質問主意書

第190回国会(常会)

答弁書


答弁書第九六号

内閣参質一九〇第九六号
  平成二十八年四月十五日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山崎 正昭 殿

参議院議員吉川沙織君提出通勤手当の非課税限度額の引上げに関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員吉川沙織君提出通勤手当の非課税限度額の引上げに関する再質問に対する答弁書

一について

 給与所得を有する者で通勤するもの(以下「通勤者」という。)がその通勤に必要な交通機関の利用のために支出する費用に充てるものとして通常の給与に加算して受ける所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第九条第一項第五号に規定する通勤手当(以下一についてから三についてまでにおいて「通勤手当」という。)については、通勤手当が通勤費用の実費弁償的な性格を有することに鑑み、同号の規定により、一般の通勤者につき通常必要であると認められる部分について、所得税は非課税とされている。

二について

 平成二十八年度税制改正前の通勤手当に係る非課税限度額はおおむね百キロメートル程度の新幹線通勤を念頭に一月当たり十万円と設定されていたところ、新幹線(北海道新幹線及び九州新幹線を除く。)用の通勤定期乗車券(以下「新幹線用通勤定期乗車券」という。)でその発売額が一月当たり十万円を超える区間のものの利用者数は、平成二十三年度から平成二十五年度までの平均で一日当たり八千人程度であると承知している。

三について

 通勤手当が非課税である理由は一についてで述べたとおりであるが、その上で、平成二十八年度税制改正における通勤手当に係る非課税限度額の引上げは、二についてで述べた新幹線用通勤定期乗車券の利用者数の実態や新幹線を利用して通勤する者に対し一月当たり十万円を超える額の通勤手当を支給する企業もあることを踏まえたものであり、新幹線を利用した地方から大都市圏への通勤をする者の増減自体を直接の目的としたものではない。

四について

 一般会計の歳入予算における「租税及印紙収入」の額は十億円単位で計上していることから、「平成二十八年度税制改正の大綱」(平成二十七年十二月二十四日閣議決定)の参考資料である「平成二十八年度の税制改正(内国税関係)による増減収見込額」においては、増減収見込額が十億円未満の改正事項を計上しておらず、お尋ねの「今回の非課税限度額の引上げ」についてもこれに計上していない。

五について

 御指摘の「通勤手当を社会保険の保険料の算定の基礎となる報酬に含むという考え方の根拠」については、先の答弁書(平成二十八年四月五日内閣参質一九〇第九三号。以下「前回答弁書」という。)三、七及び八についてでお答えしたとおりである。また、お尋ねの「報酬の範囲について」(昭和二十七年十二月四日付け保文発第七二四一号厚生省保険局健康保険課長回答)で示した、通勤に要する費用を支弁するために支給される手当(以下「通勤手当」という。)は支給の方法として三箇月又は六箇月ごとに支給されているとしても、支給の実態は原則として毎月の通勤に対して支給され、通常の生計費の一部に当てられているのであるから、支給の実態に基づいて当然報酬と解することが妥当であるとの見解については、変更はない。

六及び七について

 平成二十四年九月に厚生労働副大臣の下に開催することとされた「社会保険料・労働保険料の賦課対象となる報酬等の範囲に関する検討会」において、通勤手当を健康保険及び厚生年金保険の保険料(以下「社会保険料」という。)の算定から除外することについて検討し、報酬であって社会保険料の算定の基礎に含まれていないものはなく、通勤手当だけを算定対象から外すとした場合、その根拠、他の手当との違い及び通勤手当が支払われない会社に勤務する従業員との公平などの整理が必要であること、仮に通勤手当を社会保険料の算定の基礎から除いた場合には算定の基礎となる報酬が減少することにより保険料収入が減少し給付や保険料の負担の在り方の見直しが必要となること、通勤手当の支給状況の違いにより通勤手当を支給する企業から通勤手当を支給しない企業へ社会保険料の負担が移転すること等の論点が示されたが、結論は得られず、通勤手当については社会保険料の算定の基礎となる報酬に含まれるとの考えが現在も維持されているところである。したがって、前回答弁書三、七及び八についてで「御指摘の調査及び検討についても、これを行う考えはない」とお答えしたところであり、お尋ねの整合性については、保たれているものと考えている。

八について

 お尋ねの前提を基に健康保険法(大正十一年法律第七十号)第百六十一条第一項及び厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第八十二条第一項の規定に基づき、事業主の負担分を算定すると、年間二十五万円程度の増加となる。