質問主意書

第190回国会(常会)

答弁書


答弁書第一五九号

内閣参質一九〇第一五九号
  平成二十八年六月十日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員牧山ひろえ君提出海外における投票環境の整備に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員牧山ひろえ君提出海外における投票環境の整備に関する質問に対する答弁書

一及び二について

 公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)第四十九条の二第一項第一号に規定する在外公館等における在外投票(以下「在外公館投票」という。)については、現地の安全や治安状況の観点から多数の在外邦人が在外公館等に集まることが適当でない場合、投票記載場所を設置するための適切な場所がない場合及び在外公館が新設公館であることや国外退避等により一時閉鎖中であることにより、施設や人員体制の面から投票の実施が困難である場合を除き、原則として実施することとしており、在外選挙人名簿に登録されている選挙人の投票機会の確保のため、引き続き、多くの在外公館において投票を行うことができるよう努めてまいりたい。
 また、在外公館投票を円滑に実施するため、その実施場所については、在外公館の長が直接管理していること及び在外公館が公館の不可侵などの特権を有していることのほか、現地官憲による警備も得られることにも鑑み、在外公館の長が最も確実に管理権を行使できる在外公館内や大使の公邸内とすることを基本方針としている。ただし、例外的に、在外公館や大使の公邸以外の施設において投票を実施している場合もあることから、御指摘の投票所の開設については、こうした例外が存在することも踏まえて適切に対応してまいりたい。

三について

 在外公館投票においては、投票終了後の投票用紙は、これを安全かつ確実に送致するため、在外公館の職員が直接、日本国内まで運搬することとしており、その際には、必要に応じ、地域ごとに拠点となる在外公館に集約してから運搬すること等、運搬の効率性も考慮している。在外公館投票を行う期間は、このような事情も踏まえて、在外選挙人名簿に登録されている選挙人の投票機会の確保にも配慮しながら、投票用紙の安全かつ確実な送致の確保を考慮して設定されており、また、投票時間については、在外公館の執務時間や現地の労使環境等を考慮して定められているところであるが、今後とも在外公館投票を行う機会をできるだけ確保するよう最大限の配慮を行ってまいりたい。

四について

 公職選挙法第四十九条の二第一項第二号に規定する在外選挙人の郵便等による在外投票(以下「郵便等投票」という。)については、投票管理者や立会人が存在しないこと、選挙人の現在する場所において投票用紙に投票の記載をすること等から、選挙の公正を確保する観点から、公給の投票用紙を用いることや、投票用紙等の交付の請求の際に在外選挙人証を同封すること等、必要な手続が定められており、これらの手続を「簡素化」することについては、選挙の公正確保との調和の観点を勘案して検討する必要があると考えており、また、御指摘の「郵送代」や「投票用紙が期日までに届いたかどうか見届け、確認することができないという点」については、日本と外国との郵便制度の違いや選挙管理委員会の事務負担の観点を勘案して検討する必要があると考える。

五について

 洋上投票におけるファクシミリ送信による投票は、長期間渡航する船舶に乗船する船員による投票が事実上困難になっていたことに対応する特例的な措置であり、また運用面においては、実際に投票手続に入る前に、船長等が指定市町村の選挙管理委員会と連絡を取り、同一の用紙を用いて投票内容を複数回送信するなどの不正が行われないようにするとともに、確実な送受信が行われるよう、ファクシミリ送信の試行を行った上で投票手続に入っているが、在外投票においても同様の厳正かつ確実な運用を確保するためには、個々の選挙人が投票をする都度、当該選挙人が登録されている在外選挙人名簿の属する個々の市町村の選挙管理委員会との間でこのような手続を行うことが前提となるなど、困難な点がある。このような点を踏まえると、在外公館投票や郵便等投票を行うことが可能な在外投票にファクシミリ送信による投票を導入することについては、慎重な検討が必要と考えている。