質問主意書

第192回国会(臨時会)

質問主意書


質問第九号

国際人道法違反が続く宮古島への自衛隊配備に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年十月十三日

伊波 洋一   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   国際人道法違反が続く宮古島への自衛隊配備に関する質問主意書

 本年八月三日に私が提出した「国際人道法違反の宮古島への自衛隊配備に関する質問主意書」(第百九十一回国会質問第六号)に対する答弁書(内閣参質一九一第六号。以下「前回答弁書」という。)によって、平成二十八年八月三日時点において、宮古島市が避難実施要領のパターンを作成していないことが明らかになったことを踏まえ、以下更に質問する。

一 前回答弁書一についてでは、「平成二十二年五月及び平成二十七年十一月には、都道府県を通じて、市町村に対し避難実施要領のパターンを作成するよう通知を発出している」とあるが、現在、宮古島市のように同パターンを作成していない市町村名の一覧を示されたい。なおその中に、与那国町、石垣市、奄美市、東村が含まれているかどうかも重ねて示されたい。

二 宮古島市が避難実施要領のパターンを作成していないことについて、宮古島市の行政的な懈怠や力量不足、県や国の協力不足、あるいは、島嶼部に対する過大要求、即ち同パターン作成は市町村レベルではもともと困難であったということなど、同パターンの作成の障害となっている原因についての政府の認識を示されたい。

三 前回答弁書二についてで、「お尋ねの意味するところが必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難である」とされた「島外避難への備え」に関して、「宮古島市国民保護計画」(平成二十年三月宮古島市)三十三頁によると、「島外避難における備え」として、「市は、住民の島外避難について、国〔内閣官房、国土交通省〕から示された「離島の住民の避難に係る運送事業者の航空機や船舶の使用等についての基本的な考え方」(平成十七年十二月十九日閣副安危第四百九十八号内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)付内閣参事官(事態法制企画担当)通知、国政調第百六十九号国土交通省政策統括官付政策調整官(危機管理担当)通知)を踏まえ、可能な限り全住民の避難を視野に入れた体制を整備するものとする。この場合において、市は、県及び指定地方公共機関との連携協力に努めるとともに、以下に掲げる情報を把握するものとする。【全住民の避難を想定した場合に把握しておくべき情報】①島の全住民を避難させた場合に必要となる輸送手段②想定される避難先までの輸送経路③島外からの輸送手段を受け入れる場合の受入体制④島内にある港湾、空港等までの輸送体制など」とある。この①から④に関して、宮古島市が把握している情報の存否を確認した上、その内容を示されたい。

四 前回答弁書三についてでは、「避難実施要領は、武力攻撃事態等の認定前にあらかじめ策定されるものではないことから、「政府の評価」等をお示しすることは困難である」とあるが、武力攻撃事態等の認定後速やかに避難実施要領を策定するためには、事前に避難実施要領のパターンの作成を終えていなければならない。つまり、同パターンが存在しない限り避難実施要領の速やかな策定は困難である。政府は、同パターンを作成していない現在の宮古島市が武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(以下「国民保護法」という。)に適合しているとの判断なのか、政府の評価を示されたい。

五 前記四で示した宮古島市の国民保護法不適合状態は政府に責任があり、国際人道法(ジュネーヴ諸条約等)の国内実施を不確実にするとともに、国際人道法への不適合状態も招いている。政府自らの国際法遵法評価を示されたい。

六 宮古島市長は、今後、防衛省から提出される具体的な宮古島陸自配備計画に関して、関係法令への適合を確認した上で承認するとしているが、この関係法令の一つである、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施することを目的とした国民保護法との適合性確認は、有事の初動部隊が配備される宮古島市として必要と考えるか否か、政府の見解を示されたい。

七 今後予定される宮古島陸自配備計画が関係法令に適合しているか確認する際には、国民保護法との適合性確認が不可欠である。このため、政府はどのように宮古島市を指導するのか、その手順を示されたい。

八 前記六において関係法令の一つとした国民保護法の第三条(国、地方公共団体等の責務)には、「国は、国民の安全を確保するため、武力攻撃事態等に備えて、あらかじめ、国民の保護のための措置の実施に関する基本的な方針を定めるとともに、武力攻撃事態等においては、その組織及び機能のすべてを挙げて自ら国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施し、又は地方公共団体及び指定公共機関が実施する国民の保護のための措置を的確かつ迅速に支援し、並びに国民の保護のための措置に関し国費による適切な措置を講ずること等により、国全体として万全の態勢を整備する責務を有する。」とあるが、宮古島への陸自配備の際の関係法令との適合性確認は、前記の「国の責務」を速やかに果たすことなくして困難と考えるが、今後、この国の責務をどのように果たすのか、具体的な方策を示されたい。

九 前回答弁書において、宮古島市が避難実施要領のパターンを作成していないことが明らかになったことで、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施することを目的とした国民保護法の実効性は担保されていないことが分かった。一方、宮古島に対艦ミサイル等を重点配備するという防衛省平成二十九年度概算要求の事前情報が国際報道された直後、本年八月十五日の環球時報電子版は、武装した宮古島は中国軍の軍事目標となると報道している。国際法上、配備予定地も軍事目標となりうることから、宮古島市、石垣市、奄美市、与那国町などの陸自配備予定地も、国際法上の軍事目標となりうる。国際人道法の国内実施を確実にするため制定した国民保護法が機能していない現在、宮古島への陸自配備計画を一時撤回して宮古島に住む国民の生命と財産を守ることが緊急の課題と考えるが、政府の見解を示されたい。

  右質問する。