質問主意書

第191回国会(臨時会)

答弁書


答弁書第一四号

内閣参質一九一第一四号
  平成二十八年八月十五日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員石上俊雄君提出我が国が直面するエネルギー問題への対応に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員石上俊雄君提出我が国が直面するエネルギー問題への対応に関する質問に対する答弁書

一の1について

 原子力発電所の再稼働については、「エネルギー基本計画」(平成二十六年四月十一日閣議決定)に記載されているとおり、「いかなる事情よりも安全性を全てに優先させ、国民の懸念の解消に全力を挙げる前提の下、原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める。その際、国も前面に立ち、立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう、取り組む」という方針である。政府としては、同計画に基づき、適切に対応しているところである。

一の2について

 先の答弁書(平成二十七年七月二十一日内閣参質一八九第二○五号。以下「前回答弁書」という。)一の2についてでお答えしたことに加え、更なる取組として、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)及び同法の規定に基づく原子力規制委員会規則等に定める基準に係る適合性審査(以下「適合性審査」という。)において確認すべき事項として、先行して行われた他の発電用原子炉に係る適合性審査において明らかになった論点を整理し、公開している。こうした取組により、発電用原子炉設置者は、審査の準備を効率的に実施することができると考えている。

一の3について

 前回答弁書二の1についてでお答えしたとおり、原子力発電所の廃止措置及び運転に伴い発生する放射性廃棄物(以下「廃炉等廃棄物」という。)については、第二種廃棄物埋設施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則(平成二十五年原子力規制委員会規則第三十号)等において、余裕深度処分(核燃料物質又は核燃料物質によつて汚染された物の第二種廃棄物埋設の事業に関する規則(昭和六十三年総理府令第一号)第一条の二第二項第三号に規定する余裕深度処分をいう。以下同じ。)に係る規定を更に整備する必要があると認識している。このため、原子力規制委員会において、余裕深度処分を要する廃炉等廃棄物の埋設に関する基準について、平成二十七年一月からその技術的内容を検討しており、当該基準を取りまとめる前の段階として、余裕深度処分に係る規制の考え方を取りまとめ、平成二十八年五月から六月にかけて意見募集を実施したところである。

一の4について

 高レベル放射性廃棄物の最終処分については、原子力発電環境整備機構において、特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(平成十二年法律第百十七号)に基づく文献調査を行うために、平成十四年以降、文献調査の対象地域に係る公募を全国の自治体に対して実施しているが、現時点において、文献調査の実施には至っていない。このような事情を踏まえ、最終処分に向けた取組の見直しに関する具体的な検討を進め、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針」(平成二十七年五月二十二日閣議決定。以下「基本方針」という。)を定めた。
 基本方針においては、高レベル放射性廃棄物の最終処分について、「将来世代に負担を先送りしないよう、その対策を確実に進める」とするとともに、「国は、安全性の確保を重視した選定が重要であるという認識に基づき、科学的により適性が高いと考えられる地域(科学的有望地)を示すこと等を通じ、国民及び関係住民の理解と協力を得ることに努めるものとする。また、国は、概要調査地区等の選定の円滑な実現に向けた機構による調査の実施その他の活動に対する理解と協力について、その活動の状況を踏まえ、関係地方公共団体に申し入れるものとする」等としており、高レベル放射性廃棄物の最終処分に向けて国が前面に立って取り組むこととしている。
 また、基本方針においては、「最終処分事業は長期にわたる事業であることを踏まえ、最終処分を計画的かつ確実に実施させるとの目的の下で、今後の技術その他の変化の可能性に柔軟かつ適切に対応する観点から、基本的に最終処分に関する政策や最終処分事業の可逆性を担保することとし、今後より良い処分方法が実用化された場合等に将来世代が最良の処分方法を選択できるようにする。このため、機構は、特定放射性廃棄物が最終処分施設に搬入された後においても、安全な管理が合理的に継続される範囲内で、最終処分施設の閉鎖までの間の廃棄物の搬出の可能性(回収可能性)を確保するものとする」等としており、廃棄物が最終処分施設に搬入された後の搬出の可能性の確保に取り組むこととしている。

一の5について

 廃炉の進展が原子力発電所の立地市町村の経済、雇用、財政等に与える影響を勘案しつつ、廃炉を円滑に進めていくために、このような立地市町村への影響を緩和する一定の措置をとっている。具体的には、平成二十八年度予算において、その区域内に設置された原子力発電所が廃止された市町村に対する交付金を新たに措置するとともに、再生可能エネルギーの拡大等のエネルギー構造転換に向けた地域住民等の理解促進に資するものとして原子力発電所が立地する地方公共団体が実施する取組を支援するための新しい事業を措置した。

一の6について

 政府としては、「エネルギー基本計画」に記載されているとおり、「東京電力福島第一原子力発電所の廃炉や、今後増えていく古い原子力発電所の廃炉を安全かつ円滑に進めていくためにも、高いレベルの原子力技術・人材を維持・発展することが必要である」と認識している。
 具体的には、原子力発電所の更なる安全対策高度化に資する技術開発及び基盤整備、原子力施設のメンテナンス等を行う現場技術者や産業界等における原子力安全に関する人材等の育成支援等に取り組んでいる。

