質問主意書

第191回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一一号

通称使用に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年八月三日

糸数 慶子   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   通称使用に関する質問主意書

 現行民法下では、婚姻の際に夫婦の一方が姓を変更することは避けられない。夫か妻のどちらか一方の姓を選択する「平等」規定でありながら、二〇一四年の人口動態統計によると、実際に改姓していたのは九十六・一%が女性であった。
 近年、改姓による社会生活上の不便や不利益から、法律婚を諦めて事実婚にするカップルや、婚姻後に旧姓を通称使用する人も増えている。二〇一五年に株式会社日本経済新聞社(以下「日経新聞社」という。)が行ったインターネット調査によると、働く既婚女性の二・四%が事実婚を選択し、二十五・三%が旧姓を通称使用していることがわかった。実に女性の四人に一人強が、生来の名前を使い続けていた。
 二〇一五年十二月十六日、いわゆる夫婦別姓訴訟の判決において最高裁判所は、「氏を改める者にとって、そのことによりいわゆるアイデンティティの喪失感を抱いたり、婚姻前の氏を使用する中で形成してきた個人の社会的な信用、評価、名誉感情等を維持することが困難になったりするなどの不利益を受ける場合がある」ことを認め、これらの不利益は「氏の通称使用が広まることにより一定程度は緩和され得る」と判断した。しかしながら、通称使用が認められないために新姓使用や事実婚を余儀なくされる当事者にとっては、困難や不利益が「緩和」されることはない。
 二〇〇一年十月一日に、国家公務員に通称使用が認められて以降、地方自治体や企業においても通称使用は急速に広まったが、一方で、認めない自治体や企業も多く、裁判で争われるケースもある。
 二〇一五年に日経新聞社が一六五四社を対象に行った調査によると、女性活用を推進するための施策の導入で最も回答が多かったのは「旧姓を使用できる」(八五・三%)であった。通称使用には限界や課題も多いが、一定程度の不都合は解消される。女性の活躍推進にも資するという考えを示したうえで、以下質問する。

一 二〇一五年三月二十日の衆議院法務委員会で上川陽子法務大臣(当時)が、通称使用について、「関係省庁と力を合わせて前向きに検討してまいりたい」と答弁している。法務省は、二〇一五年二月二十七日から商業登記簿の役員欄に婚姻前の氏(姓)についても記録することを可能としたが、それ以降どのような検討を行ったのか、また、今後の取り組みの予定を明らかにされたい。

二 外務省は、旅券(パスポート)の通称使用について、申請者の海外渡航や外国での生活の便宜から必要と判断される場合に限って例外として、戸籍に記載されている氏名に加えて別名を括弧書きで併記することを認めているが、このことをどのように周知しているか示されたい。周知していない場合はその理由を明らかにされたい。

三 総務省は、二〇一一年から戸籍名のみの記載を義務付けている選挙の当選証書に、通称を付記することを可能とし、二〇一二年の第四十六回衆議院議員総選挙からは、各政党に対し、希望すれば申請により通称使用が付記できる旨の文書を出すなど、積極的に取り組んできたが、それ以降の取り組みを明らかにされたい。
 職員の通称使用を認めない地方自治体等に対しては、働きかけが必要と考えるが、どのような取り組みを行うのか、今後の予定を明らかにされたい。

四 すべての女性が輝く社会づくり本部が今年五月二十日に公表した「女性活躍加速のための重点方針二〇一六」で、旧姓の通称としての使用拡大を掲げているが、具体的な取り組みの進展を示されたい。また、今後の取り組みの予定についても可能な限り明らかにされたい。

  右質問する。