質問主意書

第191回国会(臨時会)

質問主意書


質問第七号

児童福祉施設最低基準の引き下げに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十八年八月三日

田村 智子   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   児童福祉施設最低基準の引き下げに関する質問主意書

 保育士不足や待機児童対策の解消を目的とした本年四月一日の「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」(昭和二十三年厚生省令第六十三号。以下「児童福祉施設最低基準」という。)等の改正は、歴代政権が行わなかった認可保育所の人員配置基準にはじめて手をつけるものであり、許されない。この規制緩和の撤回を求めると同時に、悪影響回避のための取り組みも強く求める。その観点から以下質問する。

一 厚生労働省が私の問合せに対して行った文書での回答では、児童福祉施設最低基準第九十六条は「認可定員に応じて算定される保育士数を配置することを求めるもの」としているが、厚生労働省雇用均等・児童家庭局保育課長通知「保育所への入所の円滑化について」(平成十年二月十三日児保第三号)によって保育所定員の弾力化を行い認可定員を上回って子どもの受け入れを行っている保育所においても認可定員に応じて算定するのか、それとも弾力化後の受け入れ人員に応じて算定するのか、またはそれ以外か政府の見解を示されたい。

二 児童福祉施設最低基準第九十六条は認可保育所が開所中は常時満たすべき基準と考えるがどうか。そうであるならば、都道府県知事が保育士と同等の知識及び経験を有すると認める者が「開所時間を通じて必要となる保育士の総数から利用定員の総数に応じて置かなければならない保育士の数を差し引いて得た数の範囲」内となっていることを、開所日一日ごとに満たす必要があると考えるがどうか。同様の規制緩和である家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準(平成二十六年厚生労働省令第六十一号)附則第八条及び幼保連携型認定こども園の学級の編制、職員、設備及び運営に関する基準(平成二十六年内閣府・文部科学省・厚生労働省令第一号)附則第七条の規定についても、開所日一日ごとに満たす必要があると考えるがどうか。

三 認可保育所、小規模保育事業所A型、保育所型事業所内保育事業所または幼保連携型認定こども園において、児童福祉施設最低基準第九十六条などで認められた、保育士や保育教諭でない無資格者を職員配置基準内の保育士または保育教諭とみなして保育を行った場合と、保育士または保育教諭が保育を行った場合を比較すると、公定価格は変わるのか。

四 保育士または保育教諭以外の無資格者が保育を行っても公定価格が変わらないならば、保育士または保育教諭に比べ給与の低い無資格者をあてればあてるほど収支差が拡大する可能性が高いと考えるがどうか。

五 認可に必要な保育士や保育教諭の数を超えている部分について無資格者をあてるほど収支差は拡大し、株式会社等の営利法人設置の認可保育所であれば結果的に配当可能な資金が増えることになる。保育の質を確保するために利用定員に応じて置かなければならない保育士や保育教諭の数を超えて保育士や保育教諭を確保しようという動機付けは働かず、質が低下したままになる可能性が高いのではないか、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。