二の1について

 固定価格買取制度については、平成二十四年七月の電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(平成二十三年法律第百八号。以下「再生可能エネルギー特別措置法」という。)の施行後、平成二十八年三月末までに再生可能エネルギー発電設備の導入量が約二・四倍に増加しているように、着実に再生可能エネルギーの導入拡大が進んでいる一方、太陽光発電中心の導入が進んだ結果、国民負担上昇の懸念等の課題が顕在化していると承知している。そのため、同年五月に成立した電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法等の一部を改正する法律(平成二十八年法律第五十九号)においては、再生可能エネルギー電気発電事業の適切な実施を確保する仕組みの導入や、入札制度の導入、中長期的な調達価格の目標の設定等の再生可能エネルギー発電設備の効率的な導入を促す仕組みを盛り込んでいる。今後とも、再生可能エネルギーの最大限の導入と国民負担の抑制の両立に向け、着実に取組を進めていく。また、再生可能エネルギー特別措置法附則第十条第二項では、「エネルギー基本計画」が変更されるごと又は少なくとも三年ごとに、その施行の状況について検討を加え、必要な措置を講ずるものとされており、引き続き必要に応じて見直しを行っていく。

二の2について

 地熱発電及び風力発電の導入の加速化のため、環境影響評価の手続を迅速化する取組を進めているところである。具体的には、環境影響評価準備書等について、環境大臣の経済産業大臣への意見提出及び経済産業大臣の事業者への勧告等に要する期間の短縮の取組等を行っている。また、事業者の調査期間の短縮に向け、例えば、環境影響評価に活用できる基礎情報を整備するため、平成二十七年度に新たに十五地区について必要な調査を行うとともに、平成二十八年五月には当該基礎情報に係るデータベースについて、収録されている情報を一元化する等の利便性の向上等を図った。

二の3について

 再生可能エネルギーの導入拡大に当たっては、出力の不安定性等の課題に対応すべく、大型蓄電池の開発・実証や送配電網の整備等の取組を進めているところであるが、将来に向けた取組としては、エネルギーを大規模かつ長期間にわたって貯蔵可能な水素の特長に着目し、出力の不安定な再生可能エネルギーを利用して水素を製造し、貯蔵・利用する技術の開発や実証の取組を進めていく。

三の1について

 一定規模のコミュニティの中でエネルギーの需給管理を効率的に行うエネルギーマネジメントシステムの構築や蓄電池の制御技術の実証等、いわゆるスマートコミュニティに関するこれまでの取組の成果を踏まえ、エネルギーの面的利用のためのエネルギーインフラ等の整備の促進やネガワット取引を含むディマンドリスポンスの活用の推進、需要家側の蓄電池を電力の需給調整に活用する新たなビジネスモデルの確立に向けた実証等、スマートコミュニティに関する技術の導入に向けた取組を進めていく。

三の2について

 お尋ねの「エネファーム」等の高効率な発電設備や蓄電池の導入は、一次エネルギー消費量の削減や再生可能エネルギーの導入拡大のみならず、非常時のエネルギー供給源の確保に資するものであり、また、省エネルギー機器の導入についても「エネルギー基本計画」に基づく徹底した省エネルギー社会の実現の観点から重要な取組であると考えている。このため、政府としては、例えば、平成二十八年度予算において民生用燃料電池(エネファーム)導入支援補助金を措置し、引き続き「エネファーム」の導入支援に取り組むとともに、同年度予算において住宅・ビルの革新的省エネルギー技術導入促進事業を措置し、対象となる住宅等への蓄電池の導入を支援している。また、例えば、同年度予算においてエネルギー使用合理化等事業者支援補助金を措置し、トップランナー基準を満たす機器等の省エネルギー設備の導入支援を行っている。今後とも、引き続き再生可能エネルギーの導入拡大及び徹底した省エネルギー社会の実現に向けて必要な取組を進めていく。

四の1について

 前回答弁書四の1についてでお答えしたとおり、平成二十八年四月に施行した電気事業法等の一部を改正する法律(平成二十六年法律第七十二号)による改正後の電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)において、一般送配電事業者に対して託送供給義務を課すこと、小売電気事業者に対して供給能力の確保の義務を課すこと、電気事業者に対して供給計画の届出義務を課すこと等の措置を講ずることで、電力の安定供給を確保する仕組みを整えている。

四の2について

 卸電力取引所における売買の価格が公開されることは、卸取引の指標として用いられる適正な価格の形成を図り、もってその円滑な取引に資すると認識している。電気事業法第九十七条第一項の規定により、経済産業大臣は同項に規定する市場開設業務を行う一般社団法人等を卸電力取引所として指定することができることとされており、平成二十八年四月一日に、経済産業大臣は一般社団法人日本卸電力取引所を卸電力取引所として指定している。同法第九十九条の四の規定により、卸電力取引所は、経済産業省令で定めるところにより、売買取引の数量及び価格その他経済産業省令で定める事項を公表しなければならないこととされており、電気事業法施行規則(平成七年通商産業省令第七十七号)において、卸電力取引所はスポット市場の約定の都度、売買の価格を公表すること等を定めている。これに基づき、現在、一般社団法人日本卸電力取引所においては、スポット市場の約定の都度、売買の価格が公表されている。

四の3について

 小売電気事業者がサービス内容を分かりやすい形で表示することは、消費者保護の観点から重要であると認識している。経済産業省としては、電気の需要家の利益の保護が図られるよう、平成二十八年一月に「電力の小売営業に関する指針」を制定した。当該指針において、分かりやすい標準メニューや、電気料金の平均的な月額料金例を広く公表することを小売電気事業者等に求めている。こうした点については、説明会や個別の相談を通じて、小売電気事業者等に周知しており、需要家に対しても、全国各地での説明会の開催やテレビ・新聞・雑誌等のメディアを通じた広報活動等により、情報提供を行っている。