのか、示していただきたい。
 また、がれきの広域処理を行う名目で計上された予算額と、実際に広域処理のため使用された金額をそれぞれ示すとともに、残余の金額がどのように使われたのか、また基金等として残っているのかについても示していただきたい。

八 災害廃棄物等の処理費を、全国の地方公共団体の一般廃棄物処理施設整備事業に補助する循環型社会形成推進交付金(復旧・復興枠)として支給している件について、お伺いする。環境省がこの支給の根拠としているのは、「循環型社会形成推進交付金復旧・復興枠の交付方針について」(平成二十四年三月十五日環廃対発第一二〇三一五〇〇一号)という通知であるが、この通知は、同交付金(復旧・復興枠)は、①基本的には東日本大震災で被災し、自助努力によっては一般廃棄物処理施設の整備をすることができない地方公共団体を支給対象と想定し、②災害がれきの受け入れに当たって、既存の一般廃棄物処理施設を補修すれば受け入れが可能になる地方公共団体も対象とすることを示した通知であると解釈出来るが、それでよいか、見解を求める。

九 ところが実態としては、前記八の②については、災害がれきを一トンも受け入れていないのに循環型社会形成推進交付金(復旧・復興枠)の対象となっている事例や、元々災害廃棄物等の受け入れが不可能な施設であっても同交付金(復旧・復興枠)の対象となっている事例がある。
 平成二十四年度決算検査報告の「東日本大震災により発生した災害廃棄物等の処理について」に、表十二「15事業主体の施設整備事業の概要」が示されている。その表に沿って以下、質問する。

1 その表の「受入れを行っていた5事業主体」のうち、「富山県 高岡地区広域圏事務組合」、「静岡県 静岡市」、「福岡県 北九州市」は、いずれも交付対象施設の整備完了時期が、がれきの「受入実施年月」の後になっている。交付対象施設が整備され、その施設でがれきの受け入れを行うという建前で、循環型社会形成推進交付金(復旧・復興枠)を支給しながら、その施設の整備完了前に、がれきの受け入れが終わっていることになっており、これは明らかに矛盾した記載ではないか、政府の見解を求める。
 また、同交付金(復旧・復興枠)の交付対象施設の整備完了前にがれきの受け入れが終わっている地方公共団体に同交付金(復旧・復興枠)を支給することについて、法令上の根拠とともに、支給の妥当性を示していただきたい。
2 前記九の1に関し、高岡地区広域圏事務組合では、交付対象施設が「高効率ごみ発電施設」、その整備完了時期が平成二十六年九月、がれきの受入実施年月が平成二十五年四月から八月と記載されている。
 高効率ごみ発電施設の整備完了時期が平成二十六年九月であるのに、その施設で平成二十五年にがれきを受け入れたというのは、誰が考えても矛盾した記載であるが、政府の見解を求める。
 この高岡地区広域圏事務組合は、高岡市、氷見市、小矢部市の三市で構成する一般廃棄物の中間処理を担う特別地方公共団体である。高効率ごみ発電施設は、高岡地区広域圏事務組合として初めて整備する施設であり、これ以前にがれきの受け入れ可能な施設は保有していない。
 環境省は、高岡地区広域圏事務組合の構成市の一つである高岡市が同市の焼却施設でがれきを受け入れたと述べているが、高岡市と高岡地区広域圏事務組合は、もちろん別の地方公共団体であり、これを混同して取り扱うことができないのは、地方自治法上のイロハである。高岡市ががれきを受け入れたとしても高岡地区広域圏事務組合ががれきを受け入れたことにはならないのではないか、見解を求める。
 さらに、高岡地区広域圏事務組合ががれきを受け入れた時期として平成二十五年四月から八月との記載があるが、富山県と同様に、岩手県山田町と大槌町のがれきを受け入れることになっていた静岡県は、平成二十四年十一月の再調査により広域処理を予定していた山田町と大槌町のがれきの量が減ったため、平成二十五年三月に受け入れを終了した。
 このように山田町と大槌町のがれきは広域処理の必要性がないとして静岡県は受け入れを終了していたのに、なぜそれより遅い時期に富山県にがれきを運んできたのか、その理由を明らかにしていただきたい。
