質問主意書

第192回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一四号

いわゆる「強行採決」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年十月二十七日

山本 太郎   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   いわゆる「強行採決」に関する質問主意書

 平成二十七年九月二十四日に提出した「安保特別委における採決に関する質問主意書」(第百八十九回国会質問第三一六号)で、私は平成二十七年九月十七日の、参議院我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会における、我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案(閣法第七二号)及び国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案(閣法第七三号)の採決(以下「安保法案採決」という。)に関する政府の認識を質したが、政府はその全ての質問に対して答弁書(内閣参質一八九第三一六号。以下「政府答弁書」という。)で「お尋ねについては、国会の運営に関することであり、政府としてお答えする立場にはない。」とし、行政府として立法府たる国会の運営、議事進行については干渉しないとの立場を示した。
 しかしながら昨今、安倍首相をはじめ山本農林水産大臣といった安倍内閣の閣僚から、環太平洋パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件(第百九十回国会閣条第八号)及び環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案(第百九十回閣法第四七号。以下「TPP関連議案」という。)が衆議院環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会(以下「衆議院TPP特別委員会」という。)において審査中であるにもかかわらず、TPP関連議案の今国会会期内での成立を求める発言、さらには具体的に「強行採決」との言葉を用いて衆議院TPP特別委員会における審査に干渉する発言が相次いでいる。
 すなわちこれらの閣僚による発言は、行政府による立法府に対する、TPP関連議案の採決の時期、期限や態様等といった議事進行に著しく影響を及ぼしかねない干渉であり、政府答弁書によって示された政府の立場とは明らかに矛盾するものである。
 以上を踏まえて、いわゆる「強行採決」に関して、安倍内閣としていかなる認識を持っているのかを確認すべく、以下質問する。

一 安倍首相は平成二十八年十月十七日の衆議院TPP特別委員会(以下「十月十七日TPP特委」という。)において「我が党において、今まで結党以来、強行採決をしようと考えたことはない」と答弁し、また山本農林水産大臣は翌日開かれた佐藤勉衆議院議院運営委員長のパーティーの席上「強行採決するかどうかは、この佐藤氏が決める」といった発言をした。安倍首相及び山本農林水産大臣は、TPP関連議案の審査に関連して具体的に「強行採決」との言葉を用いて各々の見解を述べていることから、「強行採決」という採決の態様について一定の見解すなわち定義を有しているものと考える。辞書等をはじめ一般に「強行採決」とは「与野党による採決の合意を得ずに、委員長や議長の職権の下で突発的に行なう採決」もしくは「国会などで、少数派が審議の継続を求めているにもかかわらず、多数派が一方的に審議を打ち切り、採決を行うこと」と認識されているが、安倍内閣における「強行採決」に対する認識もこれらと同様か、明確に示されたい。これらと異なる場合、安倍内閣において「強行採決」とはいかなる態様の採決のことを指すと認識しているのか、その定義を明確に示されたい。

二 安倍首相は平成二十七年七月十一日、視察先の宮城県で、衆議院我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会での安保法案採決の時期について「対案も出てきた中にあって、しっかりと議論を進めていただきたい(略)いずれにいたしましても、決めるべき時には決めるということ」と述べた。また十月十七日TPP特委においては、TPP関連議案の採決に関して「限られた会期の中で(略)議論が定まってくる、あるいは熟してきた段階においては、御採決いただきたいというのが政府の立場」と答弁した。採決の時期及び期限に言及する安倍首相の発言は、立法府たる国会の運営、議事進行に対する行政府の長からの干渉に他ならず、「国会の運営に関することであり、政府としてお答えする立場にはない。」とし、行政府として立法府たる国会の運営、議事進行については干渉しないとの立場を示した政府答弁書と明らかに矛盾しているが、これらの安倍首相の発言は政府答弁書との整合性に鑑みて適切であったか、安倍内閣の認識を明確に示されたい。

三 前記一及び二に関して、安保法案採決は「与野党による採決の合意を得ずに、委員長や議長の職権の下で突発的に行なう採決」もしくは「少数派が審議の継続を求めているにもかかわらず、多数派が一方的に審議を打ち切り、採決を行うこと」に該当するもの、すなわち「強行採決」であると一般に認識されているところであるが、安倍内閣の認識も同様か、明確に示されたい。異なる場合、その理由を明確かつ詳らかに示されたい。
 なお前記二に対して、行政府の長である安倍首相による立法府たる国会の運営、議事進行に干渉する発言を適切であると答弁する一方で、本質問三に対して「国会の運営に関することであり、政府としてお答えする立場にはない。」と答弁することは、これまでに示したように明らかに矛盾するため、答弁に当たってはその整合性に十分留意されたい。

四 第二次安倍内閣発足以降、衆参両議院の各委員会(特別委員会を含む)及び本会議において「与野党による採決の合意を得ずに、委員長や議長の職権の下で突発的に行なう採決」もしくは「少数派が審議の継続を求めているにもかかわらず、多数派が一方的に審議を打ち切り、採決を行うこと」に該当したと安倍内閣が認識している採決を、網羅的かつ具体的に列挙し示されたい。

  右質問する。