 しかも、平成二十五年四月から八月に富山県に運ばれてきたがれきは、当初予定していた約一万トンの十分の一にも満たなかった。さらに平成二十五年三月末までに、高岡地区広域圏事務組合に対し、がれきの受け入れを理由とする循環型社会形成推進交付金(復旧・復興枠)が支給されていた。
 高岡地区広域圏事務組合は、同交付金(復旧・復興枠)を受け取っていたために、あえて広域処理する必要がないがれきを受け入れた形にし、実際には高岡市ががれきを受け入れていたのではないか。事実関係を明らかにしていただきたい。
 まるでアリバイ作りのように実施された高岡市へのがれき受け入れ(五百トン)を口実にして、平成二十四年、平成二十五年に復興資金から約六十億円もの同交付金(復旧・復興枠)が支給されたということは、一トン当たり一千万円ものコストをかけているということである。
 これはどこから見ても、災害廃棄物等処理と関係ない地方公共団体の一般廃棄物処理施設整備事業への復興資金の流用ではないか、政府の見解を求める。
3 前記九の1に関し、「静岡県 静岡市」に対しては、「ストックヤード」の建設、「福岡県 北九州市」に対しては、「既設焼却施設」の改良事業にそれぞれ循環型社会形成推進交付金(復旧・復興枠)が支給されている。静岡市は、施設の整備完了は平成二十五年二月であるにもかかわらず、がれきの受け入れは、平成二十四年十月から平成二十五年二月であり、明らかにストックヤードの建設は、がれきの受け入れには関係していない。
 また北九州市の場合は、施設の整備完了は平成二十九年三月であり、がれきの受け入れは、平成二十四年九月から平成二十五年三月である。高岡地区広域圏事務組合と同様に、施設の整備完了前に、がれきの受け入れが終わっている。
 これらはまるで、静岡市や北九州市ががれきを受け入れたことへの「お礼」として復興資金から一般廃棄物処理施設整備費を支給したように見えるが、政府の見解を求める。
 そもそもがれきを受け入れた地方公共団体の一般廃棄物処理施設などの整備費に復興資金を使ってよいとする法令上の根拠はどこにあるのか、示していただきたい。
 また、同交付金(復旧・復興枠)については、事業費全体の二分の一を同交付金(復旧・復興枠)で措置し、残りをすべて震災復興特別交付税で措置する方式をとっており、これらすべてが復興資金から支給される。
 したがって、総務省管轄の震災復興特別交付税(同交付金(復旧・復興枠)の支給に伴う震災復興特別交付税の支給は、環境省が同交付金(復旧・復興枠)を支給すれば、震災復興特別交付税は事務的に支給される仕組みとなっているため、これも実質同じ枠の問題と考えてよい)も合わせて、復興資金からこれら地方公共団体の一般廃棄物処理施設の整備事業にどれだけの資金が支給されたかを見ないと、復興資金の流用の実態を明確にすることができないと考えられる。その意味で、平成二十四年度決算検査報告の「東日本大震災により発生した災害廃棄物等の処理について」の表十二で取り上げられている十五事業主体ごとに復興資金から同交付金(復旧・復興枠)、震災復興特別交付税の総額でどれだけ使われているか示していただきたい。
4 次に表十二の「受入れに至らなかった10事業主体」に関連してお伺いしたい。
 がれきの受け入れを行っていない地方公共団体に対する循環型社会形成推進交付金(復旧・復興枠)支給の法令上の根拠を伺うとともに、十事業主体のそれぞれのケースについて、なぜがれきを受け入れていないのに同交付金(復旧・復興枠)を支給することとしたのか、その理由を明らかにしていただきたい。
5 次に十事業主体のうち「大阪府 堺市」、「東京都 ふじみ衛生組合」、「東京都 西秋川衛生組合」について、事実関係を分かっている範囲で示しつつ、改めて循環型社会形成推進交付金(復旧・復興枠)を支給することとした理由をお伺いする。
 環境省は、平成二十三年夏から秋にかけて、がれきの受け入れの可能性を問う質問書を全国の都道府県を通じ、市町村に投げかけた。この質問に対して、例えば東京都は、「東京都全体で約五十万トン」と答えたが、これは東京都自身が言うように、市町村の一般廃棄物処理施設のうち稼働していない施設を稼働した場合に処理が可能となるトン数を発表しているにすぎない。ほかの道府県も同様である。
 これを環境省は「災害廃棄物の受け入れが可能となる施設」と表現した。しかしこの言い方は極めてあいまいである。
 当然、市町村では設備的に処理が可能であっても、がれきの受け入れを認めていないところもあり、このような環境省の表現では実態が極めてあいまいになる。
 したがってこの環境省からの質問に答えていることをもって、がれきの受け入れの検討に入ったとするのは明らかに間違いであると考えるが、政府の見解を求める。
6 堺市の場合については、循環型社会形成推進交付金(復旧・復興枠)から約四十億円が支給され、震災復興特別交付税を含めると約八十六億円もの金額が復興資金から支給されているが、次のような問題もある。
 環境省が平成二十三年十月に行った同交付金の所要額の調査に対して、当初堺市は、復興資金を使わない同交付金(通常枠)を希望していた。
 同交付金の趣旨に鑑みると堺市のこの回答は、地方公共団体として適切な回答と考えられる。堺市は、がれきを一トンも受け入れておらず、また受け入れると表明したこともないからである。
 何度か行われた環境省による同調査に対しても、堺市は同様に答えていたが、最終的には平成二十四年四月に環境省が、同交付金(復興・復旧枠)での内示を決め、堺市に同交付金(復旧・復興枠)での再申請を行うように指示した。
 本来、一般廃棄物の処理については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)第六条及び第六条の二で、市町村が一般廃棄物処理基本計画を作り、その基本計画に基づき市町村が廃棄物処理事業を行うことが定められているように、市町村固有の義務である。
 したがって、この一般廃棄物処理施設の整備に当たって、国に補助金を請求する主体は市町村であり、この補助金の請求やその内容を環境省が指示し、それに従わせるべきものではない。
 また、復興資金は、被災地の復興のための資金であり、これをみだりに流用することは許されない。
 堺市の一般廃棄物処理施設の整備費に八十六億円も復興資金から支給することは、①市町村が同交付金(通常枠)での申請をしている点を無視し、環境省の方針に従わせるという、廃棄物処理法第六条及び第六条の二に定められた市町村の自治権を侵す違法行為である(国の指示のもとに補助金の内容を決めるなどは前代未聞の対応)とともに、②東日本大震災復興基本法や関連諸法に定められた復興資金の使途に反する違法行為であり、堺市の場合、一トンすらがれきの受け入れを行わず、また受け入れ表明もしていないことから、前記八の環境省通知にすら違反し、③以上から補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律にも違反すると考えられる。
 この①から③について見解を求める。
7 一トンもがれきを受け入れていないのに循環型社会形成推進交付金(復旧・復興枠)の支給を受けた地方公共団体の議会から復興資金を原資にした同交付金(復旧・復興枠)の支給を受けることについて疑問が出された地方公共団体の当局が、同交付金(復旧・復興枠)を断れば、資金的に余裕があるとみなされ、同交付金(通常枠)ももらえなくなると環境省に指導されたと回答したという話が報告されている。これは、前記九の6において示した堺市の事例のような法律上の問題があること、環境省が過大な推計量や架空の広域処理量をベースに復興資金を予算立てしたことを合わせて考えると、個別の事例における法律違反の問題だけでなく、環境省が過大に予算立てした災害廃棄物等処理費により復興資金をいわば無理やり使うための処置として、地方公共団体の一般廃棄物処理施設の整備費などに復興資金を流用していたという疑念が起きる。この点について政府の見解を求める。
 このように、復興資金を充てるべきではない地方公共団体の一般廃棄物処理施設の整備費に復興資金が充てられていることについて、会計処理上流用には当たらないと考えているのか、政府の見解を求める。
8 次に、宮城県発のがれきについての架空計上問題についてお伺いする。
 ふじみ衛生組合や西秋川衛生組合は、東京都下の一部事務組合であり、ここには宮城県からがれきを持ってくる予定になっていた。
 宮城県発のがれきの広域処理は三百四十四万トンを予定していた。そのうち石巻ブロック(石巻市、女川町、東松島市)からは、二百九十四万トンを予定していた。がれきの処理は、被災市町村が処理できない分は当該被災市町村のある県に事務委託し、当該県で処理できない分は、広域処理するというルールの下に行われてきた。
 ところが、当の石巻ブロックのがれき総発生量八百二十六万トンのうち宮城県が事務委託を受けたのは六百八十五万トンであったが、その全量の処理について、宮城県は平成二十三年九月に、鹿島建設株式会社を筆頭とする特定共同企業体(以下「鹿島JV」という。)と千九百二十三億円で委託契約を結んだ。したがって石巻ブロックからは、一トンも広域処理するがれきは出なかった。
 環境省が発表した石巻ブロック発の広域処理するがれき二百九十四万トンは、県内処理と二重になり、架空計上になっていた。
 このため、宮城県発のがれきを受け入れることとしていたふじみ衛生組合や西秋川衛生組合の計画は、前提が崩れることとなった。
 架空計上した環境省は、元々広域処理するがれきがないことを知りながら、他の地方公共団体から広域処理を受け入れることの承諾をとり、その後、がれきを広域処理する必要がなくなったため、がれきを受け入れる必要はないと、地方公共団体に通知した。そして、一度はがれきを受け入れる準備をしてもらったので、実際には受け入れを行わなくとも、循環型社会形成推進交付金(復旧・復興枠)を支給することとしたのである。
 これはありていに言えば、復興資金を全国の地方公共団体の一般廃棄物処理施設の整備に充てるための詐欺行為のような仕掛けである。その意味で、前記八の環境省通知の要件への適合以前の問題である。また、この問題は、石巻ブロックからがれきを運ぶ予定だった全国の地方公共団体でも起こっていた可能性の高い問題である。
 この架空計上問題について、宮城県発のがれきの広域処理計画の大半に当たる石巻ブロックからのがれきは、環境省が広域処理計画を発表した時には、既に宮城県と鹿島JVは委託契約を締結していたこと、その意味で、環境省が発表した広域処理計画は宮城県の県内処理と二重計上となり架空計上になっていたこと、宮城県発の広域処理予定量は、当初予定していた三百四十四万トンから石巻ブロック発のがれき二百九十四万トンの架空計上を除いた五十万トンしかなかったことについて、それぞれ事実関係を明らかにしていただくとともに、政府の見解を求める。
9 石巻ブロックから県外に運ぶはずのがれきが一トンもなかったにもかかわらず、実際にがれきを運んで処理したのが東京都と北九州市である。
 東京都は、女川町から独自にがれきを供給してもらいそれを処理している。つまり女川町が独自に処理するつもりのがれきを、わざわざお願いして供給してもらったのである。この事実に間違いはないか、見解を求める。また、そのような東京都の行為は、がれきの広域処理のルールに違反している。この点について見解を求める。
 また北九州市の場合、宮城県から依頼され、石巻ブロックからがれきを運んで処理した。
 しかし前記九の8で述べたように宮城県が石巻ブロックから処理を委託されたがれきは、宮城県が鹿島JVに処理を委託していたため、鹿島JVに委託済みのがれきを北九州市に運べば、当然二重契約行為になり違法行為になる。
 そこで考えたのが、鹿島JVと再契約し、鹿島JVと契約していないがれきを作り出し、それを北九州市などに持っていくようにしたのである。平成二十四年九月、宮城県はがれきの再測量の結果、石巻ブロックから処理の委託を受けたがれきの量が大幅に下方修正されたことを理由に、鹿島JVと再契約を結ぶと発表し、議会に提案した。
 がれきの量の推定は測量を専門にする事業者がかかわり、測定・予測している。測定・予測に数%の誤差があったとしても、何割にも上る誤差は、通常は考えられない。しかし宮城県は、再測量により石巻ブロックから処理を委託されたがれきの量が当初の六百八十五万トンから三百七十五万トンも減り、三百十万トンになり、実に元の量の四十五%になったとしている。
 この契約変更に伴い、契約金額は千九百二十三億円から千四百八十二億円に減ったが、一トン当たりのコストは、逆に二・八万円から四・九万円へ跳ね上がっている。再契約の結果コストが大幅に跳ね上がるのは見逃せず、また当初から正確に測っていれば、元のコストから算出すると約八百六十八億円にしかならないため、架空計上や適当な測量による損失は、約六百億円に上ることになる。
 また再契約の過程で有価物として計上できるチップ材百万トンがなくなっていた。虚偽の架空計上による過大な推計量をベースとした契約によって、不必要な設備投資を行い、契約変更で過大な損失が発生した。
 以上の北九州市の事案について、個々の事実関係を明らかにしていただきたい。特に、宮城県発の広域処理について大半が架空計上となり、これを繕うために石巻ブロック発のがれきの処理契約を変更したこと、この契約変更により多額の損失を出したことについて事実関係を明らかにしていただくとともに、見解を求める。その上で、石巻ブロックから宮城県に処理を委託されたがれきが、元の量の四十五%になった事実に対する見解を求める。
10 前記九の9の再契約によって、宮城県は石巻ブロックから広域処理するためのがれきを捻出したが、元々宮城県内で処理プラントを設けて処理するとしていたものを、わざわざ再契約騒ぎの中で、北九州市に運んだものであり、これは、県内処理できないものを広域処理するルールとは相いれない無理筋の措置である。この点を政府はどう考えるのか、見解を求める。
 しかも、当初の契約ではがれき処理経費だけであり、処理コストは一トン当たり約二・八万円だったものが、わざわざ北九州市に運んだことにより運賃がかかり、約二倍近くの経費がかかったと想定されるが、実際にかかった経費について、事業経費とがれきの処理数量、一トン当たりのコストをそれぞれ示していただきたい。
 いずれにせよ、安い契約から高い契約に切り替えたことになる。これらすべてを復興資金から出していることを考えると、違法かつ大変な無駄遣いが行われたことになるのではないか、見解を求める。

十 平成二十四年度決算検査報告の「東日本大震災により発生した災害廃棄物等の処理について」の「本院の所見」についてお伺いする。

1 「本院の所見」の中の「(3)広域処理の状況及び広域処理に係る循環型社会形成推進交付金の交付状況」では「広域処理に係る災害廃棄物の受入可能施設等に対する復旧・復興予算からの循環型社会形成推進交付金の交付は、事業主体において広域処理に係る検討が十分に行われていなかったり、同交付金の交付対象施設において災害廃棄物を受け入れていなかったり、復旧・復興予算からの交付を自ら要望していない事業主体が含まれていたりなどしており、広域処理の推進のために十分な効果を発揮したのかについては、客観的に確認できない状況となっていた。」と記載されている。
 つまり、これまでの質問、とりわけ前記八と九において述べた詳細な事実について、「本院の所見」でも事実として認められているが、政府の見解を求める。
 また「本院の所見」で「十分な効果を発揮したのかについては、客観的に確認できない」とまとめられていることについて見解を求める。
2 次に「本院の所見」では、「したがって、環境省においては、同交付金の交付が広域処理の推進のために十分な効果を発揮したのか交付方針の内容も含めて検証するとともに、その検証結果を今後の復興関連事業の実施に当たって活用する必要があると認められる」と結んでいる。
 しかし今回の災害廃棄物等の処理費用は総額一兆数千億円になり、この広域処理の関係だけでも数千億円になると考えられる。
 これまでの質問を通して指摘したように、復興資金がずさんな使い方をされており、そのような使い方をされた循環型社会形成推進交付金(復旧・復興枠)とこれに関連する震災復興特別交付税の国への返還措置を含め、復興資金が適正に使われるよう取り組むことを求めるものであるが、政府の見解を求める。

  右質問する。